2021年 09月 30日
Chronicles of Martin Hewitt |
『Martin Hewitt, Investigator』に続く、《マーチン・ヒューイット》シリーズの2冊目。何編かは東京創元社から出た『マーチン・ヒューイットの事件簿』に収録されている。今年、作品社から『マーチン・ヒューイット【完全版】』が出たので、おそらく全作品が翻訳収録されているのだろう。
The Ivy Cottage Mystery 結婚を間近に控えた裕福な青年が自宅で死んでいるのが見つかった。夜中に鈍器のようなもので後頭部を殴られたらしい。彼が以前暮らしていた下宿屋で同宿だったブレットが不思議な話を聞きこんできたことから、ヒューイットは犯行の動機に気づき・・・。大金のためとはいえ、あんな手間をかけるのはめんどくさいなあと思うわたしは犯罪に向いてないんだと思う。
The Nicobar Bullion Case 金の延べ棒を積んでいた貨物船ニコウバーが衝突事故に遭い、海岸から1マイルのところで沈没した。さっそく保険会社が潜水士を使って金を回収したが、40箱あったはずが38箱しか船内には残っていなかった・・・。ちょっと長めで3章に分かれており、1章は貨物船上の話だけでヒューイットの影も形も出てこない。まあ、金の延べ棒の話が出たとたんに、あ、これが盗まれるんだな、そこで探偵登場だなとは思ったけど。見事に食い違う証言をどうさばくのかと思っていたら――。この頃の潜水服の出来がよくわからないのだけれど、初心者がいきなり身に着けて潜れるものなのか?
The Holford Will Case かつての雇用主である弁護士から急な呼び出しを受けたヒューイットが駆けつけると、資産家の親友がごく最近病死したのだが、遺言書がみつからないという。その遺言書では屋敷と財産の多くがかわいがっていた養女に遺されることになっていたが、遺言書がみつからないと全て甥のものになってしまう・・・。心霊学にかかわる事件だとブレットが冒頭で書いていたので、幽霊が出てきて遺言書のありかを示すのかと思っていたのだけど、このシリーズでそれはなかった。
The Case of the Missing Hand ブレットのおじが暮らす田舎の猟園で休暇を過ごしていたブレットとヒューイットは、近くの森で奇妙な死体が見つかったと知らされた。首に縄をかけて木から吊るされ、片手が切り落とされているという・・・。親切そうな見かけに騙されて再婚すると、相手の男は財産目当てで、その財産が信託で自由にできないとわかると本性を表し暴力をふるう――当然、家族に殺されたんだと読者も警察も考えるが、ヒューイットだけは目のつけどころが違う。古くからの迷信を使ったトリック。
The Case of Laker, Absconded 某銀行の集金係レイカーがいつものように市内の銀行を回り、金を集めたのちに姿を消した。横領の疑いが濃く、すぐにスコットランド・ヤードが捜査を始めたが、それとは別に保険会社の依頼を受けたヒューイットもレイカーの前日の足どりをたどり・・・。これはミステリー慣れした人間なら最初から見当がつく。ところで、ヒューイットに依頼をしてきた保険会社というのは、銀行や保険会社の事務員にかける保険を扱うところで、それは事務員が病気をしたり事故に遭ったりした際に支払われるのではなく、その事務員がなんらかの問題を起こした際に、会社に生じさせた損失を補填するものらしい。それって、はなから従業員を疑ってることになるんじゃないの? そういう保険って日本にもあるのかな。
The Case of the Lost Foreigner 路上で不審なようすを見せていた男が警察署に連れてこられた。フランス人らしいというので、たまたま居合わせたヒューイットが話しかけてみたら、まともな言葉が話せない。おまけに食パンの塊を見せると狂ったように騒ぐのだという・・・。ロンドンを拠点にしたアナーキスト集団のテロの話。ずいぶん考えて準備したわりに手もなく捕まるのはリアリティが乏しい。
Chronicles of Martin Hewitt
邦題:マーチン・ヒューイットの事件簿
作者:Arthur Morrison
出版社:Project Gutenberg
ISBN:Kindle版
The Ivy Cottage Mystery 結婚を間近に控えた裕福な青年が自宅で死んでいるのが見つかった。夜中に鈍器のようなもので後頭部を殴られたらしい。彼が以前暮らしていた下宿屋で同宿だったブレットが不思議な話を聞きこんできたことから、ヒューイットは犯行の動機に気づき・・・。大金のためとはいえ、あんな手間をかけるのはめんどくさいなあと思うわたしは犯罪に向いてないんだと思う。
The Nicobar Bullion Case 金の延べ棒を積んでいた貨物船ニコウバーが衝突事故に遭い、海岸から1マイルのところで沈没した。さっそく保険会社が潜水士を使って金を回収したが、40箱あったはずが38箱しか船内には残っていなかった・・・。ちょっと長めで3章に分かれており、1章は貨物船上の話だけでヒューイットの影も形も出てこない。まあ、金の延べ棒の話が出たとたんに、あ、これが盗まれるんだな、そこで探偵登場だなとは思ったけど。見事に食い違う証言をどうさばくのかと思っていたら――。この頃の潜水服の出来がよくわからないのだけれど、初心者がいきなり身に着けて潜れるものなのか?
The Holford Will Case かつての雇用主である弁護士から急な呼び出しを受けたヒューイットが駆けつけると、資産家の親友がごく最近病死したのだが、遺言書がみつからないという。その遺言書では屋敷と財産の多くがかわいがっていた養女に遺されることになっていたが、遺言書がみつからないと全て甥のものになってしまう・・・。心霊学にかかわる事件だとブレットが冒頭で書いていたので、幽霊が出てきて遺言書のありかを示すのかと思っていたのだけど、このシリーズでそれはなかった。
The Case of the Missing Hand ブレットのおじが暮らす田舎の猟園で休暇を過ごしていたブレットとヒューイットは、近くの森で奇妙な死体が見つかったと知らされた。首に縄をかけて木から吊るされ、片手が切り落とされているという・・・。親切そうな見かけに騙されて再婚すると、相手の男は財産目当てで、その財産が信託で自由にできないとわかると本性を表し暴力をふるう――当然、家族に殺されたんだと読者も警察も考えるが、ヒューイットだけは目のつけどころが違う。古くからの迷信を使ったトリック。
The Case of Laker, Absconded 某銀行の集金係レイカーがいつものように市内の銀行を回り、金を集めたのちに姿を消した。横領の疑いが濃く、すぐにスコットランド・ヤードが捜査を始めたが、それとは別に保険会社の依頼を受けたヒューイットもレイカーの前日の足どりをたどり・・・。これはミステリー慣れした人間なら最初から見当がつく。ところで、ヒューイットに依頼をしてきた保険会社というのは、銀行や保険会社の事務員にかける保険を扱うところで、それは事務員が病気をしたり事故に遭ったりした際に支払われるのではなく、その事務員がなんらかの問題を起こした際に、会社に生じさせた損失を補填するものらしい。それって、はなから従業員を疑ってることになるんじゃないの? そういう保険って日本にもあるのかな。
The Case of the Lost Foreigner 路上で不審なようすを見せていた男が警察署に連れてこられた。フランス人らしいというので、たまたま居合わせたヒューイットが話しかけてみたら、まともな言葉が話せない。おまけに食パンの塊を見せると狂ったように騒ぐのだという・・・。ロンドンを拠点にしたアナーキスト集団のテロの話。ずいぶん考えて準備したわりに手もなく捕まるのはリアリティが乏しい。
Chronicles of Martin Hewitt
邦題:マーチン・ヒューイットの事件簿
作者:Arthur Morrison
出版社:Project Gutenberg
ISBN:Kindle版
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by timeturner
| 2021-09-30 19:00
| 洋書
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