2018年 05月 05日
魔法の泉への道 |
1985年、スーダン南部。内戦で大人の男は兵士にとられ、村は敵の襲撃で破壊され、老人、女性、子供は当てもない逃亡生活をするしかない。11歳のサルヴァもひとりぼっちで見知らぬ人々に混じって旅をしていった。2008年、スーダン南部。11歳のナーヤは一日に二度、往復半日かかる池までバケツで水を汲みにいく。午前中に1回、午後に1回。それが女の子の仕事なのだ。男の兄弟は歩いて半日かかる学校に行っていたが、女の子には水汲みの仕事があるから行けない。だがある日、見知らぬ人たちが車でやってきて、なにやら調べ始めた・・・。
サルヴァの時代とナーヤの時代が交互に出てきて、初めのうちはなんの関係もなく話は進むのですが、途中からひょっとしてこういうことかなと思った方向に話が進みます。予想の範囲ではあるのですが、それでも最後にふたりが言葉をかわすところは感動。
それにしても、ただその土地に生れたというだけで、子供が背負わなくてはならない不幸の大きさにやりきれない気持ちになります。サルヴァは裕福な家の子供だったので、逃亡が始まるまでは衣食住の苦労はなく、子供らしい遊びをする様子も描かれているので、その後の激烈な変化がよけいに不憫です。百数十ページのこの本では、あっという間に読めてしまう内容ですが、実際には何か月も何年も続いたわけですから、それでもあきらめなかったサルヴァの強い意志には敬服するしかありません。
宗教的な対立(スーダンでは北部のイスラム政権と南部の反イスラム派による内戦が50年以上続いた)は2011年に南部が南スーダンとして独立したことで緩和されたようですが、この本の中でも何度か触れられている、部族間の軋轢が完全になくなるのはまだまだ先のように思えます。
ナーヤたちの世代がみな学校に行って学べるようになり、広い視野で物事を考えられるようになりますように。
魔法の泉への道
原題:A Long Walk to Water
作者:リンダ・スー・パーク
訳者:金利光
出版社:あすなろ書房
ISBN:4751522213
サルヴァの時代とナーヤの時代が交互に出てきて、初めのうちはなんの関係もなく話は進むのですが、途中からひょっとしてこういうことかなと思った方向に話が進みます。予想の範囲ではあるのですが、それでも最後にふたりが言葉をかわすところは感動。
それにしても、ただその土地に生れたというだけで、子供が背負わなくてはならない不幸の大きさにやりきれない気持ちになります。サルヴァは裕福な家の子供だったので、逃亡が始まるまでは衣食住の苦労はなく、子供らしい遊びをする様子も描かれているので、その後の激烈な変化がよけいに不憫です。百数十ページのこの本では、あっという間に読めてしまう内容ですが、実際には何か月も何年も続いたわけですから、それでもあきらめなかったサルヴァの強い意志には敬服するしかありません。
宗教的な対立(スーダンでは北部のイスラム政権と南部の反イスラム派による内戦が50年以上続いた)は2011年に南部が南スーダンとして独立したことで緩和されたようですが、この本の中でも何度か触れられている、部族間の軋轢が完全になくなるのはまだまだ先のように思えます。
ナーヤたちの世代がみな学校に行って学べるようになり、広い視野で物事を考えられるようになりますように。
魔法の泉への道
原題:A Long Walk to Water
作者:リンダ・スー・パーク
訳者:金利光
出版社:あすなろ書房
ISBN:4751522213
by timeturner
| 2018-05-05 19:00
| 和書
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