2012年 07月 15日
四季の自然 |
英国人が英国人のために書いた、英国の田園(特にイングランド中・南部)の自然を観察するための初心者向けの手引書。木々や草花だけでなく昆虫、鳥、動物が美しく、かつ詳細な絵と解説で季節ごとに紹介されています。
イギリスの小説、特に児童文学を読んでいると、日本にはない自然描写がたびたび登場して、どうしても頭の中にイメージを構築できないことがあります。読んでいるだけなら読み飛ばすこともできますが、翻訳をしようとしていると実に困惑する。
先日も『Tom's Midnight Garden』の中にそんな箇所があり、クラスメイトが参考にといってこの本を持ってきてみんなに見せてくれたのでした。この先いろいろな場面で絶対に役立ってくれそうな内容と、美しいイラストに一目惚れして、さっそくアマゾンで注文してしまいました。中古で252円だったので「どんな状態?」と不安でしたが、カバー裏の上部が5ミリくらい破れている以外はとてもきれいでほっとしました。
田舎の風景を2ページ見開きで描いた絵が四季ごとに3点ずつ掲載されていて、その季節ならではの動植物が細密に描かれ、そうした動植物の名前は手前のページで図示されています。この風景は森、草地と藪、池と小川の三種類ですが、ずっと同じ場所をいわゆる定点観測で描いてあるので、同じ木が季節によってどう変化するのか、どの花がどの季節に花を咲かせるのか、どんな鳥がその季節に見られのかが絵を順に見ていけばわかるようになっています。ただ、絵を描いた人と文章を書いた人が違う場所に住んでいるようで、文章にある動植物が絵には描かれていないことがけっこうあるのがかなり残念。
四季ごとのエッセイ風の部分と動物、昆虫、植物の生態についての生物学的な解説部分とがあり、どちらも面白い。エッセイ部分はかなり詩的な表現や古典からの引用もあり、文章それ自体も楽しめます。中にはイギリス人以外はこんな表現はしないよなあ、というのもあって面白い。「蝶は触覚の先がゴルフのクラブのようにふくらんでいる」なんて、日本人向けのこの手の本には出てこなさそうだし、ヒナギクの「茎を噛んで、ぴりっとした味わいも嬉しい」なんていうのもありました。私が子どもの頃にはサルビアやツツジの蜜を飲んだりしましたが、今はどうなんだろう? 都会では怖くてちょっとできないですよね。クレソンがトーストと瓶詰肉に合う、というのは変じゃないかと友人たちと食事をしているときに話したら、瓶詰肉というのはパテのようなものなんじゃないかと言われて、なるほど、それならおいしそうだと納得しました。
冬になるとある種の動物、昆虫、植物は休眠しますが、この休眠期間にはすべての成長が止まっているのだそうです。つまり年をとらない。そして乾燥地帯の場合は、暑さと旱魃を避けるため、夏に休眠する生物がいるらしい。夏眠と呼ばれます。最近の私、寝ても寝ても眠いんですよね。夜8時間くらい寝て目が覚めても、ごはん食べて本を読んでいるうちにまた異様に眠くなり、我慢できずに横になると3、4時間寝てしまうことも。これってひょっとしたら夏眠? でも、成長が止まったりはしてないですよね。残念。
一回読み終えたらそれで終わりではなく。季節ごとにその時期のページをゆっくり繰って楽しむというのがこの本の楽しみ方なんでしょうね。もちろんイギリスの田舎に住んでいて、この本を持って戸外に出ていけたら、こんな幸せなことはありません。
巻末には和名、英名、学名併記の索引があります。
四季の自然
原題:Nature Through The Seasons
作者:リチャード・アダムズ
絵:ディヴィッド A.ゴダード
訳者:岡部牧夫
出版社:評論社
ISBN:4566020711
イギリスの小説、特に児童文学を読んでいると、日本にはない自然描写がたびたび登場して、どうしても頭の中にイメージを構築できないことがあります。読んでいるだけなら読み飛ばすこともできますが、翻訳をしようとしていると実に困惑する。
先日も『Tom's Midnight Garden』の中にそんな箇所があり、クラスメイトが参考にといってこの本を持ってきてみんなに見せてくれたのでした。この先いろいろな場面で絶対に役立ってくれそうな内容と、美しいイラストに一目惚れして、さっそくアマゾンで注文してしまいました。中古で252円だったので「どんな状態?」と不安でしたが、カバー裏の上部が5ミリくらい破れている以外はとてもきれいでほっとしました。
田舎の風景を2ページ見開きで描いた絵が四季ごとに3点ずつ掲載されていて、その季節ならではの動植物が細密に描かれ、そうした動植物の名前は手前のページで図示されています。この風景は森、草地と藪、池と小川の三種類ですが、ずっと同じ場所をいわゆる定点観測で描いてあるので、同じ木が季節によってどう変化するのか、どの花がどの季節に花を咲かせるのか、どんな鳥がその季節に見られのかが絵を順に見ていけばわかるようになっています。ただ、絵を描いた人と文章を書いた人が違う場所に住んでいるようで、文章にある動植物が絵には描かれていないことがけっこうあるのがかなり残念。
四季ごとのエッセイ風の部分と動物、昆虫、植物の生態についての生物学的な解説部分とがあり、どちらも面白い。エッセイ部分はかなり詩的な表現や古典からの引用もあり、文章それ自体も楽しめます。中にはイギリス人以外はこんな表現はしないよなあ、というのもあって面白い。「蝶は触覚の先がゴルフのクラブのようにふくらんでいる」なんて、日本人向けのこの手の本には出てこなさそうだし、ヒナギクの「茎を噛んで、ぴりっとした味わいも嬉しい」なんていうのもありました。私が子どもの頃にはサルビアやツツジの蜜を飲んだりしましたが、今はどうなんだろう? 都会では怖くてちょっとできないですよね。クレソンがトーストと瓶詰肉に合う、というのは変じゃないかと友人たちと食事をしているときに話したら、瓶詰肉というのはパテのようなものなんじゃないかと言われて、なるほど、それならおいしそうだと納得しました。
冬になるとある種の動物、昆虫、植物は休眠しますが、この休眠期間にはすべての成長が止まっているのだそうです。つまり年をとらない。そして乾燥地帯の場合は、暑さと旱魃を避けるため、夏に休眠する生物がいるらしい。夏眠と呼ばれます。最近の私、寝ても寝ても眠いんですよね。夜8時間くらい寝て目が覚めても、ごはん食べて本を読んでいるうちにまた異様に眠くなり、我慢できずに横になると3、4時間寝てしまうことも。これってひょっとしたら夏眠? でも、成長が止まったりはしてないですよね。残念。
一回読み終えたらそれで終わりではなく。季節ごとにその時期のページをゆっくり繰って楽しむというのがこの本の楽しみ方なんでしょうね。もちろんイギリスの田舎に住んでいて、この本を持って戸外に出ていけたら、こんな幸せなことはありません。
巻末には和名、英名、学名併記の索引があります。
四季の自然
原題:Nature Through The Seasons
作者:リチャード・アダムズ
絵:ディヴィッド A.ゴダード
訳者:岡部牧夫
出版社:評論社
ISBN:4566020711
by timeturner
| 2012-07-15 20:22
| 和書
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