2011年 11月 12日
東京大学本郷キャンパス自然散策会 |
樹木医の石井誠治さんを先生兼ガイドに、樹木の話を聞きながら東大本郷キャンパスを散策しようという文京区の企画に参加してきました。
きのうとはうってかわって晴れた土曜日、暑いくらいのお散歩日和でした。参加者は20名で、「かなり応募が多いなか抽選で選ばれた幸運な方たちです」と係りの方が言っていましたが、本当かしら?とクジ運の悪い私は半信半疑。
初めに先生が用意してらしたイチョウの枝を見せて、芽や葉がどういうふうにつくのか説明してくれます。幹に近いほうの枝についている葉は一ヶ所から4、5枚ぐるっと出ているのですが、先端のほうに行くと一ヶ所に1枚の葉しか出ていない。つまり伸び盛りの先のほうは長く伸びるほうにエネルギーがとられるので葉の数は少なくなるわけです。
次に花のついたハマヒサカキの匂いを嗅がせます。これがなんとも言えないいやな匂い。ハマヒサカキはよく生垣に使われるそうなんですが、花の季節になると決まってガス漏れしているんじゃないかと通報する人がいるくらいだとか。でも、この匂いでハエをおびきよせて受粉を手伝わせるのです。だから花が大きく、匂いが強いのは雄の木なんですって。雌の木は確かにごく小さな花で匂いもほとんどしませんでした。
サザンカも似たような匂いでハエを呼ぶそうです。あんなきれいな花なのにハエとは。
東大と聞いて思い浮かべるのはイチョウですが、そのほかに多いのはケヤキとクス。特にクスの木は常緑樹で葉が落ちないため風を通さないというところから外周に沿って植えられているのだそうです。構内に1本、まったく剪定をしていないクスの木があるのですが、これはもう見事としか言いようがない。クスは常緑樹ですが、葉は1年たつと赤くなって落ちてしまいます。落ちたところにはもう葉はつかないので枝だけが残るのですが、その枝が年月とともにどんどん太くなって、下の写真のような状態に。樹齢100年くらいだそうですが、まだまだ元気にどんどん新しい葉をつけています。樹木のすごいのはそこだと先生は声を大にしていました。動物は寿命があって劣化していくけれど、樹木はそうじゃないんですよね。虫や病気や災害に遭わない限りはいつまででも成長していく。だからこそ樹齢何百年という樹があちこちにあるんですね。
そして、樹木の強さを示す証拠が構内にありました。下の写真のイチョウ、外側の樹皮はもう枯れて死んでいます。ちょっと引っ張るとぼろぼろとはがれてくる。でも、その下から新しい元気な木が顔を出しているんですよね。この木、もともとは樹皮の内側から生えた根なんですって。それが空気に触れ、自らを守るために硬い樹皮をつけるようになり、やがて大きく成長して新しい木になったという。すごいですねえ。
ほかにもイチョウに精子があることを発見した植物学者・平瀬作五郎の話や、イチョウは一科・一属・一種の植物で世界中探しても一種類しかない「生きた化石」と呼ばれる樹木であるとか、やはりイチョウの話が多かったかな。
ちょうどヤマボウシが赤くなりかけていたんですが、これの実はクリーミーでおいしいんですって。試してみたいぞ。あと、ムクもおいしいらしい。でも私の場合、どれがその木か見分けられないのが問題ですね。そばで教えてくれる人がいなければ絶対無理。
そういえば、ヤマボウシやサルスベリのように樹皮がつるつるしていて薄くはがれるタイプの木は、樹皮の下に葉緑体があって光合成をしているので葉っぱがなくても生きていけるのだそうです。ただし、傷つきやすいので苛酷な気候条件の土地には育たない。
その反対にイチョウやサクラのようなコルク質の樹皮をもつ木は葉が茂らないと死んでしまいます。でも、その樹皮で内側を守っているので丈夫なのです。コルクというのは空気は通すけれど水は通さないので、雨などに混じったキノコの胞子や菌が入り込むのを防ぐんだそうです。地中から吸い上げる水も根の部分で濾過するのできれいな水分だけが上まで上がっていく仕組みになっている。
途中で三四郎池の周囲をぐるっと回りました。言われなければ気づかなかったのですが、池のほとりに周囲のトチの木から落ちた実がいくつもころがっていて、それから根付いたと思われる小さなトチの茂みが池の周囲にポツポツと生えていました。あれはやっぱりあまり大きくなる前に抜くのかな。この池のまわりには紅葉する木が多いので12月の初めに来るとすごくいいそうです。忘れずに行かなくては。
そして今日の目玉は懐徳館の庭。懐徳館は旧加賀藩主・前田侯爵邸内の西洋館として明治40年に建造され、建物と敷地は大正15年に東大の所有となったのですが、戦災で昭和20年に焼失しました。それとは別に明治38年に建てられた日本家屋もあったのがこれまた戦災で焼失したのを昭和26年に再建し、それに懐徳館と名付けて大学の迎賓館として使っているのだそうです。なんだかわかりにくいですが現在あるのは日本家屋と日本庭園です。庭園を再建するときには構内及び小石川植物園から樹木を移植し修復して、明治時代の雰囲気をとどめているのだそう。
ふだんは公開されておらず、東大の先生でも入れないんだそうですが、ちょうど大々的に庭の手入れをしているからか、特別に入れていただきました。芝生は張り替えたばかりでまだ市松模様が見えてますし、石を並べた枯山水の庭には職人さんたちがたくさん入って草むしりをしていました。で、その職人さんのひとりが石井先生を知っていたようで、「こんなのがありましたよ」とキクラゲを持ってきた。食用にするのとは違う種類だそうですが、見た目はそっくり。肉厚でさわるとぶにょぶにょしていてかなり不気味でした。
下の写真は石になった木。よーく見ると年輪が出ていて元々は木だとわかります。木の炭素がケイ素と入れ替わって石になったんだそうですが、地学も化学もまるで弱いのでよくわかりません。
先生はまだまだいくらでも話すことはあったようなのですが、ここで係りの人が時間ぎれ宣言。2時間なんてあっという間でした。物足りないぞ。それにもともとが完全無知なところに一度にどっと知識を浴びせられたのでまるで未消化な状態です。とてもじゃないけど、次に外を歩いたときにどれがどの木か言い当てるなんてことはできません。ハマヒサカキだけは匂いを嗅げばわかるかもしれないけど。またこういう機会があったらぜひ参加したいです。
ちなみにきょうの歩数は5,931歩、距離は2,965kmでした。家から東大までバスを使わず往復とも歩いたんだけど、それでも少ないですねえ。
きのうとはうってかわって晴れた土曜日、暑いくらいのお散歩日和でした。参加者は20名で、「かなり応募が多いなか抽選で選ばれた幸運な方たちです」と係りの方が言っていましたが、本当かしら?とクジ運の悪い私は半信半疑。
初めに先生が用意してらしたイチョウの枝を見せて、芽や葉がどういうふうにつくのか説明してくれます。幹に近いほうの枝についている葉は一ヶ所から4、5枚ぐるっと出ているのですが、先端のほうに行くと一ヶ所に1枚の葉しか出ていない。つまり伸び盛りの先のほうは長く伸びるほうにエネルギーがとられるので葉の数は少なくなるわけです。
次に花のついたハマヒサカキの匂いを嗅がせます。これがなんとも言えないいやな匂い。ハマヒサカキはよく生垣に使われるそうなんですが、花の季節になると決まってガス漏れしているんじゃないかと通報する人がいるくらいだとか。でも、この匂いでハエをおびきよせて受粉を手伝わせるのです。だから花が大きく、匂いが強いのは雄の木なんですって。雌の木は確かにごく小さな花で匂いもほとんどしませんでした。
サザンカも似たような匂いでハエを呼ぶそうです。あんなきれいな花なのにハエとは。
東大と聞いて思い浮かべるのはイチョウですが、そのほかに多いのはケヤキとクス。特にクスの木は常緑樹で葉が落ちないため風を通さないというところから外周に沿って植えられているのだそうです。構内に1本、まったく剪定をしていないクスの木があるのですが、これはもう見事としか言いようがない。クスは常緑樹ですが、葉は1年たつと赤くなって落ちてしまいます。落ちたところにはもう葉はつかないので枝だけが残るのですが、その枝が年月とともにどんどん太くなって、下の写真のような状態に。樹齢100年くらいだそうですが、まだまだ元気にどんどん新しい葉をつけています。樹木のすごいのはそこだと先生は声を大にしていました。動物は寿命があって劣化していくけれど、樹木はそうじゃないんですよね。虫や病気や災害に遭わない限りはいつまででも成長していく。だからこそ樹齢何百年という樹があちこちにあるんですね。
そして、樹木の強さを示す証拠が構内にありました。下の写真のイチョウ、外側の樹皮はもう枯れて死んでいます。ちょっと引っ張るとぼろぼろとはがれてくる。でも、その下から新しい元気な木が顔を出しているんですよね。この木、もともとは樹皮の内側から生えた根なんですって。それが空気に触れ、自らを守るために硬い樹皮をつけるようになり、やがて大きく成長して新しい木になったという。すごいですねえ。
ほかにもイチョウに精子があることを発見した植物学者・平瀬作五郎の話や、イチョウは一科・一属・一種の植物で世界中探しても一種類しかない「生きた化石」と呼ばれる樹木であるとか、やはりイチョウの話が多かったかな。
ちょうどヤマボウシが赤くなりかけていたんですが、これの実はクリーミーでおいしいんですって。試してみたいぞ。あと、ムクもおいしいらしい。でも私の場合、どれがその木か見分けられないのが問題ですね。そばで教えてくれる人がいなければ絶対無理。
そういえば、ヤマボウシやサルスベリのように樹皮がつるつるしていて薄くはがれるタイプの木は、樹皮の下に葉緑体があって光合成をしているので葉っぱがなくても生きていけるのだそうです。ただし、傷つきやすいので苛酷な気候条件の土地には育たない。
その反対にイチョウやサクラのようなコルク質の樹皮をもつ木は葉が茂らないと死んでしまいます。でも、その樹皮で内側を守っているので丈夫なのです。コルクというのは空気は通すけれど水は通さないので、雨などに混じったキノコの胞子や菌が入り込むのを防ぐんだそうです。地中から吸い上げる水も根の部分で濾過するのできれいな水分だけが上まで上がっていく仕組みになっている。
途中で三四郎池の周囲をぐるっと回りました。言われなければ気づかなかったのですが、池のほとりに周囲のトチの木から落ちた実がいくつもころがっていて、それから根付いたと思われる小さなトチの茂みが池の周囲にポツポツと生えていました。あれはやっぱりあまり大きくなる前に抜くのかな。この池のまわりには紅葉する木が多いので12月の初めに来るとすごくいいそうです。忘れずに行かなくては。
そして今日の目玉は懐徳館の庭。懐徳館は旧加賀藩主・前田侯爵邸内の西洋館として明治40年に建造され、建物と敷地は大正15年に東大の所有となったのですが、戦災で昭和20年に焼失しました。それとは別に明治38年に建てられた日本家屋もあったのがこれまた戦災で焼失したのを昭和26年に再建し、それに懐徳館と名付けて大学の迎賓館として使っているのだそうです。なんだかわかりにくいですが現在あるのは日本家屋と日本庭園です。庭園を再建するときには構内及び小石川植物園から樹木を移植し修復して、明治時代の雰囲気をとどめているのだそう。
ふだんは公開されておらず、東大の先生でも入れないんだそうですが、ちょうど大々的に庭の手入れをしているからか、特別に入れていただきました。芝生は張り替えたばかりでまだ市松模様が見えてますし、石を並べた枯山水の庭には職人さんたちがたくさん入って草むしりをしていました。で、その職人さんのひとりが石井先生を知っていたようで、「こんなのがありましたよ」とキクラゲを持ってきた。食用にするのとは違う種類だそうですが、見た目はそっくり。肉厚でさわるとぶにょぶにょしていてかなり不気味でした。
下の写真は石になった木。よーく見ると年輪が出ていて元々は木だとわかります。木の炭素がケイ素と入れ替わって石になったんだそうですが、地学も化学もまるで弱いのでよくわかりません。
先生はまだまだいくらでも話すことはあったようなのですが、ここで係りの人が時間ぎれ宣言。2時間なんてあっという間でした。物足りないぞ。それにもともとが完全無知なところに一度にどっと知識を浴びせられたのでまるで未消化な状態です。とてもじゃないけど、次に外を歩いたときにどれがどの木か言い当てるなんてことはできません。ハマヒサカキだけは匂いを嗅げばわかるかもしれないけど。またこういう機会があったらぜひ参加したいです。
ちなみにきょうの歩数は5,931歩、距離は2,965kmでした。家から東大までバスを使わず往復とも歩いたんだけど、それでも少ないですねえ。
by timeturner
| 2011-11-12 19:15
| 学習
|
Comments(4)
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しーちゃん
at 2011-11-12 22:08
x
木っていいですよね~。
私ってどこに行っても、木を沢山撮影してしまってるんですよ。
実家のまわりは木や自然だらけでしたが、東京に来てそうではなくて…。当たり前の事なのですが。。。
ベランダのプランターの木で我慢しています。
今後の散策も楽しんで下さいね。
私ってどこに行っても、木を沢山撮影してしまってるんですよ。
実家のまわりは木や自然だらけでしたが、東京に来てそうではなくて…。当たり前の事なのですが。。。
ベランダのプランターの木で我慢しています。
今後の散策も楽しんで下さいね。
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timeturner at 2011-11-13 18:19
しーちゃん
大きな木のそばにいるだけで癒されますよねえ。
その反面、排気ガスでぼろぼろになっている街路樹を見ると申し訳ない気分でいっぱいになります。人間の勝手であんな目に遭わせているわけですから。
先日の隅田川ウォーキングのときにも、高層ビル群の中にさらにまた高層ビルを建てている工事現場があり、そこにどこかから運ばれてきた生き生きとした若木が数本、根に土がついたまま横にされていました。エントランスあたりに植えるのでしょうが、あの木たちが育った場所と、これから生きる場所の落差を考えて暗澹たる気分になりました。
自然との共存ってほんとに難しい。
大きな木のそばにいるだけで癒されますよねえ。
その反面、排気ガスでぼろぼろになっている街路樹を見ると申し訳ない気分でいっぱいになります。人間の勝手であんな目に遭わせているわけですから。
先日の隅田川ウォーキングのときにも、高層ビル群の中にさらにまた高層ビルを建てている工事現場があり、そこにどこかから運ばれてきた生き生きとした若木が数本、根に土がついたまま横にされていました。エントランスあたりに植えるのでしょうが、あの木たちが育った場所と、これから生きる場所の落差を考えて暗澹たる気分になりました。
自然との共存ってほんとに難しい。
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てぃみ
at 2011-11-14 10:24
x
東大は真夏に行きましたが、木陰が多くてそこはすごくさわやかでした。あの大きな木も見ましたよ。いつか構内の松本楼いくんだ~
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by
shoh
at 2011-11-14 20:35
x
てぃみさん
木陰に入ると体感温度が2、3度下がりますよね。特に三四郎池のあたりは水もあるので涼しい。
松本楼かあ。そういえば行ったことないなあ。あのへんでお昼というと、いつもルオーでカレーを食べてしまうので。今度行ってみようっと。
木陰に入ると体感温度が2、3度下がりますよね。特に三四郎池のあたりは水もあるので涼しい。
松本楼かあ。そういえば行ったことないなあ。あのへんでお昼というと、いつもルオーでカレーを食べてしまうので。今度行ってみようっと。