2011年 04月 12日
縛り首の丘 |
ポルトガルの下級官吏テオドーロは、贅沢はできないが衣食住には困らない生活にそこそこ満足していたが、ある日、古本屋で買ってきた本を読んでいると部屋にいきなり黒ずくめの男が現れ、机の上の呼び鈴を鳴らすと遙か彼方の中国で大官(マンダリン)がひとり死に、その莫大な財産がテオドーロのものになると言った(『大官を殺せ』)。愛する女のもとへ馬を駆る若き騎士ドン・ルイが刑場の丘を通りすぎると、縛り首の死体が「俺を連れていけ、何かの役に立つはずだ」と語りかけた(『縛り首の丘』)。
ポルトガル文学は多分初めて読んだと思いますが、びっくりするほど面白かった。『大官を殺せ』のほうはキャメロン・ディアス主演の「運命のボタン」を思わせる設定です。映画は見ていないので結末がどうなっているのかわかりませんが、こちらはなんとも無情というか虚無的。でも、これ以外の終わりようはないだろうなあ。ストーリーがどうとかいうよりも、味わい深い文章を噛みしめながら不思議な世界にしばし漂う愉悦を満喫するのがオススメ。
暗いユーモアと風刺が散りばめられた幻想的でありながらリアルな、不思議な味わいの作品です。少し古めかしい訳も内容にぴったり。元々の文体のせいなのか、訳のせいなのか、なんとなく『白い果実』のジェフリー・フォードのような匂いを感じました。
この作者の別作品『ある金髪娘の奇行』の翻訳が訳者のホームページで読めます。
縛り首の丘 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
原題:O Mandarim / O Defunto
作者:エッサ・デ・ケイロース
訳者:彌永史郎
出版社:白水社
ISBN:4560071357
ポルトガル文学は多分初めて読んだと思いますが、びっくりするほど面白かった。『大官を殺せ』のほうはキャメロン・ディアス主演の「運命のボタン」を思わせる設定です。映画は見ていないので結末がどうなっているのかわかりませんが、こちらはなんとも無情というか虚無的。でも、これ以外の終わりようはないだろうなあ。ストーリーがどうとかいうよりも、味わい深い文章を噛みしめながら不思議な世界にしばし漂う愉悦を満喫するのがオススメ。
暗いユーモアと風刺が散りばめられた幻想的でありながらリアルな、不思議な味わいの作品です。少し古めかしい訳も内容にぴったり。元々の文体のせいなのか、訳のせいなのか、なんとなく『白い果実』のジェフリー・フォードのような匂いを感じました。
この作者の別作品『ある金髪娘の奇行』の翻訳が訳者のホームページで読めます。
縛り首の丘 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
原題:O Mandarim / O Defunto
作者:エッサ・デ・ケイロース
訳者:彌永史郎
出版社:白水社
ISBN:4560071357
by timeturner
| 2011-04-12 17:59
| 和書
|
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