2012年 09月 15日
少年十字軍 |
13世紀ドイツとフランスで子どもたちが神の啓示を受けて自発的に集まり、聖地エルサレムをめざした。フランスの少年十字軍を材にとり、子どもたち、ローマ法王、癩者、回教僧、マルセイユの書記といった人々の語りによって子どもたちの運命を描き出す・・・。表題作はじめ9編の短編を収録。
死、業病、腐敗、終末といった暗いテーマばかりなのに、それを描き出す言葉のきらびやかなこと。ファンタジーのようでもあり、怪奇幻想小説の趣もあり、宗教の香りもする。でも、なにかひとつのジャンルにはおさまりきらない不思議な雰囲気の物語ばかりです。
「黄金仮面の王」は映画「キングダム・オブ・ヘブン」に出てきたエルサレムの王みたいな人が出てきます。そういえばあの映画も十字軍の話だったな。
全部が全部十字軍の時代、背景というわけではなく、列車が走る19世紀の話もあれば15世紀フィレンツェの話もあり、古代人が考えた終末の大火ありで、国も人種も時代も、そして現実すらもこの作者にとってはらくらくと超えられる空気のようなものらしい。
訳者の多田智満子さんは『東方綺譚』のときにも驚嘆しましたが、本当に言葉の魔術師です。原作が素晴らしいのはもちろんでしょうが、それをここまでの日本語に移し変えられるなんて。私が苦手な「ですます」で書かれているものもあるのですが、半分くらい読むまでそのことに気づかなかった。そのくらい自然で内容にぴったり合った訳だったというわけ。
少年十字軍
原題:La Croisade Des Enfants
作者:マルセル・シュウォッブ
訳者:多田智満子
出版社:王国社
ISBN:4900456594
死、業病、腐敗、終末といった暗いテーマばかりなのに、それを描き出す言葉のきらびやかなこと。ファンタジーのようでもあり、怪奇幻想小説の趣もあり、宗教の香りもする。でも、なにかひとつのジャンルにはおさまりきらない不思議な雰囲気の物語ばかりです。
「黄金仮面の王」は映画「キングダム・オブ・ヘブン」に出てきたエルサレムの王みたいな人が出てきます。そういえばあの映画も十字軍の話だったな。
全部が全部十字軍の時代、背景というわけではなく、列車が走る19世紀の話もあれば15世紀フィレンツェの話もあり、古代人が考えた終末の大火ありで、国も人種も時代も、そして現実すらもこの作者にとってはらくらくと超えられる空気のようなものらしい。
黄金仮面の王訳者あとがきを読むとゴシック幻想怪奇小説そのものと思った「リリス」はラファエル前派のダンテ=ガブリエル・ロセッティとその妻エリザベスをモデルにした物語だそうで、ロセッティは実際に亡き妻の遺体とともに未完の詩の草稿を埋葬し、七年後に掘り出して刊行したのだそうで、なんともすさまじい話です。
大地炎上
ペスト
眠れる都市【まち】
〇八一号列車
リリス
阿片の扉
卵物語
少年十字軍
訳者の多田智満子さんは『東方綺譚』のときにも驚嘆しましたが、本当に言葉の魔術師です。原作が素晴らしいのはもちろんでしょうが、それをここまでの日本語に移し変えられるなんて。私が苦手な「ですます」で書かれているものもあるのですが、半分くらい読むまでそのことに気づかなかった。そのくらい自然で内容にぴったり合った訳だったというわけ。
少年十字軍
原題:La Croisade Des Enfants
作者:マルセル・シュウォッブ
訳者:多田智満子
出版社:王国社
ISBN:4900456594
by timeturner
| 2012-09-15 19:57
| 和書
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