2012年 11月 05日
銀の匙 |
茶箪笥の抽匣(ひきだし)からみつけた銀の匙の話から始まって、可愛がってくれた伯母さんと過ごした病弱で臆病だった子ども時代の話、仲良くなった近所の少女たちとの遊び、学校の思い出などを自伝風に綴った作品。
夏目漱石がたいそう褒めた作品だそうで、和辻哲郎によるあとがきによると、子供の世界の描写として未曾有のものであること、またその描写がきれいで細かいこと、文章に非常な彫琢があるにもかかわらず不思議なほど真実を傷つけていないこと、といった理由を挙げていたらしい。
はじめのうちは甘やかされた子供の我儘勝手ぶりと、それをひたすら甘やかすの伯母さんとに辟易して、なんとも不愉快な話だと思っていたのですが、やがて明治の終わり頃の東京の暮らしぶり、子供たちの遊び、四季の移り変わりなど、今とはまったく違う、まるで別世界・異次元の話を聞いているような不思議な心地よさを感じるようになってきて、最後には漱石が言ったことすべてに激しく同意しながら読み終えました。
国も生き方も違うのになぜか『ナボコフ自伝』を思い出してしまったのは、感受性の強いふたりになにかしら共通点があるからでしょうか。「初恋」を思わせる章もありましたし。それにしてもこの人はなにかと生きにくかっただろうなあ。
銀の匙 (岩波文庫)
作者:中 勘助
出版社:岩波書店
ISBN:4003105117
夏目漱石がたいそう褒めた作品だそうで、和辻哲郎によるあとがきによると、子供の世界の描写として未曾有のものであること、またその描写がきれいで細かいこと、文章に非常な彫琢があるにもかかわらず不思議なほど真実を傷つけていないこと、といった理由を挙げていたらしい。
はじめのうちは甘やかされた子供の我儘勝手ぶりと、それをひたすら甘やかすの伯母さんとに辟易して、なんとも不愉快な話だと思っていたのですが、やがて明治の終わり頃の東京の暮らしぶり、子供たちの遊び、四季の移り変わりなど、今とはまったく違う、まるで別世界・異次元の話を聞いているような不思議な心地よさを感じるようになってきて、最後には漱石が言ったことすべてに激しく同意しながら読み終えました。
国も生き方も違うのになぜか『ナボコフ自伝』を思い出してしまったのは、感受性の強いふたりになにかしら共通点があるからでしょうか。「初恋」を思わせる章もありましたし。それにしてもこの人はなにかと生きにくかっただろうなあ。
銀の匙 (岩波文庫)
作者:中 勘助
出版社:岩波書店
ISBN:4003105117
by timeturner
| 2012-11-05 18:40
| 和書
|
Comments(2)
Commented
by
八朔
at 2012-11-05 23:00
x
1950年代に、灘中の先生が、教科書を使わず、中学の3年間をかけて、この本を1冊読み上げるという国語の授業を行って、東大合格者が急増したという噂の、「銀の匙」ですね。
テレビ番組では、ちらっと観ましたが、まだ、本は読んでいません。
やはり、いい本なのですね。
テレビ番組では、ちらっと観ましたが、まだ、本は読んでいません。
やはり、いい本なのですね。
0
Commented
by
timeturner at 2012-11-06 19:50
へええ、そんな先生がいたんですね。うーん、しかし、この本1冊だけで三年間というのもなあ。第一飽きるし(^^;)。灘中はもともと出来る子をとってるからそれで学力が上がるのかもしれないけど・・・。
まあでも、確かに美しく正しい(そしてやや古い)日本語を覚えるには最適の本ではあります。
まあでも、確かに美しく正しい(そしてやや古い)日本語を覚えるには最適の本ではあります。