2007年 05月 17日
バベル |
レディースデイで見てきました。館内女性ばかり。まあ確かにカップルで見る映画じゃないわよね。見たあと話がはずまなくて気詰まりになりそう。
これほど宣伝コピーが映画の内容と違うのも珍しいんじゃない?
世界はまだ変えられる。
言葉が通じない。心も通じない。想いはどこにも届かない。私たちは争いが絶えない世界の住人である前に、同じ星に生きる命のひとつではなかったのか? その答えを秘めた一発の弾丸が世界をさ迷う魂をつなぎ合わせ、息をのむラストへと加速させていく。
LISTEN ― 聴いて欲しい。初めて世界に響く愛の声を。
(チラシから)
「言葉が通じない。心も通じない。想いはどこにも届かない」はあります。でも魂がつなぎ合わされたりはしません。息をのむラストもありません。愛の声も聴こえません。
見終わって感じるのは「結局、世の中なんてこんなものなのよね」という怒りが混じったやりきれなさ。身勝手で甘ったれた白人夫婦だけが最後に再生できそうな予感を感じさせるハリウッド式解決に怒りを、その犠牲になったメキシコ人たち(アリエルとサンチャゴ)にやりきれなさを。
銃弾は因果関係の一ファクターであって、モロッコ、メキシコ、日本で繰り広げられる物語はそれぞれに独立しています。最後に大団円があるものと思って見に行った人はがっかりするんじゃないだろうか。現に上映後に「なんだかわからない映画だねえ」「ばらばらの人たちが最後にはひとつにつながるって書いてあったのに全然つながらなかったよね」という会話が聞こえました。
この映画はむしろ「さまざまな状況で、人はどう行動するのか? すべきなのか? 間違いを犯してしまったとき、どうすればいいのか?」といったもろもろを自分自身に問いかけるべく作られたのかもしれない。でも、そうさせるにはあまりにも不十分な問題提起。
まず第一に主軸になっているブラピとケイトのカップルが説得力なくてねえ・・・現実味がない。夫婦の間の歴史や感情の行き来がまったく感じられない。
ひどいのは日本で、いくらなんでも設定詰め込みすぎでしょう。それと、これは私が日本人だから感じるのか「あり得な~い」というのが多すぎる。先日の「ヤクザVSマフィア」と違ってれっきとした日本人俳優が演じているのだから、セリフや動きに変なところはないはずなんですが、脚本がそもそも日本人になっていないんでしょうね。
メキシコ編はさすがに(監督がメキシコ人)説得力がありました。他のエピソードと臨場感や緊迫感が違う。アメリカとメキシコの関係って実際にああいうふうなんだろうなあ、というのがひしひしと伝わってきました。サンチャゴの行動もアメリアの反応もすごく自然。アメリアの末路は切なくてやりきれなかったけど、弟がいて少しは救われたかな。
モロッコ編もいい。どんくさい長男より早熟で気の強い次男を可愛がっていた父親が、撃たれた長男のもとへ自分が撃たれる危険も忘れて駆け寄るところ、その後の弟の行動、あのあたりは人種や国の違いなく共感できますよね。
物語の進行が時系列通りではなく、場面(場所)が変わるごとにずれているんですが、あれは時差を意識してなのかしら。ふだん旅行するときは時間の流れがまったく感じられない飛行機の中で過ごすから時差は身体の原始的なレベルでしか感じないけれど、もし瞬間移動で世界中を移動できるとしたらこんなふうに感じるんじゃないか、という「揺れ」を映画を見ていて感じました。なかなか新鮮な感覚だった。
ディスコの場面でストロボがあまりにチカチカするので気分が悪くなる人が出たそうで、公式サイトのイントロにもそれについての注意書きが出ていますが、あれはひょっとしたらこの「時差」によって精神的に揺さぶられたこともあいまってなんじゃないか、という気もしました。
長かったわりには退屈はしなかったし、それなりに面白かったけど、とりわけ騒ぐほどのもんでもなかったな、という印象。「ミリオンダラー・ベイビー」「クラッシュ」ときて次がこれ。娯楽一辺倒のハリウッド映画でないものを作ればアカデミー賞、という最近の傾向はどうも好きになれない。娯楽一辺倒でいいじゃない。それが得意なんだから。無理して中途半端なものを作る必要ないと思う。
公式サイトはこちら。
ところで予告を見た「ボルベール<帰郷>」は面白そうだったなあ。アホっぽいけど「主人公は僕だった」も見たい。エマ・トンプソンがいい感じ。
原題:Babel(2006)
上映時間:143 分
製作国:アメリカ
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子、二階堂智、アドリアナ・バラーザ、エル・ファニング、ネイサン・ギャンブル、ブブケ・アイト・エル・カイド、サイード・タルカーニ、ムスタファ・ラシディ、アブデルカデール・バラ、マイケル・ペーニャ、小木茂光、クリフトン・コリンズ・Jr、村田裕子、末松暢茂ほか。
これほど宣伝コピーが映画の内容と違うのも珍しいんじゃない?
世界はまだ変えられる。
言葉が通じない。心も通じない。想いはどこにも届かない。私たちは争いが絶えない世界の住人である前に、同じ星に生きる命のひとつではなかったのか? その答えを秘めた一発の弾丸が世界をさ迷う魂をつなぎ合わせ、息をのむラストへと加速させていく。
LISTEN ― 聴いて欲しい。初めて世界に響く愛の声を。
(チラシから)
「言葉が通じない。心も通じない。想いはどこにも届かない」はあります。でも魂がつなぎ合わされたりはしません。息をのむラストもありません。愛の声も聴こえません。
見終わって感じるのは「結局、世の中なんてこんなものなのよね」という怒りが混じったやりきれなさ。身勝手で甘ったれた白人夫婦だけが最後に再生できそうな予感を感じさせるハリウッド式解決に怒りを、その犠牲になったメキシコ人たち(アリエルとサンチャゴ)にやりきれなさを。
銃弾は因果関係の一ファクターであって、モロッコ、メキシコ、日本で繰り広げられる物語はそれぞれに独立しています。最後に大団円があるものと思って見に行った人はがっかりするんじゃないだろうか。現に上映後に「なんだかわからない映画だねえ」「ばらばらの人たちが最後にはひとつにつながるって書いてあったのに全然つながらなかったよね」という会話が聞こえました。
この映画はむしろ「さまざまな状況で、人はどう行動するのか? すべきなのか? 間違いを犯してしまったとき、どうすればいいのか?」といったもろもろを自分自身に問いかけるべく作られたのかもしれない。でも、そうさせるにはあまりにも不十分な問題提起。
まず第一に主軸になっているブラピとケイトのカップルが説得力なくてねえ・・・現実味がない。夫婦の間の歴史や感情の行き来がまったく感じられない。
ひどいのは日本で、いくらなんでも設定詰め込みすぎでしょう。それと、これは私が日本人だから感じるのか「あり得な~い」というのが多すぎる。先日の「ヤクザVSマフィア」と違ってれっきとした日本人俳優が演じているのだから、セリフや動きに変なところはないはずなんですが、脚本がそもそも日本人になっていないんでしょうね。
メキシコ編はさすがに(監督がメキシコ人)説得力がありました。他のエピソードと臨場感や緊迫感が違う。アメリカとメキシコの関係って実際にああいうふうなんだろうなあ、というのがひしひしと伝わってきました。サンチャゴの行動もアメリアの反応もすごく自然。アメリアの末路は切なくてやりきれなかったけど、弟がいて少しは救われたかな。
モロッコ編もいい。どんくさい長男より早熟で気の強い次男を可愛がっていた父親が、撃たれた長男のもとへ自分が撃たれる危険も忘れて駆け寄るところ、その後の弟の行動、あのあたりは人種や国の違いなく共感できますよね。
物語の進行が時系列通りではなく、場面(場所)が変わるごとにずれているんですが、あれは時差を意識してなのかしら。ふだん旅行するときは時間の流れがまったく感じられない飛行機の中で過ごすから時差は身体の原始的なレベルでしか感じないけれど、もし瞬間移動で世界中を移動できるとしたらこんなふうに感じるんじゃないか、という「揺れ」を映画を見ていて感じました。なかなか新鮮な感覚だった。
ディスコの場面でストロボがあまりにチカチカするので気分が悪くなる人が出たそうで、公式サイトのイントロにもそれについての注意書きが出ていますが、あれはひょっとしたらこの「時差」によって精神的に揺さぶられたこともあいまってなんじゃないか、という気もしました。
長かったわりには退屈はしなかったし、それなりに面白かったけど、とりわけ騒ぐほどのもんでもなかったな、という印象。「ミリオンダラー・ベイビー」「クラッシュ」ときて次がこれ。娯楽一辺倒のハリウッド映画でないものを作ればアカデミー賞、という最近の傾向はどうも好きになれない。娯楽一辺倒でいいじゃない。それが得意なんだから。無理して中途半端なものを作る必要ないと思う。
公式サイトはこちら。
ところで予告を見た「ボルベール<帰郷>」は面白そうだったなあ。アホっぽいけど「主人公は僕だった」も見たい。エマ・トンプソンがいい感じ。
原題:Babel(2006)
上映時間:143 分
製作国:アメリカ
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子、二階堂智、アドリアナ・バラーザ、エル・ファニング、ネイサン・ギャンブル、ブブケ・アイト・エル・カイド、サイード・タルカーニ、ムスタファ・ラシディ、アブデルカデール・バラ、マイケル・ペーニャ、小木茂光、クリフトン・コリンズ・Jr、村田裕子、末松暢茂ほか。
by timeturner
| 2007-05-17 21:12
| 映画
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