2011年 03月 09日
ドリトル先生の英国 |
作者が小学校2年生の時に『ドリトル先生航海記』と出会い、人生の方向が少なからず決まった。英文学を専攻し、作家となって、もう一度読み返したとき、子供の頃にはわからなかったこと、気づかなかったことが見えてくる。新たな感動をもとに、豊かな知識と深い洞察力で物語の背景となっている19世紀の英国を解き明かす・・・。
新書というのは岩波を例にとると、古典を収録する文庫に対し、書下ろしを中心に「現代人の現代的教養を目的」に刊行されているのだそうで、たいていの新書はそういう方向で出されているように思えます。広く浅く、素人にもわかるようにわかりやすくまとめた概説といったものが多いですよね。忙しい現代人にとってはそれがありがたいわけですが、なかにはあまりにも表面的すぎて物足りないものもあります。
実を言うとこの本も題名だけ見たときは、ドリトル先生の話に出てくるイギリスの食べ物や風物について薀蓄を傾けるだけの本かもしれないと思ったのですが、いざ読み始めてみたらとんでもなく面白い本でした。
ドリトル先生は博物学者という設定ですが、この本の作者はさしずめ英文学の博物学者といったところ。もちろん、アブラミのお菓子とは何か、とか、オシツオサレツという訳語はどこから来たのか、といった解説もあるのですが、それだけに終わらず、ロフティングの生き方・考え方に迫ろうとしているのがいい。著者の小説は読んだことがないんですが、この新書を読む限りではユーモアにあふれた楽しい文体で、きっと面白いんだろうなあと思わせます。
また、この時代の英国で書かれた、あるいはこの時代の英国について書かれたあらゆる書物からの引用が随所にされていて、これがとても興味深い。進化論、人種偏見、植民地主義、宗教観、女性観、結婚観、さらにはヒットラーまで、原作に書かれている、あるいは隠されているさまざまな事実を示してくれるので、読んだら読みっぱなしで終わるのではなく、読者はそこからさらに奥深くわけいっていくことが可能です。まさに知的エンターテインメントともいうべき一冊。
私ももう一度ドリトル先生シリーズを読み返してみようっと。
ドリトル先生の英国 (文春新書)
作者:南條竹則
出版社:文藝春秋社
ISBN:416660130X
新書というのは岩波を例にとると、古典を収録する文庫に対し、書下ろしを中心に「現代人の現代的教養を目的」に刊行されているのだそうで、たいていの新書はそういう方向で出されているように思えます。広く浅く、素人にもわかるようにわかりやすくまとめた概説といったものが多いですよね。忙しい現代人にとってはそれがありがたいわけですが、なかにはあまりにも表面的すぎて物足りないものもあります。
実を言うとこの本も題名だけ見たときは、ドリトル先生の話に出てくるイギリスの食べ物や風物について薀蓄を傾けるだけの本かもしれないと思ったのですが、いざ読み始めてみたらとんでもなく面白い本でした。
ドリトル先生は博物学者という設定ですが、この本の作者はさしずめ英文学の博物学者といったところ。もちろん、アブラミのお菓子とは何か、とか、オシツオサレツという訳語はどこから来たのか、といった解説もあるのですが、それだけに終わらず、ロフティングの生き方・考え方に迫ろうとしているのがいい。著者の小説は読んだことがないんですが、この新書を読む限りではユーモアにあふれた楽しい文体で、きっと面白いんだろうなあと思わせます。
また、この時代の英国で書かれた、あるいはこの時代の英国について書かれたあらゆる書物からの引用が随所にされていて、これがとても興味深い。進化論、人種偏見、植民地主義、宗教観、女性観、結婚観、さらにはヒットラーまで、原作に書かれている、あるいは隠されているさまざまな事実を示してくれるので、読んだら読みっぱなしで終わるのではなく、読者はそこからさらに奥深くわけいっていくことが可能です。まさに知的エンターテインメントともいうべき一冊。
私ももう一度ドリトル先生シリーズを読み返してみようっと。
ドリトル先生の英国 (文春新書)
作者:南條竹則
出版社:文藝春秋社
ISBN:416660130X
by timeturner
| 2011-03-09 21:13
| 和書
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