2010年 06月 06日
召使と私―そしてギベール写真集『孤独の肖像』抄 |
大金持ちの老人が元映画俳優(15歳のときに1度だけつまらない映画に主演した)の青年を召使として雇い、身の回りの世話をさせることにした。初めのうちは素直で献身的な若者で、ひたすら老人の手足となって働いているかに見えたが、次第にふたりの立場は逆転して・・・。
老人の手記という一方的な形をとっているにも関わらず、次第に青年の実像が浮かび上がってきます。トビラにあるタイトルの下に「滑稽小説」とあるのですが、私にはまったく滑稽には感じられなかった。ひたすら不気味で怖い。老人がどんどん衰えていく様子が残酷なまでに生々しく書かれているのも怖いし、青年がじわじわと正体を現していくのも怖い。ほとんどすべてが老人の家という密室で展開するのも怖い。
ギベールはゲイの作家でエイズに罹り、『ぼくの命を救ってくれなかった友へ』で病気の進行を詳細に書き記した人ですが、彼自身が自分の体という密室にエイズという異分子を抱え込み、一緒に暮らさなくてはならなかったという状況から生まれたのかなあ、という気もします。
副題の「そしてギベール写真集『孤独の肖像』抄」というのは、初めの数ページに写真家でもあったギベールが友人たちを撮った写真が掲載されていることを示します。写真部分も普通の上質紙だし、小さな版だし、わざわざ副題にするほどのものじゃないような気がしますが。
原題:Mon valet et moi
作者:エルヴェ・ギベール
訳者:野崎 歓
出版社:集英社
ISBN:4087731642
老人の手記という一方的な形をとっているにも関わらず、次第に青年の実像が浮かび上がってきます。トビラにあるタイトルの下に「滑稽小説」とあるのですが、私にはまったく滑稽には感じられなかった。ひたすら不気味で怖い。老人がどんどん衰えていく様子が残酷なまでに生々しく書かれているのも怖いし、青年がじわじわと正体を現していくのも怖い。ほとんどすべてが老人の家という密室で展開するのも怖い。
ギベールはゲイの作家でエイズに罹り、『ぼくの命を救ってくれなかった友へ』で病気の進行を詳細に書き記した人ですが、彼自身が自分の体という密室にエイズという異分子を抱え込み、一緒に暮らさなくてはならなかったという状況から生まれたのかなあ、という気もします。
副題の「そしてギベール写真集『孤独の肖像』抄」というのは、初めの数ページに写真家でもあったギベールが友人たちを撮った写真が掲載されていることを示します。写真部分も普通の上質紙だし、小さな版だし、わざわざ副題にするほどのものじゃないような気がしますが。
原題:Mon valet et moi
作者:エルヴェ・ギベール
訳者:野崎 歓
出版社:集英社
ISBN:4087731642
by timeturner
| 2010-06-06 22:47
| 和書
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