2007年 04月 22日
大統領の最後の恋 |
『ペンギンの憂鬱』の作者の新作です。と言っても刊行されたのは2004年、翻訳が出たのは2006年ですから、それほど新しくはない。でも、それも仕方がないです。だってこれ、すごい大作。
今回も舞台はキエフですが、主人公はなんとウクライナの大統領、セルゲイ・プーニン。心臓の移植手術を受けて回復したばかりのところから始まります。が、この手術、なにやら通常のものと違う。心臓の持ち主の未亡人がどういうわけか大統領官邸に住むようになります。
大国ロシアの動向に右往左往し、国内の貪欲な企業家たちの暴走にあたふたし、誰が信じられるのかわからない官僚や軍人に取り巻かれながら、なんとか自分らしく生きようとする大統領は滑稽だけど好感がもてます。
600ページ強もある本ですが、構成が変わっていて、セルゲイの青年時代(旧ソ連邦時代)、中年時代(ウクライナ独立後の2002~2005年)、それに大統領になってからの初老時代(2011~2016年)の話が交互に出てきます。すべて一人称で語られるので、最初のうちは何がなんだかわからないのですが、そのうち彼の話し方や彼を取り巻く人たちで見分けられるようになり、やがてそれぞれの時代の話がお互いに関連をもつようになって、驚きの結末へと向かっていきます。
青年時代から始まるからと言っても、いわゆる出世物語を想像したら大間違い。酒を飲むことと女の子を引っ掛けることしか興味のない落ちこぼれの青年時代、副大臣になったものの相変わらず女に弱く、妻の妊娠に振り回される中年時代、そして奇妙な陰謀に巻き込まれる初老時代と、どこまでも読む側の隙をつくような意外な展開で読ませてくれます。しかし、ウクライナの国情って本当にこんななのかなあ(^^;)。
『ペンギンの憂鬱』と同様、移り変わる季節の中のキエフの街の描写が相変わらず素晴らしい。
大統領の最後の恋 (新潮クレスト・ブックス)
原題:キリル文字なので表記できません
作者:アンドレイ・クルコフ
訳者:前田和泉
出版社:新潮社
ISBN:4105900552
今回も舞台はキエフですが、主人公はなんとウクライナの大統領、セルゲイ・プーニン。心臓の移植手術を受けて回復したばかりのところから始まります。が、この手術、なにやら通常のものと違う。心臓の持ち主の未亡人がどういうわけか大統領官邸に住むようになります。
大国ロシアの動向に右往左往し、国内の貪欲な企業家たちの暴走にあたふたし、誰が信じられるのかわからない官僚や軍人に取り巻かれながら、なんとか自分らしく生きようとする大統領は滑稽だけど好感がもてます。
600ページ強もある本ですが、構成が変わっていて、セルゲイの青年時代(旧ソ連邦時代)、中年時代(ウクライナ独立後の2002~2005年)、それに大統領になってからの初老時代(2011~2016年)の話が交互に出てきます。すべて一人称で語られるので、最初のうちは何がなんだかわからないのですが、そのうち彼の話し方や彼を取り巻く人たちで見分けられるようになり、やがてそれぞれの時代の話がお互いに関連をもつようになって、驚きの結末へと向かっていきます。
青年時代から始まるからと言っても、いわゆる出世物語を想像したら大間違い。酒を飲むことと女の子を引っ掛けることしか興味のない落ちこぼれの青年時代、副大臣になったものの相変わらず女に弱く、妻の妊娠に振り回される中年時代、そして奇妙な陰謀に巻き込まれる初老時代と、どこまでも読む側の隙をつくような意外な展開で読ませてくれます。しかし、ウクライナの国情って本当にこんななのかなあ(^^;)。
『ペンギンの憂鬱』と同様、移り変わる季節の中のキエフの街の描写が相変わらず素晴らしい。
大統領の最後の恋 (新潮クレスト・ブックス)
原題:キリル文字なので表記できません
作者:アンドレイ・クルコフ
訳者:前田和泉
出版社:新潮社
ISBN:4105900552
by timeturner
| 2007-04-22 20:27
| 和書
|
Comments(2)
Commented
by
さやか
at 2007-04-24 17:44
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わー、あの分厚いやつを読まれたんですね。うらやましいっ! あいかわらず読み手の意表をつくようなお話みたいで、わたしも読むのが楽しみです。
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Commented
by
shoh
at 2007-04-24 20:27
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あの厚さで1冊にまとめてしまうというのは凄い決断ですよね、新潮社。ハードカヴァーではなかったのでそれほど重くはなかったのですが、ページが外れそうなところがあって、取扱い注意でした(自分の本じゃないからよけいに)。
でも、あれを上下2巻にしていたら、1巻で挫折して2巻を買わない客が多かっただろうから、正解だったと思います。読むほどに引き込まれていくタイプの本なので。
修羅場ってて大変そうですが、早く読めるようになるといいですね。
でも、あれを上下2巻にしていたら、1巻で挫折して2巻を買わない客が多かっただろうから、正解だったと思います。読むほどに引き込まれていくタイプの本なので。
修羅場ってて大変そうですが、早く読めるようになるといいですね。