2017年 06月 30日
6月30日 アルゲーロ⇒ヌオロ |
朝までには、ソックスの一部をのぞき、衣類はほぼ乾いていた。ほっ。ソックスはドライヤーを使って強引に乾かす。また雨が降ったときに備えてスーツケースをビニール袋でくるみ、ベルトでとめた。
ホテルの支払は先に済ませていたので、チェックアウトの儀式はなく、鍵を出入口の鍵入れに入れて出ていけばいいだけ。空港行きのバスの時間まで余裕があったので、港でしばらく海風に吹かれる。きょうは海も穏やかでネプチューンの洞窟へ行く船は運航するようだ。悔しい。
三人ともぼーっとしてカモメや鳩の動きを見ていたら、そのうちの2羽が仲良しさんで、ずっとくっついている。へえ、鳩でもそういう愛情関係があるのかなと思っていたら、いきなり二段重ねになり、物凄い勢いで体を震わせていたかと思うと、上にいた鳩が離れた。「交尾してたんだ!」「つがってたんだ!」「(無言)」同時に声が出て(出ない人もいたけど)大笑いした。誰も気まり悪がったりしないところは年の功。(写真はイメージです)
これをきっかけに立ち上がり、白い花が満開のきれいな木がある公園前のバス乗り場に。きのうの船着き場もそうだったけど、こういう観光客がたくさん集まるところには物売りのアフリカ人がたくさんいる。おそらく難民でしょうね。太陽燦々の観光地に来るのにサングラスや帽子を忘れるうっかりさんたちは、こういう人たちがみんな生活していけるほど多いのだろうか。
やがて空港行きのバスに乗り込んだ。バスはちゃんと時間通りに来た。空港行きだというのに荷物をお腹に積んでくれないから、必死に持ち上げて車内に持ち込む必要はあったものの、ひとり1ユーロで済んだ。ありがとう、インフォメーションのおじさん!
アルゲーロの空港はできたばかりらしく、とてもきれいでピカピカ。でも、利用者は少なく、がらんとしている。カフェのレジにだけ人が集中している。まだ観光シーズンには入ってないのかな。
空いてるスペースを埋めるためか、車が展示してあるのも謎。
スーヴェニール・ショップを物色し、それぞれに買物をしてから、ヌオロ行きのバスの中で食べるためのパンやらお菓子やらを購入、早めに空港の外にあるRedentoursのバス乗り場へ行った。(撮影:友人F)
普通より小さいサイズのバスはすでに停まっているのだが、例によって発車時間を過ぎても運転手が来ない。私たちは一番乗りだったんだけど、そのうちにひとり、ふたりと乗客が増えてきて、「このバスに乗りきれるのだろうか」と不安になるほどふくれあがってきた(ように見えた)。いざとなったら肉弾戦かと覚悟しているところに運転手がやってきて、ようやく乗車開始。
これがまたえらく時間のかかる手続きだった。まず乗車口に椅子を置いて運転手が座り、勝手に乗れないような態勢を作る。それから乗客ひとりひとりから行く先を訊き、料金を受け取っては手書きで領収書兼チケットを作成する。それを受け取ると、運転手が席を立って中に入れてくれる。これを乗客の数だけ繰り返すのだから、どれだけ手間がかかるか想像もつくというもの。
それでもようやくすべてが終わり、バスは発車した。遅れを取り戻すためかかなりスピードを出している。車窓からの風景は単調で、野原と木々と羊と遠くの山々と風力発電機と時々ヌラーゲ。もっともヌラーゲを実際に近くで見たことがないので、本当にそうなのかどうかはわからない。石を積んで作った羊小屋の可能性もある。
石灰岩を削りとったのか、山肌が白っぽくなっている光景を見て『世界のまんなかの島 わたしのオラーニ』を思いだし、ひそかに興奮しているのは私ひとり。
約2時間半でヌオロに到着。バスターミナルの中に着くのかと思っていたら、道路脇でおろされたので少しおろおろしたけど、すぐに今夜の宿の主人マックスが運転する車がみつけてくれた。こういうときアジア人であるというのは目立っていいと思う。
車は山を登っていき、ほんの5分ほどで宿に到着。(宿の詳細は「イタリアの宿」を参照)
サルデーニャ島に関する情報は少なく、ガイドブックでも全く無視されているか、あってもほんの数ページだけということが多い。特に観光客があまり行かない山間地のヌオロやオラーニに関する情報はほとんどなく、Googleマップで目的地まで***メートルとか*.*キロメートルとか出てくるのを信じるしかない。アマゾンの未開の地に乗りこむような不安を抱いていた。どこへ行くにもめちゃくちゃ歩かなくちゃならないと覚悟していったら……山腹に作られているから坂の上り下りは多いものの、コンパクトで歩きやすい町だった。
考えてみると面積192.27平方キロなんて世田谷区と杉並区を合わせたくらいだし、中心地だけを考えたら、多分、谷根千くらいの範囲だと思う。
3人ともぜひ観たいと思っていたサルデーニャ生活・民俗伝統博物館 Museo Etnografico Sardoは宿から歩いて5、6分。拍子抜けした。そのほかのスポットも簡単に歩いていける。遠いのは鉄道駅とバスターミナルだけで、それだって車社会の現代人だからそう考えるだけで、実際に歩けばどうってことのない距離なのかもしれない。
出かける前に宿の食堂の冷蔵庫にあるビールを買って、結局バスの中では食べなかったパンとお菓子をつまみに遅い昼食にした。私たちがごそごそしていたら、内気そうな夫人が現れて、わざわざテーブルクロスをかけてくれた。
食堂テラスからの眺め。
マックスに町の地図をもらい、お勧めのレストランや観光スポット、土産物屋の場所を書きこんでもらって、いよいよ出発。
まずは上記のサルデーニャ生活・民俗伝統博物館。ここは面白いよ~。とってもお勧め。展示室はきれいだし、展示もよく考えられている。エントランスの紫陽花が花盛りでとてもきれいだった。
個人的に面白かったのはパンやお菓子の部屋。サルデーニャではお祭りのときなど、生地をさまざまに成形して、とてもデコラティブなパンやお菓子を焼くのだけれど、そうやって成形されたものがぎっしりと展示されている。どうしてこんな形にしようと思ったんだ?!と疑問に思うようなものも多くて、ひとつずつ見ていくと時間が足りなくなる。
こんなふうに使ったらしい。
たぶん、赤ちゃんの無事な成長を祈って作ったものだと思うけど、左端のは宇宙人の赤ん坊としか思えない。
サルデーニャ特有の薄くパリパリしたパン、パーネ・カラザウを作る過程を一から見せるビデオも流れていて、これもまた面白い。作り方はこれまでにも読んだことがあったけれど、文字か静止画像だけで、こうやって作る過程をリアルタイムで見たのは初めて。こんなに手間と技術がいるものだとは思わなかった!
織物や刺繍、金細工など手工芸品の展示も目を奪われる。女たちがひと針ひと針刺した刺繍、一段一段織った布には「物」以上の何かが感じられる。最下段左端はビーズと刺繍のコラボだ。
レース編みではなく、方眼のネットに刺繍してある。
これなんかは、アルゲーロのアクセサリー店Coricreaのデザイナーがインスパイアされたっぽい。
昔の人たちの暮らしぶりや民族衣装も圧巻。行く前と旅行中と帰国後と読んでいたD・H・ロレンスの『海とサルデーニャ』に、彼と妻のフリーダがヌオロに向かう旅の途中で出遭った民族衣装の人々を当時の男性としては珍しいほど詳細に描写するところがある。ここにはその描写通りの実物があった。プリーツ、裾のストライプ、緑、赤、ボタンのような金細工のアクセサリーなどなど。これらを生身の人間が見につけているのを見られたロレンスが羨ましい。今でも祭りの日には現代人たちもこんなふうに着飾るのかな。
このジャケット、欲しい!
このスカートも。
振り分け荷物にするためのバッグ。便利そう。肩幅が広い人じゃないと使えないかもだけど。
この椅子もいいなあ。
エントランス入ってすぐの部屋で流れているサルデーニャ紹介のビデオには、バスの車窓からも見かけていたコルクガシの木が。
博物館を出て町をぶらぶら歩く。昼休みの時間なので閉まっている御菓子屋さんのショーウィンドウには、いましがた博物館で見たのと同じようなデコラティブなお菓子が並んでいる。変わってないんだね。
今回の旅行ではこういうお菓子を買い食いすることが全くなかったのが心残りのひとつ。いつも胃がいっぱいいっぱいで、食べるもののことは考えたくないという状態だったからね。年をとると胃袋が小さくなっちゃってやだなあ。若い頃なら「お菓子は別腹」とか言って平気で食べられたのに……。
土産物屋や酒屋で爆買い(といっても鍋つかみを数枚とかミルト酒を1、2本とか)しつつ歩いていると、たまたま行き当たった広場に石で作った不思議な彫刻がたくさん飾ってあった。ひょっとしてこれ、コスタンティーノ・ニヴォラの作品では?と思ったら、やっぱりそう。
Piazza Sebastiano Sattaというところで、その名のとおり、セバスティアーノ・サッタという詩人を記念して作られた広場。たくさんの彫刻は、若い頃から晩年までの詩人を表現しているそうで、よく見ると荒削りな石のどこかにブロンズで彫られた人物像が配置されている。
あいにく、ここを見ている途中で雨が降り出し、しかもかなり激しくなってきたので、あわてて近くのバールでエスプレッソを飲みながら雨宿り、と思ったのだけれど、ここ、どういうわけか流行歌(?)を大音量で流しているのでとてもじゃないけど落ち着いていられない。別に私たちを追い出そうと思ってそうしたわけではなく、入る前からそんなふうだった。常連らしい客もいて、バーテンダーと客はずっと話していたんだけど、どういうことなんだろう?
こっちを向いてくれなかった仔猫。
雨が小降りになってきたのでいったん宿に帰り、荷物の整理をしたり、シャワーを浴びて着替えたりしてから夕食に。マックスが、ちゃんと石窯でピッツァを焼いていると教えてくれたIl Rifugio。
初めは予約がないとダメと断られかけたのだが、なんとか席を用意してもらえた。早い時間から客が次から次へとやってきて、とても人気のある店だとわかる。気どったところは全くなく、子ども連れから年配のカップルまで、地元の人たちに愛されている雰囲気だった。
先ほど雨が降ったせいか、窓から見える夕焼けがものすごくきれい。
ピッツァがとてもおいしそうだったんだけど、昼食が遅かったのであまり食欲がなく、あの大きさは無理と判断した。
フレーグラと海老のスープ仕立て。リゾットみたいだと私が言ったらしいが、まったく記憶にない。(撮影:友人F)
牛ヒレ肉のステーキ。(撮影:友人F)
ワインは茶色い陶器のピッチャーに入れて出してくれた。(撮影:友人F)
いつものグリル野菜。このおいしそうな焼き目が自宅でやるとできないのよね。ガス火にフライパン、オーブン、オーブントースター、魚焼き用グリルと試してみたけれどだめ。専用のグリルがないとだめなのかな。あ、ガス火に餅焼き網をのせて焼けばいけるかも?
大好きになったセアダス。
この日は、それまであちこちの店で目にして気になっていたミルト酒を味見してみた。ミルトはサルデーニャではそこらじゅうに生えている植物だそうで、それから作ったリキュールだ。アルコール度数はそんなにないはずなんだけど、けっこう強烈に感じた。エキスが強いのかもしれない。食後に飲むと消化によさそう。
帰国してから調べたら、mirtoって英語ではmyrtle、和名はギンバイカ(銀梅花)ですって。そうか、これがギンバイカだったのか!(と言っても花は見ていないが)
『教皇ヒュアキントス』に何度も出てきて、見たいなあと思っていたのだ。エリザベス・ボウエンのイタリアを舞台にした話にも出てきたような気がする。イギリス人がイタリアと聞くと思い出す花なのかも。
残念ながら花が咲くのは夏だそうで、ちょっと早かったのか目にしなかった。気がつかなかっただけかもしれないけれど。
三人ともぼーっとしてカモメや鳩の動きを見ていたら、そのうちの2羽が仲良しさんで、ずっとくっついている。へえ、鳩でもそういう愛情関係があるのかなと思っていたら、いきなり二段重ねになり、物凄い勢いで体を震わせていたかと思うと、上にいた鳩が離れた。「交尾してたんだ!」「つがってたんだ!」「(無言)」同時に声が出て(出ない人もいたけど)大笑いした。誰も気まり悪がったりしないところは年の功。(写真はイメージです)
アルゲーロの空港はできたばかりらしく、とてもきれいでピカピカ。でも、利用者は少なく、がらんとしている。カフェのレジにだけ人が集中している。まだ観光シーズンには入ってないのかな。
空いてるスペースを埋めるためか、車が展示してあるのも謎。
これがまたえらく時間のかかる手続きだった。まず乗車口に椅子を置いて運転手が座り、勝手に乗れないような態勢を作る。それから乗客ひとりひとりから行く先を訊き、料金を受け取っては手書きで領収書兼チケットを作成する。それを受け取ると、運転手が席を立って中に入れてくれる。これを乗客の数だけ繰り返すのだから、どれだけ手間がかかるか想像もつくというもの。
それでもようやくすべてが終わり、バスは発車した。遅れを取り戻すためかかなりスピードを出している。車窓からの風景は単調で、野原と木々と羊と遠くの山々と風力発電機と時々ヌラーゲ。もっともヌラーゲを実際に近くで見たことがないので、本当にそうなのかどうかはわからない。石を積んで作った羊小屋の可能性もある。
車は山を登っていき、ほんの5分ほどで宿に到着。(宿の詳細は「イタリアの宿」を参照)
サルデーニャ島に関する情報は少なく、ガイドブックでも全く無視されているか、あってもほんの数ページだけということが多い。特に観光客があまり行かない山間地のヌオロやオラーニに関する情報はほとんどなく、Googleマップで目的地まで***メートルとか*.*キロメートルとか出てくるのを信じるしかない。アマゾンの未開の地に乗りこむような不安を抱いていた。どこへ行くにもめちゃくちゃ歩かなくちゃならないと覚悟していったら……山腹に作られているから坂の上り下りは多いものの、コンパクトで歩きやすい町だった。
考えてみると面積192.27平方キロなんて世田谷区と杉並区を合わせたくらいだし、中心地だけを考えたら、多分、谷根千くらいの範囲だと思う。
3人ともぜひ観たいと思っていたサルデーニャ生活・民俗伝統博物館 Museo Etnografico Sardoは宿から歩いて5、6分。拍子抜けした。そのほかのスポットも簡単に歩いていける。遠いのは鉄道駅とバスターミナルだけで、それだって車社会の現代人だからそう考えるだけで、実際に歩けばどうってことのない距離なのかもしれない。
出かける前に宿の食堂の冷蔵庫にあるビールを買って、結局バスの中では食べなかったパンとお菓子をつまみに遅い昼食にした。私たちがごそごそしていたら、内気そうな夫人が現れて、わざわざテーブルクロスをかけてくれた。
まずは上記のサルデーニャ生活・民俗伝統博物館。ここは面白いよ~。とってもお勧め。展示室はきれいだし、展示もよく考えられている。エントランスの紫陽花が花盛りでとてもきれいだった。
このジャケット、欲しい!
土産物屋や酒屋で爆買い(といっても鍋つかみを数枚とかミルト酒を1、2本とか)しつつ歩いていると、たまたま行き当たった広場に石で作った不思議な彫刻がたくさん飾ってあった。ひょっとしてこれ、コスタンティーノ・ニヴォラの作品では?と思ったら、やっぱりそう。
こっちを向いてくれなかった仔猫。
先ほど雨が降ったせいか、窓から見える夕焼けがものすごくきれい。
フレーグラと海老のスープ仕立て。リゾットみたいだと私が言ったらしいが、まったく記憶にない。(撮影:友人F)
『教皇ヒュアキントス』に何度も出てきて、見たいなあと思っていたのだ。エリザベス・ボウエンのイタリアを舞台にした話にも出てきたような気がする。イギリス人がイタリアと聞くと思い出す花なのかも。
残念ながら花が咲くのは夏だそうで、ちょっと早かったのか目にしなかった。気がつかなかっただけかもしれないけれど。
by timeturner
| 2017-06-30 11:55
| 旅行
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