2011年 06月 02日
心にのこる言葉 ベストコレクション162 |
海外の小説や評論から取った短い言葉を英語と翻訳で右側のページに、その言葉について著者が考えたこと、あるいは解説を左側のページに、ひとつの言葉について見開き2ページで処理したエッセイ集。
雑誌に連載されていたものを掲載した5冊を出版したら非常に評判がよく、再刊を望む声が高かったので中でもよいと思われるものを著者自身が選んでまとめた選集、だとあとがきにありましたが、なるほど評判がいいのも心から納得できる内容です。
正直言って最初のほうは愛に関する内容が多く、ひょっとしたら若い人向けの生き方指南書?、と腰が引けたのですが、どんどん読み進んでいったら、いやいやそんな底の浅いものではありませんでした。
右ページに挙げられている言葉の数々も素晴らしいのですが、それに対する小野寺先生の含蓄のある語りがなんともいえません。長い年月を真摯に生きてきた人ならではの厳しさで若い人への批判もでますが、その底に実に温かい心があるのでちっともいやな感じがしない。むしろ「もっと叱って!」と甘えたくなります。先生としては還暦を過ぎたおばさんにそんなふうに迫られたら怖いでしょうけど。
紹介されている言葉は当然ながらほとんどが西洋、特にイギリスの文学者、詩人、学者です。知っている人の場合は「へえ、こんなことも言っているのか」とか「そうそう、こういう箇所あったな」と思い、知らない人の場合は「機会があったら読んでみよう」と思わされます。偉大な人の偉大な(正しすぎてさからえないような)言葉ばかりではなく、17世紀のダメ男サミュエル・ピープスや、自己顕示欲の権化オスカー・ワイルドの「え?」と思うような言葉も載っているのがまた面白い。それも決して反面教師としてではなく、人間味あふれる共感をもって。
これは一気読みして最後までいったら終わり、という読み方ではもったいない。つねに手元に置いて、おりにふれ目を通したい本です。友人から借りたのですが、自分でも買ってしまおう。
Life is a maze in which we take wrong turning before we learnt to walk.(from " The Uniquiet Grave" by Cyril Connolly)
人生とは、歩き方をおぼえるまでは間違った道ばかり選んでしまう迷路だ。
We should constantly use the most common little, easy words which our language affords.(from " Of preaching to 'plain people'" by John Wesley)
いつでも、われわれの言葉が許すかぎり、もっともありふれた、ささやかな、やさしい言葉を使わなくてはいけない。
翻訳のときにも気をつけるべきことですね。そうそう、「卑下慢」なんていう言葉があることもこの本を読んでいて初めて知りました。
作者:小野寺 健
出版社:筑摩書房
ISBN:9784480427755
雑誌に連載されていたものを掲載した5冊を出版したら非常に評判がよく、再刊を望む声が高かったので中でもよいと思われるものを著者自身が選んでまとめた選集、だとあとがきにありましたが、なるほど評判がいいのも心から納得できる内容です。
正直言って最初のほうは愛に関する内容が多く、ひょっとしたら若い人向けの生き方指南書?、と腰が引けたのですが、どんどん読み進んでいったら、いやいやそんな底の浅いものではありませんでした。
右ページに挙げられている言葉の数々も素晴らしいのですが、それに対する小野寺先生の含蓄のある語りがなんともいえません。長い年月を真摯に生きてきた人ならではの厳しさで若い人への批判もでますが、その底に実に温かい心があるのでちっともいやな感じがしない。むしろ「もっと叱って!」と甘えたくなります。先生としては還暦を過ぎたおばさんにそんなふうに迫られたら怖いでしょうけど。
紹介されている言葉は当然ながらほとんどが西洋、特にイギリスの文学者、詩人、学者です。知っている人の場合は「へえ、こんなことも言っているのか」とか「そうそう、こういう箇所あったな」と思い、知らない人の場合は「機会があったら読んでみよう」と思わされます。偉大な人の偉大な(正しすぎてさからえないような)言葉ばかりではなく、17世紀のダメ男サミュエル・ピープスや、自己顕示欲の権化オスカー・ワイルドの「え?」と思うような言葉も載っているのがまた面白い。それも決して反面教師としてではなく、人間味あふれる共感をもって。
これは一気読みして最後までいったら終わり、という読み方ではもったいない。つねに手元に置いて、おりにふれ目を通したい本です。友人から借りたのですが、自分でも買ってしまおう。
Life is a maze in which we take wrong turning before we learnt to walk.(from " The Uniquiet Grave" by Cyril Connolly)
人生とは、歩き方をおぼえるまでは間違った道ばかり選んでしまう迷路だ。
シリル・コノリー(1903-1974)
イギリスの批評家。スティーブン・スペンダーらと雑誌「ホライゾン」を創刊。動乱の時代に高踏的な文芸の水準の維持に努めた。
人生の歩き方といえば、どんなことが考えられるだろう。前にもふれたことがある、自分へのこだわり―つまり自己愛―の飼い慣らし方といった、精神の姿勢のような問題もそのひとつだろう。
もうすこし具体的な例では、急ぎ過ぎない、欲張り過ぎないといった、「過ぎない」シリーズとでも名付けたい心構えがある。食べ過ぎないという一項だって、むろんそのひとつね。
We should constantly use the most common little, easy words which our language affords.(from " Of preaching to 'plain people'" by John Wesley)
いつでも、われわれの言葉が許すかぎり、もっともありふれた、ささやかな、やさしい言葉を使わなくてはいけない。
ジョン・ウェズリー(1704-1791)
イギリスの宗教家・賛美歌作者。メソディスト会の指導者。名説教家として知られる。
やさしい言葉を使えば言っていることが無内容なのもすぐわかるという効果も、よく知られていて、だからこそ逆に人を煙にまいてごまかそうという時には、むずかしくて景気ばかりいい言葉を羅列するのだ。
翻訳のときにも気をつけるべきことですね。そうそう、「卑下慢」なんていう言葉があることもこの本を読んでいて初めて知りました。
作者:小野寺 健
出版社:筑摩書房
ISBN:9784480427755
by timeturner
| 2011-06-02 23:59
| 和書
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