2010年 10月 27日
薔薇の名前 |
13世紀のイタリア。フランシスコ派の修道士ウィリアムが弟子のアドソを連れてやってきた修道院では、折りしもひとりの修道士が謎の死を遂げ、悪魔の仕業だとの噂に誰もが動揺していた。調査を始めたふたりの前に、さらなる殺人事件が降りかかり、さらにはウィリアムと過去に確執があったらしい異端審問官の登場によって事態はますます緊迫していく・・・。
昔見た記憶があるんですが、その頃は特にヨーロッパ中世に興味もなかったし、ウンベルト・エーコの原作も読んでいなかったので(今もまだ未読)印象が薄かったのか、ほとんど何も覚えていませんでした。
いやあ、いい雰囲気です。迷信と貧困が満ち満ちた中世の村と、閉鎖的な修道院の暮らしがリアルに描かれていて、まるで博物館で講義付きのドラマを見せてもらっているような気になります。原作はかなり難解でベストセラーにはなったものの実際に読了した人は少ないと監督がコメンタリー(さすがフランス人で最初から最後までひとりで喋り通しで非常に情報量が多い)で語っていますが、映画のほうはとてもわかりやすく、ある程度の基礎知識があれば容易についていけます。それでいてエンターテインメントだからと妥協していないのがいい。
舞台となる修道院のセットが素晴らしくて、特に禁断の書を隠してある秘密の図書館内部の階段は圧巻です。ひょっとしてハリー・ポッターシリーズのホグワーツはこの映画を参考にしたんじゃないのかな。この映画では原作者がエッシャーのだまし絵を出してきて説明したものを元にして作ったようなことを言っていましたが、確かにエッシャー風のイメージ。あのセット作るの、大変だったろうなあ。
現代のテンポの速い映画を見慣れた観客には展開がゆっくり過ぎると感じられる部分もありますが、逆にそのせいで重厚な雰囲気が保たれているんだと思う。製作当時、ショーン・コネリーの起用には多くの人が反対したそうですが、映画の成功の1割くらいは彼のおかげだと思う。弟子のアドソ役は当時15歳のクリスチャン・スレーターが大抜擢されていますが、演技はまだまだ。それにしても15歳でこれだけの映画で重要な役をふられ、ショーン・コネリーと共演のチャンスをつかんだのに、彼のその後を見ると残念ですねえ。
監督のコメンタリーで興味深かったのは、F・マーレイ・エイブラハムが「アマデウス」でオスカーをとった直後でものすごく天狗になっていて、オスカーをとっていないショーン・コネリーより先にはセットに入らないと言って撮影現場に遅刻してくるのでコネリーが怒ったという話。「そういう噂はすぐに伝わるからね。やがては落ちぶれていくんだよね」と監督は言っていましたが、確かにそうなってしまったようですね。でも、そういう話をコメンタリーで暴露しちゃうってのも珍しいです。
原題:The Name of The Rose(1986)
上映時間:132 分
製作国:フランス/イタリア/西ドイツ
監督:ジャン=ジャック・アノー
出演:ショーン・コネリー、F・マーレイ・エイブラハム、クリスチャン・スレイター、エリヤ・バスキン、フェオドール・シャリアピン・Jr、ウィリアム・ヒッキー、ミシェル・ロンズデール、ロン・パールマン、キム・ロッシ=スチュアート、ドナル・オブライアンほか。
声の出演:ドワイト・ワイスト
昔見た記憶があるんですが、その頃は特にヨーロッパ中世に興味もなかったし、ウンベルト・エーコの原作も読んでいなかったので(今もまだ未読)印象が薄かったのか、ほとんど何も覚えていませんでした。
いやあ、いい雰囲気です。迷信と貧困が満ち満ちた中世の村と、閉鎖的な修道院の暮らしがリアルに描かれていて、まるで博物館で講義付きのドラマを見せてもらっているような気になります。原作はかなり難解でベストセラーにはなったものの実際に読了した人は少ないと監督がコメンタリー(さすがフランス人で最初から最後までひとりで喋り通しで非常に情報量が多い)で語っていますが、映画のほうはとてもわかりやすく、ある程度の基礎知識があれば容易についていけます。それでいてエンターテインメントだからと妥協していないのがいい。
舞台となる修道院のセットが素晴らしくて、特に禁断の書を隠してある秘密の図書館内部の階段は圧巻です。ひょっとしてハリー・ポッターシリーズのホグワーツはこの映画を参考にしたんじゃないのかな。この映画では原作者がエッシャーのだまし絵を出してきて説明したものを元にして作ったようなことを言っていましたが、確かにエッシャー風のイメージ。あのセット作るの、大変だったろうなあ。
現代のテンポの速い映画を見慣れた観客には展開がゆっくり過ぎると感じられる部分もありますが、逆にそのせいで重厚な雰囲気が保たれているんだと思う。製作当時、ショーン・コネリーの起用には多くの人が反対したそうですが、映画の成功の1割くらいは彼のおかげだと思う。弟子のアドソ役は当時15歳のクリスチャン・スレーターが大抜擢されていますが、演技はまだまだ。それにしても15歳でこれだけの映画で重要な役をふられ、ショーン・コネリーと共演のチャンスをつかんだのに、彼のその後を見ると残念ですねえ。
監督のコメンタリーで興味深かったのは、F・マーレイ・エイブラハムが「アマデウス」でオスカーをとった直後でものすごく天狗になっていて、オスカーをとっていないショーン・コネリーより先にはセットに入らないと言って撮影現場に遅刻してくるのでコネリーが怒ったという話。「そういう噂はすぐに伝わるからね。やがては落ちぶれていくんだよね」と監督は言っていましたが、確かにそうなってしまったようですね。でも、そういう話をコメンタリーで暴露しちゃうってのも珍しいです。
原題:The Name of The Rose(1986)
上映時間:132 分
製作国:フランス/イタリア/西ドイツ
監督:ジャン=ジャック・アノー
出演:ショーン・コネリー、F・マーレイ・エイブラハム、クリスチャン・スレイター、エリヤ・バスキン、フェオドール・シャリアピン・Jr、ウィリアム・ヒッキー、ミシェル・ロンズデール、ロン・パールマン、キム・ロッシ=スチュアート、ドナル・オブライアンほか。
声の出演:ドワイト・ワイスト
by timeturner
| 2010-10-27 21:54
| 映画
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