2016年 12月 29日
野良ビトたちの燃え上がる肖像 |
河川敷で猫のムスビと暮らし、空き缶の回収でなんとかその日その日を過ごしていた柳さんは、ある日町で「野良ビトに缶を与えないでください」という看板を見た。やがて国ぐるみで野宿者(ホームレス)を隔離しようとする動きが大きくなり・・・。
これは怖かった。ここのところ野良猫の殺処分問題について興味をもって見ていたのだけど、まさかあの状況が人間にも適用されるとは。
近未来ファンタジー小説とでもいうのかな。舞台になっているのは東京のあの辺というのはわかるのだけれど、町名などはすべて変えて架空社会という扱いになっています。でも、ここに描かれているのは明らかに1、2年後の東京の姿。もうじき開催される国際的なスポーツの祭典というのは東京オリンピックのことでしょう。
国民の間で経済格差が広がっているのはもう今でもそうですが、それが極端にまで達して、家を持たない(持てない)ホームレスの人たちはもはや「人間」として扱われなくなります。この世界では保健所に持ち込まれて殺処分される野良猫と河原で暮らすホームレスの人たちは同じ扱いなのです。
確かに、自分の家のすぐそばに何千人ものホームレスが段ボールやブルーシートで仮小屋を建てて暮らし始めたとしたら、どうしてホームレスが増えたのか、それを解消するためには政府にどう働きかけたらいいのか、そういう合理的な考えをする前に、本能的に怖いと思い、どこかよそに行ってほしいと思うかもしれない。
そんなことを考えながら読んでいると背中がぞわぞわしてきます。どっちの側にもなりたくない。時にはただ黙って見ているだけで、排除する側に回ってしまうんだということを覚えておかなくては。
野良ビトたちの燃え上がる肖像
作者:木村友祐
出版社:新潮社
ISBN:4103361328
これは怖かった。ここのところ野良猫の殺処分問題について興味をもって見ていたのだけど、まさかあの状況が人間にも適用されるとは。
近未来ファンタジー小説とでもいうのかな。舞台になっているのは東京のあの辺というのはわかるのだけれど、町名などはすべて変えて架空社会という扱いになっています。でも、ここに描かれているのは明らかに1、2年後の東京の姿。もうじき開催される国際的なスポーツの祭典というのは東京オリンピックのことでしょう。
国民の間で経済格差が広がっているのはもう今でもそうですが、それが極端にまで達して、家を持たない(持てない)ホームレスの人たちはもはや「人間」として扱われなくなります。この世界では保健所に持ち込まれて殺処分される野良猫と河原で暮らすホームレスの人たちは同じ扱いなのです。
確かに、自分の家のすぐそばに何千人ものホームレスが段ボールやブルーシートで仮小屋を建てて暮らし始めたとしたら、どうしてホームレスが増えたのか、それを解消するためには政府にどう働きかけたらいいのか、そういう合理的な考えをする前に、本能的に怖いと思い、どこかよそに行ってほしいと思うかもしれない。
そんなことを考えながら読んでいると背中がぞわぞわしてきます。どっちの側にもなりたくない。時にはただ黙って見ているだけで、排除する側に回ってしまうんだということを覚えておかなくては。
野良ビトたちの燃え上がる肖像
作者:木村友祐
出版社:新潮社
ISBN:4103361328
by timeturner
| 2016-12-29 19:00
| 和書
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