2012年 04月 16日
エリザベス女王のお針子 裏切りの麗しきマント |
13歳のメアリーは、領主館の仕立て部屋で職人頭をしている父親のもとで刺繍の腕を磨いていた。ある日、主人の甥であるウォルター・ローリー卿が訪ねてきてメアリーの腕に目をつけ、エリザベス女王に謁見する際のマントを仕上げるよう命じる。なんとか謁見の日までに間に合わせようと仕事に励むメアリーだったが、ある夜、カトリック派の数人の男が、女王の暗殺計画を話しているのを偶然耳にしてしまい、さらにはそこに来合わせた父が殺されるところまで目撃してしまう・・・。
いやもう、ツボに入りまくりの時代設定で、児童書の棚で目にしたとたんにそのあたりにいる子供にとられないよう抱え込んでいました(おとなげない)。ヤングアダルトじゃなくて児童書のコーナーにあったから小学校高学年くらいを対象にしているんだと思うのですが、そのわりにはけっこうきわどい話も出てきて、「えーっ、こんなこと子供に読ませていいの?」なんて思ったりして。でもまあ、いまどきの小学生はませてるんでしょうね。
エリザベス朝の陰謀話ですが、そのわりには主人公であるメアリーの関わり方がいまひとつだし、歴史上の話なので作者が勝手に白黒つけられないから結末も曖昧なんですが、それよりもこの本の素晴らしいところは衣裳に焦点を絞ったところ。これまで読んできた歴史ロマンス小説はほとんどが男性の作者によるものだったので、その時代の街の様子や酒場の雰囲気、建築物の仕様などについては事細かに書かれていたものの、衣裳やアクセサリーなどに関しては通りいっぺんの注意しかはらわれていませんでした。
でも、この本ではエリザベス女王が着ていたようなレースのあの高い襟をどうやって身につけたのかとか、服を作るときにどんな素材をどうやって使っていたのかとか、実に細かいところまで教えてくれます。なかには「ああ、これはあの肖像画を元にして書いたんだな」と思える描写もあって、とても興味深い。メアリーが初めて女王に会ったときに女王が着ていた服は多分これ。
しっかし、いくら景気がよかったとはいえ、男も女もこんなに着道楽していたとは。ウォルター・ローリーはよく見る肖像画にあるとおりの、ハンサムで調子がよくて野心家の男に描かれていますが、映画「エリザベス:ゴールデン・エイジ」でクライヴ・オーウェンが演じたローリー卿よりは軽いかなあ。彼に蹴落とされたレスター伯ロバート・ダドリーのおちぶれた姿が実にあわれな様子に描かれていて気の毒でした。
ところでこの本の原題『Tread Softly』はイエーツの詩からとられているらしく、巻頭にその詩が掲げられています。
エリザベス女王のお針子 裏切りの麗しきマント
原題:Tread Softly
作者:ケイト・ペニントン
訳者:柳井 薫
出版社:徳間書店
ISBN:4198632383
いやもう、ツボに入りまくりの時代設定で、児童書の棚で目にしたとたんにそのあたりにいる子供にとられないよう抱え込んでいました(おとなげない)。ヤングアダルトじゃなくて児童書のコーナーにあったから小学校高学年くらいを対象にしているんだと思うのですが、そのわりにはけっこうきわどい話も出てきて、「えーっ、こんなこと子供に読ませていいの?」なんて思ったりして。でもまあ、いまどきの小学生はませてるんでしょうね。
エリザベス朝の陰謀話ですが、そのわりには主人公であるメアリーの関わり方がいまひとつだし、歴史上の話なので作者が勝手に白黒つけられないから結末も曖昧なんですが、それよりもこの本の素晴らしいところは衣裳に焦点を絞ったところ。これまで読んできた歴史ロマンス小説はほとんどが男性の作者によるものだったので、その時代の街の様子や酒場の雰囲気、建築物の仕様などについては事細かに書かれていたものの、衣裳やアクセサリーなどに関しては通りいっぺんの注意しかはらわれていませんでした。
でも、この本ではエリザベス女王が着ていたようなレースのあの高い襟をどうやって身につけたのかとか、服を作るときにどんな素材をどうやって使っていたのかとか、実に細かいところまで教えてくれます。なかには「ああ、これはあの肖像画を元にして書いたんだな」と思える描写もあって、とても興味深い。メアリーが初めて女王に会ったときに女王が着ていた服は多分これ。
しっかし、いくら景気がよかったとはいえ、男も女もこんなに着道楽していたとは。ウォルター・ローリーはよく見る肖像画にあるとおりの、ハンサムで調子がよくて野心家の男に描かれていますが、映画「エリザベス:ゴールデン・エイジ」でクライヴ・オーウェンが演じたローリー卿よりは軽いかなあ。彼に蹴落とされたレスター伯ロバート・ダドリーのおちぶれた姿が実にあわれな様子に描かれていて気の毒でした。
ところでこの本の原題『Tread Softly』はイエーツの詩からとられているらしく、巻頭にその詩が掲げられています。
Aedh Wishes For The Clothes Of Heavenここに描かれているような織りのマントをローリーのために作る話だからなんでしょうが、あっちの人って本当に詩をよく覚えていて、それを引用しますよね。学校教育の成果なのかな。日本人で自然にそういうことができる人ってめったにいないような気がする。
Had I the heavens' embroidered cloths,
Enwrought with golden and silver light,
The blue and the dim and the dark cloths
Of night and light and the half light,
I would spread the cloths under your feet:
But I, being poor, have only my dreams;
I have spread my dreams under your feet;
Tread softly because you tread on my dreams.
エリザベス女王のお針子 裏切りの麗しきマント
原題:Tread Softly
作者:ケイト・ペニントン
訳者:柳井 薫
出版社:徳間書店
ISBN:4198632383
by timeturner
| 2012-04-16 20:05
| 和書
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