2018年 02月 07日
英子の森 |
「英語ができると後でいいことがある」幼い頃から母親に、テレビに、先生に、広告に刷りこまれて育った英子は、大学では英語を勉強し、オーストラリアに留学もして、今では「英語を使える仕事」をしている。だが、それは夢見ていたものとは大きく違っていた・・・。表題作ほか5編収録の短編集。
アマチュア作家か下手な翻訳家かというような、妙にふわふわした現実離れした描写が続く書き出しに、最初は「え?」と驚かされるのですが、その不自然さが実は狙ったものだとわかってくるともう面白くてやめられなくなります。苦い現実をファンタジーの砂糖衣でくるんだような不思議な味わいでした。
7年前に『英語は女を救うのか』を読みましたが、あの時代はいま思えばまだ世の中にゆとりがあったんだなあと思います。だからこそ「消費財」として英語を学ぶ人たちがいた。今はみんなが「生産財」として学ぶようになり、そのため過剰配給になって、ランクが下の人たちはクリップやクリアファイルといった備品並みの扱いしかされなくなってしまった。
つらいですよねえ。小学校で英語教育をするようになり、親たちも目の色をかえて子供に英語を習わせている現状を見ると、これからもっとこういう話が増えていくのかなあと暗澹たる気分になります。英子が、どこまでやれれば「英語ができる」と言えるのかわからなくなってしまう気持ちは、語学の勉強をしている人ならほぼ全員が感じたことのある問いじゃないかなあ。そして、おそらく、はっきりした答えは出せない問いでもあると思う。
英子の森
*写真はイメージです
おにいさんがこわい
スカートの上のABC
博士と助手
わたしはお医者さま?
自分の人生をどう生きたいのかを決めるのは自分。当たり前のことなんだけど、実際にはとても難しくて、ほとんどの人が幻想に導かれて生きている。そんなことを、表題作だけでなく、この本に収録されたどの話を読んでも感じさせられます。
どれもかなり実験的な書きっぷりで「わかりやすさ」とはほど遠いけど、それだけに未知の領域を手探りで歩いていくワクワクした気持ちと、目的地(かどうかは怪しいけど)に辿り着いたときの満足感が大きい。
英子の森 (河出文庫)
作者:松田青子
出版社:河出書房新社
ISBN:4309415814
アマチュア作家か下手な翻訳家かというような、妙にふわふわした現実離れした描写が続く書き出しに、最初は「え?」と驚かされるのですが、その不自然さが実は狙ったものだとわかってくるともう面白くてやめられなくなります。苦い現実をファンタジーの砂糖衣でくるんだような不思議な味わいでした。
7年前に『英語は女を救うのか』を読みましたが、あの時代はいま思えばまだ世の中にゆとりがあったんだなあと思います。だからこそ「消費財」として英語を学ぶ人たちがいた。今はみんなが「生産財」として学ぶようになり、そのため過剰配給になって、ランクが下の人たちはクリップやクリアファイルといった備品並みの扱いしかされなくなってしまった。
つらいですよねえ。小学校で英語教育をするようになり、親たちも目の色をかえて子供に英語を習わせている現状を見ると、これからもっとこういう話が増えていくのかなあと暗澹たる気分になります。英子が、どこまでやれれば「英語ができる」と言えるのかわからなくなってしまう気持ちは、語学の勉強をしている人ならほぼ全員が感じたことのある問いじゃないかなあ。そして、おそらく、はっきりした答えは出せない問いでもあると思う。
英子の森
*写真はイメージです
おにいさんがこわい
スカートの上のABC
博士と助手
わたしはお医者さま?
自分の人生をどう生きたいのかを決めるのは自分。当たり前のことなんだけど、実際にはとても難しくて、ほとんどの人が幻想に導かれて生きている。そんなことを、表題作だけでなく、この本に収録されたどの話を読んでも感じさせられます。
どれもかなり実験的な書きっぷりで「わかりやすさ」とはほど遠いけど、それだけに未知の領域を手探りで歩いていくワクワクした気持ちと、目的地(かどうかは怪しいけど)に辿り着いたときの満足感が大きい。
英子の森 (河出文庫)
作者:松田青子
出版社:河出書房新社
ISBN:4309415814
by timeturner
| 2018-02-07 19:00
| 和書
|
Comments(0)