2016年 06月 22日
黄金期未訳SF テーマ・アンソロジー 猫の巻 |
1950年代黄金期SFの未訳作品をテーマに沿って選んだ作品集。アマチュアSFファンが自ら翻訳し、アマゾンKindleの自費出版で出したものだと思います。筋金入りのSFファンなのでしょう、解説や《蛇足》などの地の文は興味深く楽しく読めます。が、残念ながら翻訳は出版社から出すレベルではないように思えます。誤植と誤訳が多く、肝心の話の良さが伝わってきません。
3作収録で165円ですから利益を目的としたものではなく、ファンによるファンのための同人誌、知られざる作品を広く紹介したいという善意の熱意によるものだと思いますし、その点は確かにありがたい。でも、だからこそ余計に、作品の良さをきちんと伝えるべきなんじゃないかなあ。原文の意を正しくとらえて紹介するのが作者に対する礼儀でもあると思う。
多分、訳していて自分でもよくわからなかった個所が多かったはずなのに、どうして誰かに相談しなかったのか。SFファン同士で相互チェックをするだけでも、かなりの部分は回避できただろうと思うのですが。
ネコだ!/A.E.ヴァン・ヴォウト
猫は宇宙でスウィング/スタンリー・ミューレ
すべての猫はねずみ色/アンドレ・ノートン
原文とは違う箇所で勝手に改行しているのもどうなんだろう。英語圏の作家はパラグラフ単位できちんと整理して文章を書いているので、それを勝手に改行するのは原作者に失礼だと思います。
1)Rigel Royalは酒場の名前では? 差し押さえをくらった宇宙船乗りが王室に出入りできるとは思えない。そもそもリゲルが王国であるなどどこにも出てこない。
作者:アンドレ・ノートン、A.E.ヴァン・ヴォウト、スタンリー・ミューレン
訳者:荒川水路
出版社:タイロス出版
ISBN:Kindle版
3作収録で165円ですから利益を目的としたものではなく、ファンによるファンのための同人誌、知られざる作品を広く紹介したいという善意の熱意によるものだと思いますし、その点は確かにありがたい。でも、だからこそ余計に、作品の良さをきちんと伝えるべきなんじゃないかなあ。原文の意を正しくとらえて紹介するのが作者に対する礼儀でもあると思う。
多分、訳していて自分でもよくわからなかった個所が多かったはずなのに、どうして誰かに相談しなかったのか。SFファン同士で相互チェックをするだけでも、かなりの部分は回避できただろうと思うのですが。
ネコだ!/A.E.ヴァン・ヴォウト
猫は宇宙でスウィング/スタンリー・ミューレ
すべての猫はねずみ色/アンドレ・ノートン
原文とは違う箇所で勝手に改行しているのもどうなんだろう。英語圏の作家はパラグラフ単位できちんと整理して文章を書いているので、それを勝手に改行するのは原作者に失礼だと思います。
【誤植メモ】(Kindleは正確なページ数が出せないので( )内に位置No.を入れます) すっと見てるぞ!(24)⇒ずっと見てるぞ!/しかし日本おいては(45)⇒しかし日本においては/モートンは(101)⇒モートンが/性質についてのお話していますが(105)⇒性質についてお話していますが、or、性質についてのお話をしていますが/この名前には全く意味をなしていませんでした(116)⇒この名前は全く意味をなしていませんでした/サーカス狂のオーナー(131)⇒サーカスのオーナー/少しの時間を必要でした(233)⇒少しの時間が必要でした/その表情の動きは(234)⇒その表情の動きからは/まっすぐと長く(235)⇒まっすぐ長く/前まで止まりました(246)⇒前で止まりました/首を揺ったのです(257)⇒首を振ったのです?/印象を持って彼に持ってほしかった(313)⇒印象を彼に持ってほしかった/人、宗教的な生き物です(321)⇒人は宗教的な生き物です/感情的な対応する事しか(348)⇒感情的な対応をする事しか/お教えましょう(447)⇒お教えしましょう/なんて言うと歴史的な事実を(472)⇒なんて言う歴史的な事実を/ボルトなる。もっともらしい(476)⇒ボルトなるもっともらしい/"ミステリアス終わり"(492)⇒?/短編部門ノミネートされた(548)⇒短編部門にノミネートされた/発表年度知り(554)⇒発表年度を知り/これは猫が待っているでしょうか?(586)⇒これは猫が待っているからでしょうか?/鋭い黄緑色目を向け(593)⇒鋭い黄緑色の目を向け/こんな事とを(615)⇒こんなことを/飛行士の並の機敏さ(635)⇒飛行士並の機敏さ/そう面倒を(641)⇒そういう面倒を/楽しみしていた(904)⇒楽しみにしていた/工夫したりしてした(905)⇒工夫したりしていた/バットは好みは(913)⇒バットの好みは/疲れて果てて(922)⇒疲れ果てて/誰の仲間にもならなかったの彼女が(925)⇒誰の仲間にもならなかった彼女が/明らかができるなら(936)⇒明らかにできるなら/始めて(938)⇒初めて/それはは一つの(951)⇒それは一つの/覆われているのベッド(957)⇒覆われているベッド/そろそろと近く。(959)⇒そろそろと近づく。/定めて切ってはいない(963)⇒定めきってはいない/パット(968)⇒バット/二人の前にいるバット(970)⇒彼女の前にいるバット/この何年も使われていない(975)⇒ここ何年も使われていない/バット前に(1030)⇒バットの前に
【誤訳メモ】 気になったところを1パラグラフだけ以下にあげる(「すべての猫はねずみ色(All Cats are Gray)」から)。最初から最後までこんな感じ。
For I was there, right in the Rigel Royal, when it all began on the night that Cliff Moran blew in, looking lower than an antman’s belly and twice as nasty. He’d had a spell of luck foul enough to twist a man into a slug-snake and we all knew that there was an attachment out for his ship. Cliff had fought his way up from the back courts of Venaport.
For I was there, right in the Rigel Royal, when it all began on the night that Cliff Moran blew in, looking lower than an antman’s belly and twice as nasty. He’d had a spell of luck foul enough to twist a man into a slug-snake and we all knew that there was an attachment out for his ship. Cliff had fought his way up from the back courts of Venaport.
その時、私はリゲル(Rigel)の王室にいた。そして全ては、そこにクリフ・モランが流れ着いた時に始まった。クリフ・モランの身長はアントマンの半分で頭は腹より下だった。その代わりに、態度は2倍、不愉快だった。こいつが来てからロクな事が起きない(ナメクジヘビに人がからまれるって奴だ)。彼の船には、色々の"付属物"が付いていた。彼は不正な呪文をたくさん保有しており、それはナメクジヘビから人を作るための呪文だった。だから彼の船には差し押さえの封印が貼られていたのだ。彼はヴェナポートの法廷の裏口から這い出して来た。
1)Rigel Royalは酒場の名前では? 差し押さえをくらった宇宙船乗りが王室に出入りできるとは思えない。そもそもリゲルが王国であるなどどこにも出てこない。
2)blow inは「ひょっこりやってくる」の意。
3)antman's bellyが何を指しているのかはわからないが、looking lowerは身長が低いのではなく、落ち込んでいるように見えたってことでは?
4)twice as nastyは「二倍不機嫌」。「不愉快」だと本人の心情ではなく、他人に与える印象になってしまう。
5)a spell of luckは「一続きの幸運」を意味する言い回しだが、その後にfoul enoughとあるから実際には不運だったわけで、そのせいでslug snake(インドあたりにいる実在のセタカヘビという毒蛇をslug snakeと呼ぶようだ)みたいに凶暴になったのでは?
6)back courtsは複数になっているので法廷ではないと思う。裏庭か何か。had fought his way up(fight one's way=困難と戦いながら前進する)と過去完了形になっているから、困難と闘いながら最低のレベルから這い上がってきた、つまり貧民窟での暮らしからのしあがった男ということでは?
4)twice as nastyは「二倍不機嫌」。「不愉快」だと本人の心情ではなく、他人に与える印象になってしまう。
5)a spell of luckは「一続きの幸運」を意味する言い回しだが、その後にfoul enoughとあるから実際には不運だったわけで、そのせいでslug snake(インドあたりにいる実在のセタカヘビという毒蛇をslug snakeと呼ぶようだ)みたいに凶暴になったのでは?
6)back courtsは複数になっているので法廷ではないと思う。裏庭か何か。had fought his way up(fight one's way=困難と戦いながら前進する)と過去完了形になっているから、困難と闘いながら最低のレベルから這い上がってきた、つまり貧民窟での暮らしからのしあがった男ということでは?
作者:アンドレ・ノートン、A.E.ヴァン・ヴォウト、スタンリー・ミューレン
訳者:荒川水路
出版社:タイロス出版
ISBN:Kindle版
by timeturner
| 2016-06-22 19:44
| 和書
|
Comments(0)