2011年 06月 15日
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展@国立新美術館 |
「印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション 」という長いサブタイトルがついています。
今年で開館70周年を迎えるワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵の印象派&ポスト印象派の作品の中から、日本初公開の約50点を含む全83点を展示しています。クールベ、コローなどのバルビゾン派、写実主義から始まって、印象派の先駆者ブーダンやマネを経て、モネ、ルノワール、ピサロ、ドガ、カサットなど、そしてポスト印象派としてセザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラなどが順番に展示されていました。
ここのところ行った展覧会の中ではいちばん空いていました。といっても日本人が好きな印象派ですから、それなりに人は入っていますが、会場が広いわりに展示作品数が少ないので、絵と絵の間の間隔が広いのと、大きめの絵が多いので少し下がって見る人が多いこと、オーディオガイドを使用している人は絵の前ではなく脇のほうに立っていることが多かったなど、いくつかの要因が作用してかなり見やすい展覧会でした。おかげで疲れも感じなかったのですが、反面物足りなさも。人間、100%満足ということはないんですね。
興味深かったのは、エッチング、リトグラフ、パステル画など、従来の印象派展覧会ではあまり見ないメディアによる作品が集められた一室があったこと。「あの有名な絵がエッチングの商品としても創られていたんだ!」とか「この画家(メアリー・カサット)は油絵よりカラーリトグラフのほうが持ち味が出るな」とか、面白い発見がいろいろありました。でも、鑑賞者の中には「色がついてないとつまんないわね。こういうのも入れて83点だもの、詐欺だわ」なんて言ってこの部屋を素通りしていくおばさま方もいらっしゃいました。まあ、その人の好みではあるけれど、もったいないなあ。ゴーギャン自身が刷った木版画やロートレックが厚紙に油彩と黒チョークで描いた「アンバサドゥールの粋な人々」なんて本当に素敵だったのに。
画面の中に日本趣味が盛り込まれた絵も何点かあります。上記の部屋に日本画を真似てみたんじゃないかと思われる、マネの「葉のあるキュウリ」という水彩画があるのですが、これが意外に下手でなごめました。
絵の好みというのはずーっと一貫して変わらないものもあれば、そのときによって変わるものもあり、今回は特にセザンヌがいいなあ、と思いました。特に室内画や人物画(「りんごと桃のある静物」「赤いチョッキの少年」)。ダイナミックな構図と色使いが素晴らしい。
ルノワールは以前も今もそれほど好きな画家ではないのですが(あのパステルカラーが苦手)、「アンリオ夫人」を見て、あら、アン・ハサウェイそっくり、と思ってしまった。そういえばアン・ハサウェイってルノワール顔なのかも。ドガの「障害競馬―落馬した騎手」は悲劇的な題材なのに夢のように美しいばら色で描かれていて、その落差が面白い。モネの「日傘の女性、モネ夫人と息子」は最近(といっても私の場合はここ2年以内をさす)別のバリエーションを見た覚えが。でも、このシリーズ(?)はどれを見てもいいですね。
そしてゴッホはやはり別格。遠くから見たときは「ああ、おなじみのあの自画像か」と思った絵も、目の前で見ると、その力強い筆のストロークに言葉もなくなります。全体を明るいグリーンと白で統一した「薔薇」の絵も素敵でした。
9月5日まで。公式ホームページはこちら。
今年で開館70周年を迎えるワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵の印象派&ポスト印象派の作品の中から、日本初公開の約50点を含む全83点を展示しています。クールベ、コローなどのバルビゾン派、写実主義から始まって、印象派の先駆者ブーダンやマネを経て、モネ、ルノワール、ピサロ、ドガ、カサットなど、そしてポスト印象派としてセザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラなどが順番に展示されていました。
ここのところ行った展覧会の中ではいちばん空いていました。といっても日本人が好きな印象派ですから、それなりに人は入っていますが、会場が広いわりに展示作品数が少ないので、絵と絵の間の間隔が広いのと、大きめの絵が多いので少し下がって見る人が多いこと、オーディオガイドを使用している人は絵の前ではなく脇のほうに立っていることが多かったなど、いくつかの要因が作用してかなり見やすい展覧会でした。おかげで疲れも感じなかったのですが、反面物足りなさも。人間、100%満足ということはないんですね。
興味深かったのは、エッチング、リトグラフ、パステル画など、従来の印象派展覧会ではあまり見ないメディアによる作品が集められた一室があったこと。「あの有名な絵がエッチングの商品としても創られていたんだ!」とか「この画家(メアリー・カサット)は油絵よりカラーリトグラフのほうが持ち味が出るな」とか、面白い発見がいろいろありました。でも、鑑賞者の中には「色がついてないとつまんないわね。こういうのも入れて83点だもの、詐欺だわ」なんて言ってこの部屋を素通りしていくおばさま方もいらっしゃいました。まあ、その人の好みではあるけれど、もったいないなあ。ゴーギャン自身が刷った木版画やロートレックが厚紙に油彩と黒チョークで描いた「アンバサドゥールの粋な人々」なんて本当に素敵だったのに。
画面の中に日本趣味が盛り込まれた絵も何点かあります。上記の部屋に日本画を真似てみたんじゃないかと思われる、マネの「葉のあるキュウリ」という水彩画があるのですが、これが意外に下手でなごめました。
絵の好みというのはずーっと一貫して変わらないものもあれば、そのときによって変わるものもあり、今回は特にセザンヌがいいなあ、と思いました。特に室内画や人物画(「りんごと桃のある静物」「赤いチョッキの少年」)。ダイナミックな構図と色使いが素晴らしい。
ルノワールは以前も今もそれほど好きな画家ではないのですが(あのパステルカラーが苦手)、「アンリオ夫人」を見て、あら、アン・ハサウェイそっくり、と思ってしまった。そういえばアン・ハサウェイってルノワール顔なのかも。ドガの「障害競馬―落馬した騎手」は悲劇的な題材なのに夢のように美しいばら色で描かれていて、その落差が面白い。モネの「日傘の女性、モネ夫人と息子」は最近(といっても私の場合はここ2年以内をさす)別のバリエーションを見た覚えが。でも、このシリーズ(?)はどれを見てもいいですね。
そしてゴッホはやはり別格。遠くから見たときは「ああ、おなじみのあの自画像か」と思った絵も、目の前で見ると、その力強い筆のストロークに言葉もなくなります。全体を明るいグリーンと白で統一した「薔薇」の絵も素敵でした。
9月5日まで。公式ホームページはこちら。
by timeturner
| 2011-06-15 20:05
| 美術
|
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