2012年 01月 20日
ミリキタニの猫 |

初めは猫を描く画家のドキュメンタリーを撮っていたはずの監督が、2001年9月11日の世界貿易センタービル崩壊による有毒ガスに咳こむジミーを見ていられず、自宅に招き入れたところから単なるドキュメンタリーの枠をはずれていくのが画期的。なんというのかな、それまでは第三者の視点でのんびり眺めていた私たちオーディエンスまで否応なくジミーの人生に引きずり込まれてしまうような。
そして日本人でもアメリカ人でもない、芸術人としか形容できないジミーのぶっとんだ性格がこの映画を確実に面白くしています。彼が描く絵がいいかどうかは見る人の好みによると思うのですが(私は若い頃の彼が描いていた水墨画のような絵のほうが好きかな)、彼の誇りに満ちた生き方はかっこいいと思う。
アメリカに対する怒りと家族を失った悲しみにこりかたまっていたジミーが、リンダを初め地域コミュニティの協力で生き別れになっていた姉との50年ぶりの再会を果たし、つらい日々を送った強制収容所への訪問で過去を客観視することができるようになり、次第にトラウマから抜け出していく過程は奇跡のようです。80歳を過ぎていても人間は前進できるものなんですね。
それにしても、人種も年代も育った環境も違うホームレスの老人を自分の家に招き入れる懐の深さには驚嘆してしまいます。まあ、それまでに9ヶ月間ジミーを撮影してきたと言いますから、彼の人となりはわかっていたのでしょうが、それでも一緒に暮らすというのは路上で会話をかわすだけとはまるで違いますからね。ハッピーエンドになってほんとによかったと、ジミーよりも監督のために喜びました。
原題:The Cats of Mirikitani(2006)
上映時間:74 分
製作国:アメリカ
監督:リンダ・ハッテンドーフ
出演:ジミー・ツトム・ミリキタニ、リンダ・ハッテンドーフ、ジャニス・ミリキタニ、ロジャー・シモムラほか。
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by timeturner
| 2012-01-20 18:47
| 映画
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