2012年 04月 21日
翻訳者の仕事部屋 |
訳者生活37年、SFやミステリー、サスペンスなどの小説から『アンネの日記』まで、手がけた訳書は200冊以上。そのたびごとに異なる人物を演じてきた翻訳者が、翻訳という仕事、読書の楽しみ、そして日常生活について語る、待望の初エッセイ集。巻末に翻訳者を志す人たちのための「フカマチ式翻訳実践講座」を開設。
SFやミステリーから「アンネの日記」まで、200冊以上を手掛けた翻訳者が、翻訳という仕事、読書の楽しみ、日常生活などについて綴るエッセイ。翻訳者を志す人のための「フカマチ式翻訳実践講座」も収録。
1963年から翻訳を始めたとありますから、来年で翻訳生活が半世紀になるベテランならではの遠慮のない物言いが面白いのですが、なにしろあちこちの雑誌に単発で掲載されたエッセイが55編も集められているので、とにかく重複がはなはだしい。1編の長さが短いものが多いので、よけいに重複が目立つんですよね。「訳者は役者」論など、「その話、もう10回以上聞いた!」と言いたくなります。まあ、座右の銘なわけですからころころ変ったらかえっておかしな話で、同じことが出てくるのは当然ではあるのですが・・・。
雑誌掲載が1970~1980年代、この本が出たのが1999年ということもあって、かろうじてインターネットや辞書CDの話までは出てきますが、原稿渡しはFAXかフロッピーどまりで、どうしても翻訳作業の話に古さが出てしまいます。時代の違いをまざまざと感じさせるこんな文章もあります。
もうひとつ、これも“楽になった”うちにはいるのかもしれないが、翻訳物のフィクション、ノンフィクションの読者が、以前とは比較にならないほどふえたこと。かつては、どんなにいい作品でも、翻訳物が国産の作品に伍して、ベストセラーのトップを争うなどということはまずなかった。それだけ読者が翻訳物を苦にしなくなっている、もしくは意識しなくなっているのだろうし、むろん、意識させないだけ、翻訳文の全体的な質があがっているということもある。本が売れれば、翻訳者も潤う。年収ン億という翻訳家だって珍しくはない。
翻訳者の年収がン億になるほど(しかもそれが珍しくない)なんていうのはバブルの頃の話でしょうか。翻訳の質が高くなったという点はその通りだと思いますが、翻訳物を読む若い人は減っているような気がします。
不満ばかり書いてしまいましたが、巻末にある「フカマチ式翻訳実践講座」はすごく参考になったし、好きな本について書かれた部分は本好きを自称するだけあって、とても興味をそそられる内容でした。タビサ・キングの『スモール・ワールド』、島田荘司の『切り裂きジャック 百年の孤独』は読んでみたい。
自ら訳していながらスティーヴン・キングのホラーやルース・レンデルは苦手ときっぱり言ってしまうのも面白いし、爽快。
それにしても1999年時点で1100本にものぼるというベータ形式で録画したテープの数々(そのほとんどは未見だとかがどうなったのかが気になります。1000本超では捨てるのだっておおごとですよね。
翻訳者の仕事部屋
作者:深町眞理子
出版社:飛鳥新社
ISBN:4870313863
SFやミステリーから「アンネの日記」まで、200冊以上を手掛けた翻訳者が、翻訳という仕事、読書の楽しみ、日常生活などについて綴るエッセイ。翻訳者を志す人のための「フカマチ式翻訳実践講座」も収録。
1963年から翻訳を始めたとありますから、来年で翻訳生活が半世紀になるベテランならではの遠慮のない物言いが面白いのですが、なにしろあちこちの雑誌に単発で掲載されたエッセイが55編も集められているので、とにかく重複がはなはだしい。1編の長さが短いものが多いので、よけいに重複が目立つんですよね。「訳者は役者」論など、「その話、もう10回以上聞いた!」と言いたくなります。まあ、座右の銘なわけですからころころ変ったらかえっておかしな話で、同じことが出てくるのは当然ではあるのですが・・・。
雑誌掲載が1970~1980年代、この本が出たのが1999年ということもあって、かろうじてインターネットや辞書CDの話までは出てきますが、原稿渡しはFAXかフロッピーどまりで、どうしても翻訳作業の話に古さが出てしまいます。時代の違いをまざまざと感じさせるこんな文章もあります。
もうひとつ、これも“楽になった”うちにはいるのかもしれないが、翻訳物のフィクション、ノンフィクションの読者が、以前とは比較にならないほどふえたこと。かつては、どんなにいい作品でも、翻訳物が国産の作品に伍して、ベストセラーのトップを争うなどということはまずなかった。それだけ読者が翻訳物を苦にしなくなっている、もしくは意識しなくなっているのだろうし、むろん、意識させないだけ、翻訳文の全体的な質があがっているということもある。本が売れれば、翻訳者も潤う。年収ン億という翻訳家だって珍しくはない。
翻訳者の年収がン億になるほど(しかもそれが珍しくない)なんていうのはバブルの頃の話でしょうか。翻訳の質が高くなったという点はその通りだと思いますが、翻訳物を読む若い人は減っているような気がします。
不満ばかり書いてしまいましたが、巻末にある「フカマチ式翻訳実践講座」はすごく参考になったし、好きな本について書かれた部分は本好きを自称するだけあって、とても興味をそそられる内容でした。タビサ・キングの『スモール・ワールド』、島田荘司の『切り裂きジャック 百年の孤独』は読んでみたい。
自ら訳していながらスティーヴン・キングのホラーやルース・レンデルは苦手ときっぱり言ってしまうのも面白いし、爽快。
それにしても1999年時点で1100本にものぼるというベータ形式で録画したテープの数々(そのほとんどは未見だとかがどうなったのかが気になります。1000本超では捨てるのだっておおごとですよね。
翻訳者の仕事部屋
作者:深町眞理子
出版社:飛鳥新社
ISBN:4870313863
by timeturner
| 2012-04-21 17:18
| 和書
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