教会で死んだ男 |
ポアロ物もやっぱり読んでおくべきだろうなあと思っていたところへ、早川書房がクリスティーのKindle版を半額にしていたので、試しにひとつ買ってみました。なるべくページ数の多いのを選ぶあたりがせこいですね。
でもこれ、ほんとに458ページあるの?と思うくらいあっという間に読み終えてしまった。ふだん寝る前にベッドの中で読むのは洋書だから、読むスピードがまるで違うということも関係しているんでしょうが、やはり読みやすいのと、あっさりしているのも関係しているのかも。
ちょっとあっさりしすぎじゃない?とも思う。ポアロ物の長編は『オリエント急行の殺人』と『スタイルズ荘の怪事件』しか読んでいないと思うんだけど、キャラがもっと立ってたような気がします。
翻訳の違いかな。なんかこの本ではヘイスティングズがワトソンみたいで違和感がある。もっとお馬鹿なタイプじゃなかったっけ? 短編だと生きないキャラなのかな。
ひょっとしたら語りのせいかも。ポアロ物11編のうち「スズメ蜂の巣」だけはヘイスティングズの語りではなく、第三者視点で語られているんですが、これはきりっと締まって面白かったから。今の私には登場人物のひとりによる語りという形式が合わないのかもしれません。
戦勝記念舞踏会事件
潜水艦の設計図
クラブのキング
マーケット・ベイジングの怪事件
二重の手がかり
呪われた相続人
コーンウォールの毒殺事件
プリマス行き急行列車
料理人の失踪
二重の罪
スズメ蜂の巣
洋裁店の人形
教会で死んだ男
それでも、事件のバラエティは豊かだし、解決方法も鮮やかで人情もありというふうに、さすがクリスティーと思うクオリティではあるんですけどね。
「二重の手がかり」のロサコフ伯爵夫人はアイリーン・アドラーみたい。ポアロは「また会うことになりそうだ」と言ってるけど、実際に他の作品でまた登場するのかな?
「呪われた相続人」はヴィクトリア朝風怪奇小説を思わせる内容で、もっとじっくり長めに(中編くらいに)書いてくれたらかなり好みかもしれないと思いました。
「プリマス行き急行列車」はどこかで読んだ気がしたんですが、これを長編に書き直して『青列車の秘密』を書いたんでしたね。あっちではポアロもそれほど悪くないと書いているので、私にとってポアロ物は短編より長編なのかも。
人形を使ったホラーとも言うべき「洋裁店の人形」は謎が解決されないまま終わるために怖さが100倍増し。最後に出てくる女の子も妙に怖い。
「教会で死んだ男」はミス・マープル物ですが、これ、どこかで読んだ記憶があるなあ。アンソロジーにでも入っていたのだろうか。バンチとその夫である牧師のカップルがとてもいい感じです。
教会で死んだ男 (クリスティー文庫)
原題:Sanctuary and Other Stories
作者:アガサ・クリスティー
訳者:宇野輝雄
出版社:早川書房
ISBN:Kindle版