合言葉はフリンドル! |
いやあ、痛快な話でした。ニックというユニークな少年の魅力が全開。かといって、ニックの魅力を引き立てるために周囲の人間をおとしめたりしていないのも素晴らしい。ニックとグレンジャー先生はお互いの力を認め、対等に公平に戦うのです。
日本語にも、いやな言葉だと思う人が多いにも関わらず、流行語が次第に固着して辞書にも載るようになり、最後には正当な日本語として認められてしまうということがありますよね。「ら抜き言葉」なんてその最たるもの(なんて言う人も減ってるんだろうなあ)。そうした仕組みと、そのことが社会に与える影響を子どもにもわかるように説明してくれます。
途中までは「ちょっと図に乗りすぎなんじゃない?」と思ってしまうのですが、そのあたりはおそらく日本人とアメリカ人のメンタリティの違い。さすがにマスメディアによる騒動にまで発展したときにはニックも心を閉じてしまいそうになるのですが、そこで救いの手を差し伸べたのが敵の大将だったはずのグレンジャー先生だったというのもすてきです。
そして感動のラストへ。いくらなんでもうまくいきすぎるんじゃないかという気はしますが、児童小説はこのくらいでいいのかも。やわらかい心がたくさんの感動を吸収していく時期なのだから。
合言葉はフリンドル! (世界の子どもライブラリー)
原題:Frindle
作者:アンドリュー・クレメンツ
イラスト:笹森 識
訳者:田中 奈津子
出版社:講談社
ISBN:4061947494