2016年 10月 31日
A Wrinkle in Time |
天体物理学者のジャックは、妻と二人の子供を残して忽然と姿を消した。14歳の娘のメグは、幼児だが天才的な頭脳をもつ弟のチャールズ・ウオーレス、同級生のカルビンと共に、魔女のような3人の女性の道案内で父を捜す時空の旅に出る。たどり着いたのは、悪の力が人間の社会を支配する暗黒の惑星カマゾツだった・・・。
『五次元世界の冒険』の原書です。翻訳書を読んだときは今いちな読後感だったのですが、向こうでは映画やお芝居にもなっていて、先日メモしたリストにもあった来年公開予定の新ヴァージョン(オプラ・ウィンフリーやリース・ウィザースプーンが出るらしい。子役は未定)は製作が始まったらしい。カナダやアメリカではかなり愛されている古典らしい。ひょっとしたら翻訳のせいで楽しめなかったのかなと思い、原書で読んでみることにしました。
読んでみて思った。これは小説としてよく書けているから映画化されるのではなく、あらゆる要素が詰まっていて、「うまく脚本化できれば」ヒットするかもしれないから、自分でオリジナルに考えることが苦手な映画人が目をつけるんだと思う。
突っ込みどころ満載だし、主人公に魅力がないし、SF的な説明もいい加減、ファンタジーとしてもとっちらかっている。でも、そうした多くの欠陥を補って余りある可能性が、読者も映画・演劇人も惹きつけるのでしょうね。
翻訳書を読んだときにも思ったけど、主人公であるメグの性格が悪すぎる。児童文学には『秘密の花園』のメアリやコリンを筆頭に、性格が悪かったり、ダメ人間だったりする主人公がなんらかのきっかけで成長する話は多いし、そこが読みどころにもなるわけだけど、この本ではもう最後の最後までどうしようもない自己チュー女のまま。
最後になってやっと立ち直るんだけど(これがまたありきたりの安直な手でねえ)、それだって本人の努力というよりはなりゆきみたいなもので、過去の自分についての反省や、それを今後の糧にしようという様子もほとんど見せない。なのにまわりはみんなで持ち上げる。血のつながった人たちはまあしょうがないと思うけど、まともで賢いはずのカルヴィンまでが運命のようにメグを受け入れているのはぜんぜん納得できない。
作者は書いているうちに自分でもわけがわからなくなったんじゃないかな。最後のほうはもう適当に終わらせちゃおうと思った感じです。続編が書かれたのは、そのへんの「終わってない感」が作者の中にあったからじゃないのかな。
翻訳書はずっと絶版になっているので、今度映画が来るのに合わせて新訳が出るかなと思ってたんですが、おそらく出ないでしょうね。脚本の内容によっては映画のノヴェライゼーションが出るかもしれないし、そっちのほうがいいと思う。
A Wrinkle in Time (A Wrinkle in Time Quintet)
邦題:五次元世界の冒険
作者:Madeleine L'Engle
出版社:Farrar, Straus and Giroux
ISBN:Kindle版
『五次元世界の冒険』の原書です。翻訳書を読んだときは今いちな読後感だったのですが、向こうでは映画やお芝居にもなっていて、先日メモしたリストにもあった来年公開予定の新ヴァージョン(オプラ・ウィンフリーやリース・ウィザースプーンが出るらしい。子役は未定)は製作が始まったらしい。カナダやアメリカではかなり愛されている古典らしい。ひょっとしたら翻訳のせいで楽しめなかったのかなと思い、原書で読んでみることにしました。
読んでみて思った。これは小説としてよく書けているから映画化されるのではなく、あらゆる要素が詰まっていて、「うまく脚本化できれば」ヒットするかもしれないから、自分でオリジナルに考えることが苦手な映画人が目をつけるんだと思う。
突っ込みどころ満載だし、主人公に魅力がないし、SF的な説明もいい加減、ファンタジーとしてもとっちらかっている。でも、そうした多くの欠陥を補って余りある可能性が、読者も映画・演劇人も惹きつけるのでしょうね。
翻訳書を読んだときにも思ったけど、主人公であるメグの性格が悪すぎる。児童文学には『秘密の花園』のメアリやコリンを筆頭に、性格が悪かったり、ダメ人間だったりする主人公がなんらかのきっかけで成長する話は多いし、そこが読みどころにもなるわけだけど、この本ではもう最後の最後までどうしようもない自己チュー女のまま。
最後になってやっと立ち直るんだけど(これがまたありきたりの安直な手でねえ)、それだって本人の努力というよりはなりゆきみたいなもので、過去の自分についての反省や、それを今後の糧にしようという様子もほとんど見せない。なのにまわりはみんなで持ち上げる。血のつながった人たちはまあしょうがないと思うけど、まともで賢いはずのカルヴィンまでが運命のようにメグを受け入れているのはぜんぜん納得できない。
作者は書いているうちに自分でもわけがわからなくなったんじゃないかな。最後のほうはもう適当に終わらせちゃおうと思った感じです。続編が書かれたのは、そのへんの「終わってない感」が作者の中にあったからじゃないのかな。
翻訳書はずっと絶版になっているので、今度映画が来るのに合わせて新訳が出るかなと思ってたんですが、おそらく出ないでしょうね。脚本の内容によっては映画のノヴェライゼーションが出るかもしれないし、そっちのほうがいいと思う。
A Wrinkle in Time (A Wrinkle in Time Quintet)
邦題:五次元世界の冒険
作者:Madeleine L'Engle
出版社:Farrar, Straus and Giroux
ISBN:Kindle版
by timeturner
| 2016-10-31 19:00
| 洋書
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