2017年 07月 26日
ふたりの老女 |
ある寒さの激しい冬、激しい飢えにみまわれた部族の人々は、ふたりの老女を置き去りにした。棄てられたことでプライドを蘇らせたふたりは、とことんこの状況と闘い始める…。生の奇跡と古老の知恵を語り継ぐアラスカ・インディアンの伝説。アメリカ西部州図書賞クリエイティブ・ノンフィクション賞、アメリカ北西部書店図書賞受賞。
伝承という形ではあるものの実話です。文字のないアラスカ・インディアンの末裔が母親から聞いた話を文字にしたもので、これが本になるまでの経緯(あとがきに書かれている)も、先住民の間でいまだに根深い女性蔑視の問題がからんでいたりして、なかなか興味深い。
しかし、凄いなあ。同じ状況に置かれたら、私なら1日で死んじゃいそう。いくら気力を振り絞っても、そもそもこんな状況で生き残るための知恵も技術もないからね。
インターネットを使ってもいいと言われたとしても、モニターから得た知識ではおそらくこうしたサバイバル生活は実現できない。実際に自分の手と体を動かして覚えたんでなければ、いざというとき役に立たない。
それにしても、同じ人間でありながら、たまたまその土地に生まれたというだけで、人間の生き方がこれほど違ってくるのはどういうことなのだろう? どうしてそんな苛酷な土地で無理に無理を重ねて生きなければならないのだろう?
となると道はふたつ。その土地を出ていくか、開発して住みよい環境に変えるか。
でも、どちらの道も生まれ育った土地への裏切りであることに変わりはないし、前者は長い年月を経て、後者は短期間の間に、土地の人々が営々と築いてきた文化を消滅させることになる。人間がいつでも幸せに暮らせないような文化はなくなってもいいのだろうか。それに、文明社会でいつでも幸せに暮している人間が一体どれくらいいるというのだろう。
なんてことをつらつらと考えさせた本でした。
文庫 ふたりの老女 (草思社文庫)
原題:Two old women
作者:ヴェルマ・ウォーリス
訳者:亀井よし子
出版社:草思社
ISBN:4794220944
伝承という形ではあるものの実話です。文字のないアラスカ・インディアンの末裔が母親から聞いた話を文字にしたもので、これが本になるまでの経緯(あとがきに書かれている)も、先住民の間でいまだに根深い女性蔑視の問題がからんでいたりして、なかなか興味深い。
しかし、凄いなあ。同じ状況に置かれたら、私なら1日で死んじゃいそう。いくら気力を振り絞っても、そもそもこんな状況で生き残るための知恵も技術もないからね。
インターネットを使ってもいいと言われたとしても、モニターから得た知識ではおそらくこうしたサバイバル生活は実現できない。実際に自分の手と体を動かして覚えたんでなければ、いざというとき役に立たない。
それにしても、同じ人間でありながら、たまたまその土地に生まれたというだけで、人間の生き方がこれほど違ってくるのはどういうことなのだろう? どうしてそんな苛酷な土地で無理に無理を重ねて生きなければならないのだろう?
となると道はふたつ。その土地を出ていくか、開発して住みよい環境に変えるか。
でも、どちらの道も生まれ育った土地への裏切りであることに変わりはないし、前者は長い年月を経て、後者は短期間の間に、土地の人々が営々と築いてきた文化を消滅させることになる。人間がいつでも幸せに暮らせないような文化はなくなってもいいのだろうか。それに、文明社会でいつでも幸せに暮している人間が一体どれくらいいるというのだろう。
なんてことをつらつらと考えさせた本でした。
文庫 ふたりの老女 (草思社文庫)
原題:Two old women
作者:ヴェルマ・ウォーリス
訳者:亀井よし子
出版社:草思社
ISBN:4794220944
by timeturner
| 2017-07-26 19:00
| 和書
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