2017年 08月 10日
図書館は逃走中 |
家にも学校にも居場所がない12歳の少年ボビーは、ある日ヴァルとローザ母娘と出会った。ヴァルが働く図書館トラックでたくさんの本を読むうちに、ボビーの前に世界がどんどん広がっていく。だが、ヴァルの周囲には醜悪な噂がたつようになり、ボビーのいじめっ子への仕返しが警察沙汰になったとき、ヴァルはローザとボビーを連れて町を出る決心をする。図書館トラックに乗って・・・。2015年ジャーウッド・フィクション・アンカヴァード賞受賞。
期待したほどではなかったかな。
初めのほうの「サイボーグ計画」のあたりは、イノセンスが生み出す恐怖が巧く出ていてわくわくしたけど、話が進むにつれてリアリティが薄まり、「お話」っぽくなってしまった。
本を読むことで世界が広がり、自分がいる惨めな環境は完全に閉ざされた場所ではないと気づける、とか、血のつながりは理想の家族の条件ではない、といったことを作者は書きたかったんだと思うけど、その手のテーマはもうすでに使いつくされた感があって、なにかしら新鮮な切り口がないと楽しめない。
タイトルが期待させる図書館や本との関わりが、「とってつけた」感じだったのが特に不満。ローザをひとりの人間としてではなく、場を動かすための都合のいいキャラとして使っているのも気になった。
とはいえ、世の中のことをまだよく知らず、本もそれほどは読んでいない青少年向けのYAだとするなら、それなりによく書けているのではないかと思う。すれきった老人にはもうそういうのは判断できないのかも。
図書館は逃走中
原題:Mobile Library
作者:デイヴィッド・ホワイトハウス
訳者:堀川志野舞
出版社:早川書房
ISBN:4152096896
期待したほどではなかったかな。
初めのほうの「サイボーグ計画」のあたりは、イノセンスが生み出す恐怖が巧く出ていてわくわくしたけど、話が進むにつれてリアリティが薄まり、「お話」っぽくなってしまった。
本を読むことで世界が広がり、自分がいる惨めな環境は完全に閉ざされた場所ではないと気づける、とか、血のつながりは理想の家族の条件ではない、といったことを作者は書きたかったんだと思うけど、その手のテーマはもうすでに使いつくされた感があって、なにかしら新鮮な切り口がないと楽しめない。
タイトルが期待させる図書館や本との関わりが、「とってつけた」感じだったのが特に不満。ローザをひとりの人間としてではなく、場を動かすための都合のいいキャラとして使っているのも気になった。
とはいえ、世の中のことをまだよく知らず、本もそれほどは読んでいない青少年向けのYAだとするなら、それなりによく書けているのではないかと思う。すれきった老人にはもうそういうのは判断できないのかも。
図書館は逃走中
原題:Mobile Library
作者:デイヴィッド・ホワイトハウス
訳者:堀川志野舞
出版社:早川書房
ISBN:4152096896
by timeturner
| 2017-08-10 21:55
| 和書
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