2016年 10月 13日
歌川国芳猫づくし |
ペリーが率いる黒船が来航し、世の中が騒がしくなってきた時代。江戸の町にはお上の監視の目をかいくぐってはご政道批判の風刺画を発表する絵師・一勇斎国芳がいた。美人画、春画、幽霊画、それに猫や金魚を用いた滑稽画と八面六臂の活躍を見せた天才絵師は、個性派揃いの弟子たちと八匹の猫に囲まれて暮らしていたが・・・。
猫の絵で有名な国芳を風野真知雄が描くのですから面白くないわけはないと思っていたのですが、ちょっと予想とは違う面白さでした。
いつものように短編集の形になっていて、それぞれの話にちょっとした謎が出てきて国芳がそれを解決する、あるいは裏を知るといった形にはなっているのですが、これまでのように謎解きがメインではなく、幕末の世に生きる人間・国芳を描いた人情小説を動かすために事件を道具として使ったという趣です。
下手の横好き
金魚の船頭さん
高い塔の女
病人だらけ
からんころん
江の島比べ
団十郎の幽霊
面白いのは謎ときよりも、作中に散りばめられた国芳の作品に対する作者なりの解釈や好みといったもののほう。金魚を擬人化した愉快なシリーズを主題にした「金魚の船頭さん」では絵に秘められた当時の権力者への揶揄について触れられていますが、これって作者の創造ですよね? 気になって問題の絵をしげしげと見てみたのですが、言われてみれば「と」の字と「の」の字は見えるような気がする。
先輩格にあたる葛飾北斎や、同時期に活躍した安藤広重も登場します。私は、国芳の絵から、北斎のように破天荒な人間を想像していたのですが、この本ではそれなりに世渡りの知恵を身につけ、小さなことにくよくよすることもある普通の中年男として描かれていて、親しみがもてます。
国芳というとよく引き合いに出される例のスカイツリーのような塔が描かれた絵「東都三ツ股の図」の説明はけっこう説得力がありました。でも、国芳には予知能力があったという説のほうが面白いけどね。
タイトルにある猫は当然ながら全編にちょこちょこと顔を出します。が、残念ながらそれほど大きな活躍はしない。ただそこにいてさえくれればいいという癒しの存在でしょうか。ただ、その書きっぷりから見て、作者もまた無類の猫好きであることは確かだと思います。
歌川国芳猫づくし (文春文庫)
作者:風野真知雄
出版社:文藝春秋
ISBN:4167906805
猫の絵で有名な国芳を風野真知雄が描くのですから面白くないわけはないと思っていたのですが、ちょっと予想とは違う面白さでした。
いつものように短編集の形になっていて、それぞれの話にちょっとした謎が出てきて国芳がそれを解決する、あるいは裏を知るといった形にはなっているのですが、これまでのように謎解きがメインではなく、幕末の世に生きる人間・国芳を描いた人情小説を動かすために事件を道具として使ったという趣です。
下手の横好き
金魚の船頭さん
高い塔の女
病人だらけ
からんころん
江の島比べ
団十郎の幽霊
面白いのは謎ときよりも、作中に散りばめられた国芳の作品に対する作者なりの解釈や好みといったもののほう。金魚を擬人化した愉快なシリーズを主題にした「金魚の船頭さん」では絵に秘められた当時の権力者への揶揄について触れられていますが、これって作者の創造ですよね? 気になって問題の絵をしげしげと見てみたのですが、言われてみれば「と」の字と「の」の字は見えるような気がする。
先輩格にあたる葛飾北斎や、同時期に活躍した安藤広重も登場します。私は、国芳の絵から、北斎のように破天荒な人間を想像していたのですが、この本ではそれなりに世渡りの知恵を身につけ、小さなことにくよくよすることもある普通の中年男として描かれていて、親しみがもてます。
国芳というとよく引き合いに出される例のスカイツリーのような塔が描かれた絵「東都三ツ股の図」の説明はけっこう説得力がありました。でも、国芳には予知能力があったという説のほうが面白いけどね。
タイトルにある猫は当然ながら全編にちょこちょこと顔を出します。が、残念ながらそれほど大きな活躍はしない。ただそこにいてさえくれればいいという癒しの存在でしょうか。ただ、その書きっぷりから見て、作者もまた無類の猫好きであることは確かだと思います。
歌川国芳猫づくし (文春文庫)
作者:風野真知雄
出版社:文藝春秋
ISBN:4167906805
by timeturner
| 2016-10-13 19:00
| 和書
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