2013年 04月 21日
パディントン発4時50分 |
ロンドン発4時50分の列車の座席でふと目をさました老婦人は窓から見えた風景に息をのんだ。並んで走る別の列車の中で、いままさに男が女を締め殺すところだったのだ。鉄道関係者も警察も本気にしてはくれなかったが、友人のミス・マープルだけは別だった・・・。
さすが面白~い! 前から読もうとは思っていたけれど『英国鉄道物語』を読んで、すぐに手を出しました。鉄道に関するトリックは最初の殺人設定で使われただけで、その後はあまり関係はありません。でも、読み始めたら面白すぎてそんなことはどうでもよくなる。
クリスティーの作品はたいていそうなんですが、登場人物たちのキャラクター設定や状況設定が実に面白い。ケチな父親にうんざりしている、それぞれに問題を抱えた子どもたちもさることながら、老齢で体を思うように動かせない(と本人は言っている)ミス・マープルの手足として働くルーシー・アイルズバロウのキャラが最高。オックスフォードの数学科をトップの成績で出たのに、普通の仕事は面白くないからとスーパー家政婦になってしまうというあたりが、クリスティの時代とは思えない素晴らしいアイディアだと思う。
このルーシーの視点を入れたことで、ふだんだったらミス・マープルがメアリー・ミード村の誰彼との性格の対比で犯人を割り出す話で終わるのが、もっと立体的かつ若々しくなっています。唯一気に入らないのは、これほど素晴らしいルーシーがどっちもどっちというようなくだらない男と結びつけてしまう終わり方かな。これじゃあ、このほかの作品でまたルーシーを活躍させることができないじゃないですか。まあ、クリスティくらいになるといくらでも魅力的なキャラを創造できるから、使い捨ても平気でしちゃうのかもしれませんね。
パディントン発4時50分 (クリスティー文庫)
原題:4.50 from Paddington
作者:アガサ・クリスティー
訳者:松下祥子
出版社:早川書房
ISBN:4151300414
さすが面白~い! 前から読もうとは思っていたけれど『英国鉄道物語』を読んで、すぐに手を出しました。鉄道に関するトリックは最初の殺人設定で使われただけで、その後はあまり関係はありません。でも、読み始めたら面白すぎてそんなことはどうでもよくなる。
クリスティーの作品はたいていそうなんですが、登場人物たちのキャラクター設定や状況設定が実に面白い。ケチな父親にうんざりしている、それぞれに問題を抱えた子どもたちもさることながら、老齢で体を思うように動かせない(と本人は言っている)ミス・マープルの手足として働くルーシー・アイルズバロウのキャラが最高。オックスフォードの数学科をトップの成績で出たのに、普通の仕事は面白くないからとスーパー家政婦になってしまうというあたりが、クリスティの時代とは思えない素晴らしいアイディアだと思う。
このルーシーの視点を入れたことで、ふだんだったらミス・マープルがメアリー・ミード村の誰彼との性格の対比で犯人を割り出す話で終わるのが、もっと立体的かつ若々しくなっています。唯一気に入らないのは、これほど素晴らしいルーシーがどっちもどっちというようなくだらない男と結びつけてしまう終わり方かな。これじゃあ、このほかの作品でまたルーシーを活躍させることができないじゃないですか。まあ、クリスティくらいになるといくらでも魅力的なキャラを創造できるから、使い捨ても平気でしちゃうのかもしれませんね。
パディントン発4時50分 (クリスティー文庫)
原題:4.50 from Paddington
作者:アガサ・クリスティー
訳者:松下祥子
出版社:早川書房
ISBN:4151300414
by timeturner
| 2013-04-21 20:45
| 和書
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