2010年 05月 12日
ブルームズベリーふたたび |
フォースターの『眺めのいい部屋』や、そのフォースターが属していたブルームズベリー・グループの中心人物だったヴァネッサ・ベルの息子クウェンティン・ベルが書いた『回想のブルームズベリー―すぐれた先輩たちの肖像』を訳した英文学者による、トルコ・ギリシャ、ネパール、そしてイギリスへの旅の記録。
ギリシャ・トルコとネパールの2編は、識者をリーダーとした団体旅行の記録で、ところどころに鋭い観察や軽妙なユーモアが見られるものの、次々と大量に与えられる情報をただ受けとめるだけの旅にありがちな「受け売り」感があって、いまひとつ身を入れて読む気になれません。
ところが、ひとたび舞台がイギリスになり、よく知った世界の話になるとがぜん面白くなってきます。コンビニで売ってる食パンにマーガリンを塗った朝食が続いた後に本物のイングリッシュ・ブレックファストが出てきたみたいな感じ。噛みごたえと深い味わいが出てきます。
ケンブリッジ大学キングズ・コレッジのアーカイヴ、ヴァネッサたちが暮らしたチャールストンの農場、ヴァージニア・ウルフが住んだモンクス・ハウスと彼女が身を投げたウーズ川を訪ね、ブルームズベリー・グループの個性あふれるメンバーたちの生きざまが語られ、そこに著者が小学校6年のときに亡くなったケインズ学者の父親との縁がからみ、自らの子ども時代の決意が細い糸で縫われたステッチのように見え隠れして、実に見事にしてやられました。最後の幻想的なエピソードはひょっとしたらフィクションかもしれない。読者がひっかかるのを想像してにんまりしながら書いている著者の姿が目に浮かびます。
作者:北條文緒
出版社:みすず書房
ISBN:4622046679
ギリシャ・トルコとネパールの2編は、識者をリーダーとした団体旅行の記録で、ところどころに鋭い観察や軽妙なユーモアが見られるものの、次々と大量に与えられる情報をただ受けとめるだけの旅にありがちな「受け売り」感があって、いまひとつ身を入れて読む気になれません。
ところが、ひとたび舞台がイギリスになり、よく知った世界の話になるとがぜん面白くなってきます。コンビニで売ってる食パンにマーガリンを塗った朝食が続いた後に本物のイングリッシュ・ブレックファストが出てきたみたいな感じ。噛みごたえと深い味わいが出てきます。
ケンブリッジ大学キングズ・コレッジのアーカイヴ、ヴァネッサたちが暮らしたチャールストンの農場、ヴァージニア・ウルフが住んだモンクス・ハウスと彼女が身を投げたウーズ川を訪ね、ブルームズベリー・グループの個性あふれるメンバーたちの生きざまが語られ、そこに著者が小学校6年のときに亡くなったケインズ学者の父親との縁がからみ、自らの子ども時代の決意が細い糸で縫われたステッチのように見え隠れして、実に見事にしてやられました。最後の幻想的なエピソードはひょっとしたらフィクションかもしれない。読者がひっかかるのを想像してにんまりしながら書いている著者の姿が目に浮かびます。
作者:北條文緒
出版社:みすず書房
ISBN:4622046679
by timeturner
| 2010-05-12 23:17
| 和書
|
Comments(0)