2013年 08月 14日
大いなる救い |
ヨークシャーの片田舎ケルデール村で、首を斧で切り落とされた農夫の死体が発見された。かたわらに座る娘は自分がやったと呟く・・・。
名門貴族のトーマス・リンリーがスコットランド・ヤードの警部として活躍するシリーズの第一作。イートン・オックスフォード出身、眉目秀麗、頭脳優秀という非の打ちどころのない主人公で、ナイオ・マーシュのアレン警部を思い出させますが、彼よりさらに上流のようです。
そんな貴族警部が組んで捜査をする相手が労働者階級出身のバーバラ・ハヴァーズ巡査部長。ブスで性格も悪く、喧嘩っぱやいために誰と組んでもトラブルを起こし、制服組に降格させられていたというきわめつきの厄介者です。上流階級に憎悪を燃やすバーバラと、常に貴族らしいクールさを保つリンリーの攻防がひとつの見ものですが、それ以外にもリンリーの親友で優秀な鑑識専門家のセント・ジェームズとその新妻デボラや、リンリーのガールフレンドである伯爵令嬢ヘレンとの関係、バーバラと両親との関係、ケルデール村の住人たちの複雑な人間関係、古い修道院に現れる赤ん坊の幽霊などなど、これでもかこれでもかというほど刺激的な要素が盛りだくさんで、最初から最後まで息つく暇もありません。
正直言ってちょっと盛り込みすぎじゃないかという気も。ここまでやらなくても、半分くらいの要素で充分ふつうに面白いミステリーの資格は満たしています。イギリスが舞台のミステリーにしてはずいぶん濃密でこってりした作品だなあと思っていたら、作者はアメリカ人でした。なるほど、それなら納得できます。
もっとも、作者はおそらく最初からシリーズにするつもりで、最初の作品であれこれ伏線を張り、人間関係も一通り説明しという目論みがあったから、ここまで細かくなったのかもしれません。このあとの作品では、ここに登場したキャラクターたちのそれぞれにスポットライトが当たるようになるそうですから。
ひとつだけ「あちゃー」と思ったのは、私がものすごく苦手な近親相姦と小児性愛がテーマになっていたこと。知ってたら読まなかったし、話の展開が面白いから最後まで読みはしたけれどちょっとトラウマです。そういうのってネタバレになるから紹介文には書けないんでしょうが、どこかに苦手な人にだけわかるようなマークとかついているといいなあ。まあ、無理か。
大いなる救い (ハヤカワ・ミステリ文庫)
原題:A Great Deliverance
作者:エリザベス・ジョージ
訳者:吉澤康子
出版社:早川書房
ISBN:4150798575
名門貴族のトーマス・リンリーがスコットランド・ヤードの警部として活躍するシリーズの第一作。イートン・オックスフォード出身、眉目秀麗、頭脳優秀という非の打ちどころのない主人公で、ナイオ・マーシュのアレン警部を思い出させますが、彼よりさらに上流のようです。
そんな貴族警部が組んで捜査をする相手が労働者階級出身のバーバラ・ハヴァーズ巡査部長。ブスで性格も悪く、喧嘩っぱやいために誰と組んでもトラブルを起こし、制服組に降格させられていたというきわめつきの厄介者です。上流階級に憎悪を燃やすバーバラと、常に貴族らしいクールさを保つリンリーの攻防がひとつの見ものですが、それ以外にもリンリーの親友で優秀な鑑識専門家のセント・ジェームズとその新妻デボラや、リンリーのガールフレンドである伯爵令嬢ヘレンとの関係、バーバラと両親との関係、ケルデール村の住人たちの複雑な人間関係、古い修道院に現れる赤ん坊の幽霊などなど、これでもかこれでもかというほど刺激的な要素が盛りだくさんで、最初から最後まで息つく暇もありません。
正直言ってちょっと盛り込みすぎじゃないかという気も。ここまでやらなくても、半分くらいの要素で充分ふつうに面白いミステリーの資格は満たしています。イギリスが舞台のミステリーにしてはずいぶん濃密でこってりした作品だなあと思っていたら、作者はアメリカ人でした。なるほど、それなら納得できます。
もっとも、作者はおそらく最初からシリーズにするつもりで、最初の作品であれこれ伏線を張り、人間関係も一通り説明しという目論みがあったから、ここまで細かくなったのかもしれません。このあとの作品では、ここに登場したキャラクターたちのそれぞれにスポットライトが当たるようになるそうですから。
ひとつだけ「あちゃー」と思ったのは、私がものすごく苦手な近親相姦と小児性愛がテーマになっていたこと。知ってたら読まなかったし、話の展開が面白いから最後まで読みはしたけれどちょっとトラウマです。そういうのってネタバレになるから紹介文には書けないんでしょうが、どこかに苦手な人にだけわかるようなマークとかついているといいなあ。まあ、無理か。
大いなる救い (ハヤカワ・ミステリ文庫)
原題:A Great Deliverance
作者:エリザベス・ジョージ
訳者:吉澤康子
出版社:早川書房
ISBN:4150798575
by timeturner
| 2013-08-14 17:06
| 和書
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