2016年 08月 09日
世界を7で数えたら |
天才的な頭脳の持ち主ウィローは、同じ年の子たちとうまくつきあえず、万全の準備を整えてのぞんだはずの中学でも孤立してしまう。無気力な学校カウンセラー・デルのもとに通うようになり、そこでしっかり者のベトナム人高校生マイと出会ったことで初めて友達をみつけられたという気がしたが、そんなとき、愛情深い養父母が交通事故で突然死してしまう。身寄りのないウィローは、里親がみつかるまでマイの家族と一緒にデルのマンションで暮らすことになり、ほとんど他人同士の不思議な同居生活が始まった・・・。
楽しかった! こんなにワクワクしながら一気に読みきったのはひさしぶり。確かにウィローは大きな悲劇に直面し、さまざまな不安や心配を抱えることになるんですが、それが読むほうの気持ちを落ち込ませることはまったくない。
天才児で将来は医者になりたいと考えているウィローは、悲しみのドン底にあるときでも、自分の心拍数や血圧、栄養状態などを頭の中で細かくチェックしているし、人が非合理的なことを言ったりしたりすると、口には出さないものの心の中で鋭くチェックするので、読んでいるほうとしてはついつい笑ってしまい、おセンチになってる暇がないんですよね。
それに、天才児らしいKYさはあるものの、ウィローはこれまで読んできた重度の自閉症児の話のように他人の気持ちが理解できないということはなくて、他人の気分をきちんと察し、相手を傷つけないように言葉を控えることも知っているので、読んでいてハラハラしないですむからラクなんです。
ウィローを取り囲む人たちのキャラも面白い。だらしがなくて、何をやっても長続きせず、仕事も適当にごまかしてきたデル。芸術的なセンスがあるのに、自分の望まないことは一切やろうとせず、怒りをためこんでいるマイの兄クアン・ハ。女手ひとつでネイルサロンを経営し、がむしゃらにがんばっているマイの母パティ。さらには、たまたまウィローを乗せたことで人生が大きく変わっていくメキシコ人タクシー運転手のハイロまで。それぞれがなんらかの問題を抱えてはいるものの、自分の中にある輝く部分をなぜかウィローによって引き出される人たち、これがとってもすてき。
出来過ぎな設定なのにインチキ臭さはまるで感じない。人間にはたくさんの可能性が用意されていて、その気になりさえすれば幾つになっても間に合うんだって、力強く背中を押してくれるように感じられる。
これ、映画化も決定しているそうで、ミュージカル映画「アニー」で主演したクヮヴェンジャネ・ウォレスがウィローを演じるらしい。楽しみだなあ。あまり派手なハリウッド映画にはせず、こじんまりと創ってくれるのを希望。
【誤植メモ】 p.382 4行目 だけいいのだ。⇒だけでいいのだ。
世界を7で数えたら (SUPER! YA)
原題:Counting by 7s
作者:ホリー・ゴールドバーグスローン
訳者:三辺 律子
出版社:小学館
ISBN:4092905807
楽しかった! こんなにワクワクしながら一気に読みきったのはひさしぶり。確かにウィローは大きな悲劇に直面し、さまざまな不安や心配を抱えることになるんですが、それが読むほうの気持ちを落ち込ませることはまったくない。
天才児で将来は医者になりたいと考えているウィローは、悲しみのドン底にあるときでも、自分の心拍数や血圧、栄養状態などを頭の中で細かくチェックしているし、人が非合理的なことを言ったりしたりすると、口には出さないものの心の中で鋭くチェックするので、読んでいるほうとしてはついつい笑ってしまい、おセンチになってる暇がないんですよね。
それに、天才児らしいKYさはあるものの、ウィローはこれまで読んできた重度の自閉症児の話のように他人の気持ちが理解できないということはなくて、他人の気分をきちんと察し、相手を傷つけないように言葉を控えることも知っているので、読んでいてハラハラしないですむからラクなんです。
ウィローを取り囲む人たちのキャラも面白い。だらしがなくて、何をやっても長続きせず、仕事も適当にごまかしてきたデル。芸術的なセンスがあるのに、自分の望まないことは一切やろうとせず、怒りをためこんでいるマイの兄クアン・ハ。女手ひとつでネイルサロンを経営し、がむしゃらにがんばっているマイの母パティ。さらには、たまたまウィローを乗せたことで人生が大きく変わっていくメキシコ人タクシー運転手のハイロまで。それぞれがなんらかの問題を抱えてはいるものの、自分の中にある輝く部分をなぜかウィローによって引き出される人たち、これがとってもすてき。
出来過ぎな設定なのにインチキ臭さはまるで感じない。人間にはたくさんの可能性が用意されていて、その気になりさえすれば幾つになっても間に合うんだって、力強く背中を押してくれるように感じられる。
これ、映画化も決定しているそうで、ミュージカル映画「アニー」で主演したクヮヴェンジャネ・ウォレスがウィローを演じるらしい。楽しみだなあ。あまり派手なハリウッド映画にはせず、こじんまりと創ってくれるのを希望。
【誤植メモ】 p.382 4行目 だけいいのだ。⇒だけでいいのだ。
世界を7で数えたら (SUPER! YA)
原題:Counting by 7s
作者:ホリー・ゴールドバーグスローン
訳者:三辺 律子
出版社:小学館
ISBN:4092905807
by timeturner
| 2016-08-09 19:47
| 和書
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