2011年 12月 21日
歌川国芳展(前期)@森アーツセンターギャラリー |
没後150年だそうで、そこでまずびっくり。150年しかたってないの?! ごく最近の人じゃないか。で、作品の制作年を見ると、明治維新のほんの少し前なんてのもある。なんかもうこのあたりの変化の激しさは信じられないほどですね。150年前には浮世絵の中に描かれている日本髪を結って着物の裾をひきずった女の人たちがまだ日本にいたんですよ。びっくりしませんか? 現代のイギリス人が執政時代の人たちの姿を見るより隔絶感は大きいですよね。そうか、ジェイン・オースティンのほうが国芳より年上(23歳)なんだ!
それはともかく、この展覧会は2012年1月17日までの前期と1月19日から2月12日までの後期とで作品がほとんど入れ替わります。前期・後期それぞれ約420点が展示されているそうで、いやもう見ごたえがあるというか疲れるというか。最後のほうは足も腰もよれよれになりました。どうしてもかがみこむ姿勢になるからね。例のスカイツリーが描かれている「東都三ツ股の図」は後記に展示される予定です。
会場は思ったほどは混んでいませんでした。六本木ヒルズという場所がこの手の展覧会に多い年配客を遠ざけたんでしょうか。でもまあ、順番に見ていく途中でなかなか列が進まなくてイライラすることも何度かありましたが。これがねえ、見ごたえがある絵の前で足が止まってしまうというのなら私だってやるし許せるんだけど、例のオーディオガイドをずっと絵の前で聞いて、さらには聞いたことをそのままの位置でメモしてる人がいるんですよ。あとでブログを書くときの参考にでもしようというのでしょうか。絵の前を離れてからメモしなさいよ、と心の中で罵倒してしまいました。
会場は武者絵、説話、役者絵、美人画、子ども絵、風景画、摺物と動物画、戯画、風俗・娯楽・情報、肉筆画・板木・版本と分かれていて、数が多かったのは武者絵かな。で、いちばん迫力があったのがこのジャンル。国芳ってデッサン力がすごいですね。人間や動物、自然界のものの動きを見事にとらえていて、まるで写真のような躍動感です。しかも写真と違って超自然な構図にできるから、さらにダイナミックになっている。あのレーザー光線みたいな光の描き方はどこから思いついたんだろう。とても江戸時代の感覚とは思えません。水のとらえかたも尋常じゃない。荒れる海も澄んだ川も滝の勢いも自由自在です。下の絵は「本朝水滸伝豪傑八百人一個 早川鮎之助」。
写楽は人の顔、北斎は風景に惹かれるけれど、国芳の場合は妖怪変化を初め猫や魚や巨大な鯨・龍・虎といった人間でないものに心惹かれます。今回初めて三枚がそろったという猫の戯画「たとゑ尽の内」や、猫の吉原風景は最高。館内のあちこちに戯画からとった猫のプリントアウトを発泡スチロールの板に貼り付けたものが置いてあって、なごみました。国芳は猫がすごく好きだったそうで、どの猫も表情が豊かで本物みたいです。
いちばんのお気に入りは新発見だという「きん魚づくし」。カエルと手をつないでいる金魚が最高に可愛い!
それと初めて知って驚いたのは風景画の中にオランダの版画の本を参考にしたと思われるものがあるという解説。浮世絵が印象派の画家に大きな影響を与えたことは有名ですが、浮世絵画家のほうも西洋の画家に影響されていたんですね。鎖国中とはいえ、長崎から西洋の書物は入ってきたわけですし。そういえば体の大きな力士の絵が二つあったのですが、他の人間との比率が20対1くらいで、まるでガリバー旅行記。ガリバー旅行記が刊行されたのは国芳が生まれる前ですから、ひょっとしたら挿絵入りの本を目にしていた可能性もありますよね。
あと、ぱっと見たときには愉快な絵だとしか思わないのにジーっとよく見ると驚愕する「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」(チラシの絵)。いやあ、よくもこんなこと考えますねえ。これも西洋の騙し絵から来てるのかしらん。
楽しかった。絶対に後期も行くぞ!
展覧会のサイトはこちら。
それはともかく、この展覧会は2012年1月17日までの前期と1月19日から2月12日までの後期とで作品がほとんど入れ替わります。前期・後期それぞれ約420点が展示されているそうで、いやもう見ごたえがあるというか疲れるというか。最後のほうは足も腰もよれよれになりました。どうしてもかがみこむ姿勢になるからね。例のスカイツリーが描かれている「東都三ツ股の図」は後記に展示される予定です。
会場は思ったほどは混んでいませんでした。六本木ヒルズという場所がこの手の展覧会に多い年配客を遠ざけたんでしょうか。でもまあ、順番に見ていく途中でなかなか列が進まなくてイライラすることも何度かありましたが。これがねえ、見ごたえがある絵の前で足が止まってしまうというのなら私だってやるし許せるんだけど、例のオーディオガイドをずっと絵の前で聞いて、さらには聞いたことをそのままの位置でメモしてる人がいるんですよ。あとでブログを書くときの参考にでもしようというのでしょうか。絵の前を離れてからメモしなさいよ、と心の中で罵倒してしまいました。
会場は武者絵、説話、役者絵、美人画、子ども絵、風景画、摺物と動物画、戯画、風俗・娯楽・情報、肉筆画・板木・版本と分かれていて、数が多かったのは武者絵かな。で、いちばん迫力があったのがこのジャンル。国芳ってデッサン力がすごいですね。人間や動物、自然界のものの動きを見事にとらえていて、まるで写真のような躍動感です。しかも写真と違って超自然な構図にできるから、さらにダイナミックになっている。あのレーザー光線みたいな光の描き方はどこから思いついたんだろう。とても江戸時代の感覚とは思えません。水のとらえかたも尋常じゃない。荒れる海も澄んだ川も滝の勢いも自由自在です。下の絵は「本朝水滸伝豪傑八百人一個 早川鮎之助」。
写楽は人の顔、北斎は風景に惹かれるけれど、国芳の場合は妖怪変化を初め猫や魚や巨大な鯨・龍・虎といった人間でないものに心惹かれます。今回初めて三枚がそろったという猫の戯画「たとゑ尽の内」や、猫の吉原風景は最高。館内のあちこちに戯画からとった猫のプリントアウトを発泡スチロールの板に貼り付けたものが置いてあって、なごみました。国芳は猫がすごく好きだったそうで、どの猫も表情が豊かで本物みたいです。
いちばんのお気に入りは新発見だという「きん魚づくし」。カエルと手をつないでいる金魚が最高に可愛い!
それと初めて知って驚いたのは風景画の中にオランダの版画の本を参考にしたと思われるものがあるという解説。浮世絵が印象派の画家に大きな影響を与えたことは有名ですが、浮世絵画家のほうも西洋の画家に影響されていたんですね。鎖国中とはいえ、長崎から西洋の書物は入ってきたわけですし。そういえば体の大きな力士の絵が二つあったのですが、他の人間との比率が20対1くらいで、まるでガリバー旅行記。ガリバー旅行記が刊行されたのは国芳が生まれる前ですから、ひょっとしたら挿絵入りの本を目にしていた可能性もありますよね。
あと、ぱっと見たときには愉快な絵だとしか思わないのにジーっとよく見ると驚愕する「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」(チラシの絵)。いやあ、よくもこんなこと考えますねえ。これも西洋の騙し絵から来てるのかしらん。
楽しかった。絶対に後期も行くぞ!
展覧会のサイトはこちら。
by timeturner
| 2011-12-21 20:10
| 美術
|
Comments(2)
Commented
by
mak-a
at 2011-12-23 00:23
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この展覧会、行こうと思って前売りチケット買ってあります。
もう行かれたとはさすがです。
鉛筆や消しゴムもなく、紙も貴重だった時代の画家のデッサン力ってすごいですよね。
ますます楽しみになりました☆
もう行かれたとはさすがです。
鉛筆や消しゴムもなく、紙も貴重だった時代の画家のデッサン力ってすごいですよね。
ますます楽しみになりました☆
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by
timeturner at 2011-12-23 04:41
最近は思い立ったときにすぐ行かないと忘れてしまうので、友人が行ったという話を聞いた翌日に行きました(^^;)。後期も忘れないようにしないと。
先日調べ物をしていたときに、江戸時代には浮世絵師がオランダから入ってきた顕微鏡(せいぜい30倍程度)で蚤や虱、蠅なんかを見て正確に描いていた、という記事を読んで、画家にとっては見るものすべてが好奇心の対象なんだなあと感心しました。
先日調べ物をしていたときに、江戸時代には浮世絵師がオランダから入ってきた顕微鏡(せいぜい30倍程度)で蚤や虱、蠅なんかを見て正確に描いていた、という記事を読んで、画家にとっては見るものすべてが好奇心の対象なんだなあと感心しました。