2012年 08月 03日
奥の部屋 |
徒歩旅行の途中で迷い込んだ古い屋敷は、昔買ってもらった人形の家にそっくりだった・・・。今世紀怪奇小説の極北と呼ばれるエイクマン初の傑作集。
西崎クラスで7月から訳し始めたエイクマンの短編があまりにわからないので、プロの翻訳者が訳したものを読めば少しは作品の傾向がわかるのではないかと期待したのですが、よけいにわからなくなったぞ。というか、訳者まで「ロバート・エイクマンについて、特にその作品について何か書くというのは、僕は心たのしまない」なんて書いている。
読んでも実に表現に困る読後感しか出てこないのですよ。読む前には怪奇小説家だと聞いていたので、これまでに読んだことのあるその手のものを想像していたのですが、エイクマン本人は自分の作品をStrange Storyと読んでいたそうで、確かにそのほうがずっと内容を表していると思う。
思わせぶりな導入で主人公やシチュエーションに興味をもったところで怪しく不思議なことが起こり始め、それがどんどん怖くなっていって、どうなるんだろう? どうなるんだろう!とどきどきしていると、どうもならずにぷつっと終わってしまう。なんの解決も論理的な説明もない。
読者は完全に宙ぶらりんな状態で放置されるわけで、もう見事にそんな話ばかりなんですね。他の作品に比べてかなり短い「待合室」は、まあオチと言えないこともないような結末を提示してくれるゴーストストーリーになっていますが、そのせいか逆に物足りない作品になっている。
ってことは、エイクマンの魅力というのはこの宙ぶらりんさなのかしらん? なんにせよ、とてもじゃないけど私なんかの実力では訳せないことがわかりました。ぐっすん。
奥の部屋
原題:The Inner Room and Other Strange Stories
作者:ロバート・エイクマン
訳者:今本 渉
出版社:国書刊行会
ISBN:4336038341
西崎クラスで7月から訳し始めたエイクマンの短編があまりにわからないので、プロの翻訳者が訳したものを読めば少しは作品の傾向がわかるのではないかと期待したのですが、よけいにわからなくなったぞ。というか、訳者まで「ロバート・エイクマンについて、特にその作品について何か書くというのは、僕は心たのしまない」なんて書いている。
読んでも実に表現に困る読後感しか出てこないのですよ。読む前には怪奇小説家だと聞いていたので、これまでに読んだことのあるその手のものを想像していたのですが、エイクマン本人は自分の作品をStrange Storyと読んでいたそうで、確かにそのほうがずっと内容を表していると思う。
学友学生時代の親友である才女が父親の死を契機に生家に住み始め、そこを訪れたことから不気味な家とかかわりをもつことになってしまう女性の恐怖を描く「学友」、婚約者の田舎の実家を訪ねた女性が森の中に迷いこみ、怪しい光景を目撃する「髪を束ねて」、それと表題作「奥の部屋」は雰囲気的には好みでした。不思議なことに三点とも女性の視点で書かれています。
髪を束ねて
待合室
恍惚
奥の部屋
思わせぶりな導入で主人公やシチュエーションに興味をもったところで怪しく不思議なことが起こり始め、それがどんどん怖くなっていって、どうなるんだろう? どうなるんだろう!とどきどきしていると、どうもならずにぷつっと終わってしまう。なんの解決も論理的な説明もない。
読者は完全に宙ぶらりんな状態で放置されるわけで、もう見事にそんな話ばかりなんですね。他の作品に比べてかなり短い「待合室」は、まあオチと言えないこともないような結末を提示してくれるゴーストストーリーになっていますが、そのせいか逆に物足りない作品になっている。
ってことは、エイクマンの魅力というのはこの宙ぶらりんさなのかしらん? なんにせよ、とてもじゃないけど私なんかの実力では訳せないことがわかりました。ぐっすん。
奥の部屋
原題:The Inner Room and Other Strange Stories
作者:ロバート・エイクマン
訳者:今本 渉
出版社:国書刊行会
ISBN:4336038341
by timeturner
| 2012-08-03 20:51
| 和書
|
Comments(2)
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by
nobara
at 2014-06-09 13:54
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学習のカテゴリを読ませて頂きますと錚々たる先生方のクラスを受けて
おられるのですね。西崎先生はちくま文庫の「怪奇小説日和」などの素晴らしい選集を編んで下さり本当にありがたい。自分はエイクマンの「列車」にどうしようもなく惹かれました。エイクマンだけの選集は「奥の部屋」一冊なので大変貴重です。「読者は宙ぶらりんで放置」、本当に!えっ、えっ、どうなったの?と急展開から唐突な幕切れに至り、読者は物語の外に投げ出されてしまうのです。男性作家なのに女性が書いたとしか思えない作品もあります。海外では何冊も選集が出ているから自分で訳せたらなあ・・・。東京創元社の荒俣先生の選集にエイクマンの未訳作品が入ることを祈っているのですがドイツ文学の短篇が入るようで・・・。長くてすみません。
おられるのですね。西崎先生はちくま文庫の「怪奇小説日和」などの素晴らしい選集を編んで下さり本当にありがたい。自分はエイクマンの「列車」にどうしようもなく惹かれました。エイクマンだけの選集は「奥の部屋」一冊なので大変貴重です。「読者は宙ぶらりんで放置」、本当に!えっ、えっ、どうなったの?と急展開から唐突な幕切れに至り、読者は物語の外に投げ出されてしまうのです。男性作家なのに女性が書いたとしか思えない作品もあります。海外では何冊も選集が出ているから自分で訳せたらなあ・・・。東京創元社の荒俣先生の選集にエイクマンの未訳作品が入ることを祈っているのですがドイツ文学の短篇が入るようで・・・。長くてすみません。
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timeturner at 2014-06-09 20:14
生涯学習という面からみると、今の時代はかなり恵まれていると思います。素晴らしい専門家・研究家の方々から直接話を聴いたり、教わったりする機会がたくさんあるのですから。もっとも、いくらすぐれた師についても、本人の努力や才能がなければどうにもならないんですが・・・。
エイクマン、いまだによくわかりません。いつかまた再挑戦してみたいと思っていますが。
エイクマン、いまだによくわかりません。いつかまた再挑戦してみたいと思っていますが。