2013年 01月 18日
ウェイクフィールドの牧師――むだばなし |
英国の片田舎にすむプリムローズ牧師は妻と6人の子供に囲まれ、豊かとは言えないまでも不自由のない暮らしを送っていたが、全財産を委託していた商人が破産したことで無一文になってしまう・・・。
このあと、これでもかこれでもかとばかりに、とんでもない災難が次から次へと一家にふりかかるのですが、善良で楽天的な牧師はどんなときでも人を信じることをやめず、家族を励まし、まわりの人間に信仰を説き続けます。
持てる者が自分たちの財産を守るために過剰に重い罪を犯罪に課しているなど、イギリス国内の現状に対する批判や、来世の幸福の約束についての説教など、作家が真情を吐露しているんだろうなあと思える部分は実に真面目なのですが、全体を覆う物語のムードは荒唐無稽というか、あまりにも牧歌的すぎてほとんどファンタジーみたい。でも、そののんびりした雰囲気が実に心地よいのです。
鋭いユーモアがあふれた人間観察には後のジェイン・オースティンを思わせるものがありますし、大団円のご都合主義と賑やかさはシェイクスピアの喜劇みたい。
おおらかで純真でありながら、意外に世俗的な面もある牧師の魅力がこの本の真骨頂ですが、小野寺健さんの翻訳がその魅力を100%引き立てていると思いました。何度でも読み返したい作品です。
ウェイクフィールドの牧師――むだばなし (岩波文庫)
原題:The Vicar of Wakefield: A Tale
作者:オリヴァー・ゴールドスミス
訳者:小野寺 健
出版社:岩波書店
ISBN:4003221311
このあと、これでもかこれでもかとばかりに、とんでもない災難が次から次へと一家にふりかかるのですが、善良で楽天的な牧師はどんなときでも人を信じることをやめず、家族を励まし、まわりの人間に信仰を説き続けます。
持てる者が自分たちの財産を守るために過剰に重い罪を犯罪に課しているなど、イギリス国内の現状に対する批判や、来世の幸福の約束についての説教など、作家が真情を吐露しているんだろうなあと思える部分は実に真面目なのですが、全体を覆う物語のムードは荒唐無稽というか、あまりにも牧歌的すぎてほとんどファンタジーみたい。でも、そののんびりした雰囲気が実に心地よいのです。
鋭いユーモアがあふれた人間観察には後のジェイン・オースティンを思わせるものがありますし、大団円のご都合主義と賑やかさはシェイクスピアの喜劇みたい。
おおらかで純真でありながら、意外に世俗的な面もある牧師の魅力がこの本の真骨頂ですが、小野寺健さんの翻訳がその魅力を100%引き立てていると思いました。何度でも読み返したい作品です。
ウェイクフィールドの牧師――むだばなし (岩波文庫)
原題:The Vicar of Wakefield: A Tale
作者:オリヴァー・ゴールドスミス
訳者:小野寺 健
出版社:岩波書店
ISBN:4003221311
by timeturner
| 2013-01-18 19:15
| 和書
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