2012年 09月 03日
猫の縁談(上・下) |
猫と稀覯本をセットで譲りたいという奇妙な老人、「回し」「ほまち」など古本業界の裏家業に生きる男たち、戦時中に妙齢の姉妹が経営していた古書店のその後を調べてほしいと手紙をよこした老顧客・・・。古本世界の人びととの交流を描く作品集。
初めのうち古書店主の書いたエッセイ集だと思っていて、いろんなお客がいるものだなあ、古書店経営も波乱万丈なんだなあ、などと感心しながら読んでいたのですが、途中からどう考えてもひとりの人間がこんなに色々な珍事に遭遇するわけはないだろうと気づき、もう一度見直してみたら小説でした。
迂闊なことは確かですが、エッセイ集だと思わせてしまうような落ち着きのある自然体の文章なのですよ。小説というのはたいてい、読者を驚かせてやろう、感心させてやろうという作者の下心がどこかに出て気負った感じになるものですが、この人の書くものにはそれがない。1944年生まれで、この本が出たのは1989年ですからまだ40代だったわけなのに、ずいぶんまあ枯れた人なんだなあ。でも、それでいてほんわかしたユーモアもあるんですよね。
でも、すごく味わい深くて面白いです。古書業界の裏話もいろいろ出てくるし、古本が好きな人にはこたえられないと思う。下巻のほとんどを占める「猫阿弥陀」は戦時中の思想統制による発禁本の話を中心に、なんとも不気味でおそろしい怪奇幻想小説のような作品になっています。猫狩りって本当にあったのかな。
これ、本来は中央公論から単行本、文庫が出ているのですが、私は大活字本シリーズのものを読みました。このシリーズ、何年か前に読んだときにはあまりにも文字が大きすぎてギラギラするし、1ページの字詰め、行数が少なくて読みにくいので途中でやめてしまいました。今ではこの大きさでも夕方以降だと老眼鏡をかけて読むのだから、本当に目が悪くなったんだなあ。
猫の縁談 (上)
猫の縁談 (下)
作者:出久根 達郎
出版社:埼玉福祉会
ISBN:4884191900、4884191919
初めのうち古書店主の書いたエッセイ集だと思っていて、いろんなお客がいるものだなあ、古書店経営も波乱万丈なんだなあ、などと感心しながら読んでいたのですが、途中からどう考えてもひとりの人間がこんなに色々な珍事に遭遇するわけはないだろうと気づき、もう一度見直してみたら小説でした。
迂闊なことは確かですが、エッセイ集だと思わせてしまうような落ち着きのある自然体の文章なのですよ。小説というのはたいてい、読者を驚かせてやろう、感心させてやろうという作者の下心がどこかに出て気負った感じになるものですが、この人の書くものにはそれがない。1944年生まれで、この本が出たのは1989年ですからまだ40代だったわけなのに、ずいぶんまあ枯れた人なんだなあ。でも、それでいてほんわかしたユーモアもあるんですよね。
でも、すごく味わい深くて面白いです。古書業界の裏話もいろいろ出てくるし、古本が好きな人にはこたえられないと思う。下巻のほとんどを占める「猫阿弥陀」は戦時中の思想統制による発禁本の話を中心に、なんとも不気味でおそろしい怪奇幻想小説のような作品になっています。猫狩りって本当にあったのかな。
これ、本来は中央公論から単行本、文庫が出ているのですが、私は大活字本シリーズのものを読みました。このシリーズ、何年か前に読んだときにはあまりにも文字が大きすぎてギラギラするし、1ページの字詰め、行数が少なくて読みにくいので途中でやめてしまいました。今ではこの大きさでも夕方以降だと老眼鏡をかけて読むのだから、本当に目が悪くなったんだなあ。
猫の縁談 (上)
猫の縁談 (下)
作者:出久根 達郎
出版社:埼玉福祉会
ISBN:4884191900、4884191919
by timeturner
| 2012-09-03 19:49
| 和書
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