2007年 12月 14日
サンタクロースの秘密 |
図書館のクリスマスコーナー(なんてものがあるのだ)で目にしたとき「え? レヴィ=ストロースが余技で童話でも書いていたの?!」と驚いてしまいました。もちろんそんなわけはなくて、サルトルが編集長をしていた論壇誌「レタン・モデルヌ」にレヴィ=ストロースが寄稿した「火あぶりにされたサンタクロース」という論文と、中沢新一の「幸福の贈与」を合体させた本でした。
「火あぶりにされたサンタクロース」というのは1951年にフランスのディジョンで実際にあった話で、サンタクロース(もちろん人形でしょう)が大聖堂の鉄格子に吊るされた後、広場で火刑に処せられたというもの。
第二次世界大戦後にアメリカから伝播したクリスマスの商業主義的な祝い方、特にサンタクロースの存在がキリストの降臨祭を異教化し、宗教的な価値のない、ただの神話の方向に逸脱させてしまうものであるという非難の声はフランスのカトリック教会からもプロテスタント教会からも上がっていたのですが、それが最も激しい形で現れたのがこのディジョンでの「火あぶり」だったわけです。
ここからレヴィ=ストロースは、なぜ大人たちがサンタクロースのようなものを発明するにいたったかを民族学の立場から考察しています。
サンタクロースがキリスト教とはあまり関係がないらしい、というのは漠然とは知っていましたし、だからクリスマスカードを選ぶときに、クリスチャンの家庭に送る場合はサンタクロース柄のものは選ばない(これが日本の場合けっこうむずかしい)という程度の気配りはしてきたのですが、クリスマスの風習自体が歴史的にはかなり新しいものだというのは初めて知りました。というか、元々は各国の異教徒の間にあった同種の祭りをカトリック教会が利用し、キリストは実は夏生まれであるという説があるにもかかわらず12月24日をキリスト降誕祭に決めたんですって。
民族学者としての広範な知識を駆使して語られる内容は実に多岐に渡り、ときどきついていききれない部分もありましたが、かなりワクワクします。後半の中沢新一の部分に引き継がれる死者と生者の贈り物を介した交流とそれがもたらす幸福感という分析では、日本にも共通するものを感じました。人種・民族の違いを超えた自然と人間との相互作用なんですよね。
サンタクロースの秘密 (serica books)
原題:Le Pere Noel supplicie
作者:クロード レヴィ=ストロース、中沢 新一
訳者:中沢 新一
出版社:せりか書房
ISBN:4796701958
「火あぶりにされたサンタクロース」というのは1951年にフランスのディジョンで実際にあった話で、サンタクロース(もちろん人形でしょう)が大聖堂の鉄格子に吊るされた後、広場で火刑に処せられたというもの。
第二次世界大戦後にアメリカから伝播したクリスマスの商業主義的な祝い方、特にサンタクロースの存在がキリストの降臨祭を異教化し、宗教的な価値のない、ただの神話の方向に逸脱させてしまうものであるという非難の声はフランスのカトリック教会からもプロテスタント教会からも上がっていたのですが、それが最も激しい形で現れたのがこのディジョンでの「火あぶり」だったわけです。
ここからレヴィ=ストロースは、なぜ大人たちがサンタクロースのようなものを発明するにいたったかを民族学の立場から考察しています。
サンタクロースがキリスト教とはあまり関係がないらしい、というのは漠然とは知っていましたし、だからクリスマスカードを選ぶときに、クリスチャンの家庭に送る場合はサンタクロース柄のものは選ばない(これが日本の場合けっこうむずかしい)という程度の気配りはしてきたのですが、クリスマスの風習自体が歴史的にはかなり新しいものだというのは初めて知りました。というか、元々は各国の異教徒の間にあった同種の祭りをカトリック教会が利用し、キリストは実は夏生まれであるという説があるにもかかわらず12月24日をキリスト降誕祭に決めたんですって。
民族学者としての広範な知識を駆使して語られる内容は実に多岐に渡り、ときどきついていききれない部分もありましたが、かなりワクワクします。後半の中沢新一の部分に引き継がれる死者と生者の贈り物を介した交流とそれがもたらす幸福感という分析では、日本にも共通するものを感じました。人種・民族の違いを超えた自然と人間との相互作用なんですよね。
【本の中の注】聖ニコラウスは三世紀後半に小アジアに生まれ、リキュアのミュラの司教となった聖人。聖ニコラウスの祝日である12月6日は、彼が没したとされる日を記念したもので、ドイツ、スイス、オランダではこの日の前夜には子供たちにプレゼントが届けられるとされた。これがオランダを経てアメリカに伝わりサンタクロース伝説が生まれた。オランダ語で聖ニコラウスを意味する「シンタクラース」が訛って、英語のサンタクロースとなった。
サンタクロースの秘密 (serica books)
原題:Le Pere Noel supplicie
作者:クロード レヴィ=ストロース、中沢 新一
訳者:中沢 新一
出版社:せりか書房
ISBN:4796701958
by timeturner
| 2007-12-14 19:33
| 和書
|
Comments(2)
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atsuko
at 2007-12-15 21:32
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読んでみたくなりました。いわゆる、ニューアカ・ブームのとき大学生だったので、中沢新一なつかしー!オランダでは、12月5日ベルギーでは、12月6日に、シンタクラースの祭りがあります。オランダ人もクリスマスを祝います。子供に人気なのは、断然5日のシンタクラースです。プレゼントをもらうのもこの日です。(クリスマスにももらうかも?)
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timeturner at 2007-12-17 19:03
もう図書館に返したのでリクエストすればすぐに来ると思いますよ。