2012年 06月 01日
楽器たちの図書館 |
音の世界に魅せられて〈楽器図書館プロジェクト〉をはじめる表題作をはじめ、ピアノ、CD、ラップ、DJなどさまざまな音が聴こえてくるポップでロックな(でもクラシックもあり)短編小説8編を収録。
韓国映画はもはや陰鬱でどろどろしたイメージは完全に払拭してしまったようですが、文学にも新しい世代が生れていたというのを初めて知りました。作者名と登場人物名を見なかったら日本の小説だと思ってしまいそうです。
「良いマニュアル」を作るプロダクションの経営者やDJ志望の若者、楽器店でアルバイトをしながら楽器の音を録音し続ける男、入社試験を受けては落ちる学生たち、コンサートの企画プロデューサー、天才ピアニストなどなど、登場人物たちもその生活環境も今の日本とまったく変わらず、エスニックな部分、違う部分を求めて海外文学を読む人には拍子抜けするような内容かもしれません。
でも、何か違うんですよねえ。どこだろう? 細かい部分では年上の人を自然に敬う態度とか、若者の礼儀正しさとか、女性の強さといったものなんでしょうが、全体を通して流れる作者の人間観、社会観みたいなものが違うのかもしれない。あきらめてない。人間はみんなたくさんの見えないラインでつながれていて、だから決して孤独ではないというメッセージが見えている。父親の暴力に耐えかねて母親が失踪してしまう、というような悲劇的な話でも、最終的には希望が見える。
まあでも、そんな理屈は抜きにしてとにかく面白いです。どの話にも新鮮なアイディアがあって、暖かいユーモアもあって、読後感がとても心地よい。
韓国語を学ぶ人が増えて、韓国語の翻訳ができる人もたくさん出てきているはず。ほかにも色々な作家がこれから紹介されることを期待していましょう。
楽器たちの図書館
原題:(ハングルが表示されない)
作者:キム・ジュンヒョク
訳者:波田野節子、吉原育子
出版社:クオン
ISBN:4904855043
韓国映画はもはや陰鬱でどろどろしたイメージは完全に払拭してしまったようですが、文学にも新しい世代が生れていたというのを初めて知りました。作者名と登場人物名を見なかったら日本の小説だと思ってしまいそうです。
「良いマニュアル」を作るプロダクションの経営者やDJ志望の若者、楽器店でアルバイトをしながら楽器の音を録音し続ける男、入社試験を受けては落ちる学生たち、コンサートの企画プロデューサー、天才ピアニストなどなど、登場人物たちもその生活環境も今の日本とまったく変わらず、エスニックな部分、違う部分を求めて海外文学を読む人には拍子抜けするような内容かもしれません。
でも、何か違うんですよねえ。どこだろう? 細かい部分では年上の人を自然に敬う態度とか、若者の礼儀正しさとか、女性の強さといったものなんでしょうが、全体を通して流れる作者の人間観、社会観みたいなものが違うのかもしれない。あきらめてない。人間はみんなたくさんの見えないラインでつながれていて、だから決して孤独ではないというメッセージが見えている。父親の暴力に耐えかねて母親が失踪してしまう、というような悲劇的な話でも、最終的には希望が見える。
まあでも、そんな理屈は抜きにしてとにかく面白いです。どの話にも新鮮なアイディアがあって、暖かいユーモアもあって、読後感がとても心地よい。
韓国語を学ぶ人が増えて、韓国語の翻訳ができる人もたくさん出てきているはず。ほかにも色々な作家がこれから紹介されることを期待していましょう。
楽器たちの図書館
原題:(ハングルが表示されない)
作者:キム・ジュンヒョク
訳者:波田野節子、吉原育子
出版社:クオン
ISBN:4904855043
by timeturner
| 2012-06-01 19:35
| 和書
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