2007年 06月 18日
Follow Your Heart |
死期が近いことを悟った老女が、遠い異国にいる孫娘に宛てた手紙。どうやら孫娘とは思春期の頃からうまくいっておらず、飛び出すように出ていってしまったらしい。祖母の死後に「語られなかった言葉」の重さに孫が押しつぶされないようにと書き始められた手紙だが、次第に意外な過去を明らかにしていく。
先々週、神保町の古本屋で100円で買った本です。掘り出し物でした。イタリア語から英語に翻訳されているので、おそらく原文のニュアンスはある程度損なわれているのだと思いますが、その分易しく読みやすくなっています。
先日読んで驚かされた『The Debt To Pleasure』のように、だんだんに秘密が明かされていく過程は同じでスリリングですが、ああいう毒はありません。もっと静かで哲学的。語り手は19世紀初めにトリエステ(かつてはオーストリア領で第二次世界大戦中・後は国連管理下の中立自由地区、その後イタリア領とユーゴスラヴィア領に分かれる)の裕福な家に生まれ、当時の女性としては桁外れの知性をもっていたために婚期が遅れたほどの女性。語る内容は昔話ばかりではなく、今日的(1999年の冬)な話題がそこかしこに散りばめられていて、まわりで起こる出来事に対する鋭い洞察に驚かされます。
読んでいてはっとするフレーズが多く、そのたびに読むのをやめて考えてしまうことがしばしば。なんというのかなあ。とても哲学的なんですよね。小難しい哲学ではなくて、人生を生きるうえで誰もが直面するさまざまな疑問をシンプルに提示している。家族、愛、憎しみ、死、喪失、宗教、戦争、文明の進歩、自然との共存。ふだん哲学的な思考が苦手な私でもごく自然に考えていました。
イタリア人ってこういうのが上手なのかなあ。昔、フランチェスコ・アルベローニの『友情論』や『エロティシズム』を読んで新鮮な驚きにうたれた記憶が蘇ってきました。
テーマがテーマですし、ロベルト・ベニーニを思い出してどこかでぶわっと泣かせる気だろうと覚悟していたんですが、そういう作風ではなかった。とても静かで、心の中にすーっとしみていくような終わり方でした。
Fate has more imagination than we do.
Follow Your Heart
作者:Susanna Tamaro
出版社:Minerva Fiction
ISBN:0749395389
先々週、神保町の古本屋で100円で買った本です。掘り出し物でした。イタリア語から英語に翻訳されているので、おそらく原文のニュアンスはある程度損なわれているのだと思いますが、その分易しく読みやすくなっています。
先日読んで驚かされた『The Debt To Pleasure』のように、だんだんに秘密が明かされていく過程は同じでスリリングですが、ああいう毒はありません。もっと静かで哲学的。語り手は19世紀初めにトリエステ(かつてはオーストリア領で第二次世界大戦中・後は国連管理下の中立自由地区、その後イタリア領とユーゴスラヴィア領に分かれる)の裕福な家に生まれ、当時の女性としては桁外れの知性をもっていたために婚期が遅れたほどの女性。語る内容は昔話ばかりではなく、今日的(1999年の冬)な話題がそこかしこに散りばめられていて、まわりで起こる出来事に対する鋭い洞察に驚かされます。
読んでいてはっとするフレーズが多く、そのたびに読むのをやめて考えてしまうことがしばしば。なんというのかなあ。とても哲学的なんですよね。小難しい哲学ではなくて、人生を生きるうえで誰もが直面するさまざまな疑問をシンプルに提示している。家族、愛、憎しみ、死、喪失、宗教、戦争、文明の進歩、自然との共存。ふだん哲学的な思考が苦手な私でもごく自然に考えていました。
イタリア人ってこういうのが上手なのかなあ。昔、フランチェスコ・アルベローニの『友情論』や『エロティシズム』を読んで新鮮な驚きにうたれた記憶が蘇ってきました。
テーマがテーマですし、ロベルト・ベニーニを思い出してどこかでぶわっと泣かせる気だろうと覚悟していたんですが、そういう作風ではなかった。とても静かで、心の中にすーっとしみていくような終わり方でした。
Fate has more imagination than we do.
Follow Your Heart
作者:Susanna Tamaro
出版社:Minerva Fiction
ISBN:0749395389
by timeturner
| 2007-06-18 22:07
| 洋書
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