2016年 06月 12日
逃れの森の魔女 |
背中が曲がり《醜い女》と呼ばれる村の産婆は、ひとり娘を愛し、仕事熱心で、欲のない女だった。だが、あるとき黄金の輝きを目にしたときから、より大きな力を求めるようになり、やがて赤ん坊をとりあげるだけでなく病気を治す女魔術師となっていく。そのためには魔法陣を使って悪魔の力を借りねばならず、狡猾な悪魔はあの手この手で女を誘惑しようとする・・・。
グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』を魔女の視点から描いた物語です。でも、「魔女にだってそれなりの事情があったんだから」としたり顔で教えるようなものではありません。訳者あとがきには「最高点に近いパロディの傑作」と書かれていて、確かに傑作なのですが、これをパロディと呼んでしまっていいものか、ためらいます。
パロディという言葉にはオリジナルより軽い印象があるのですが(そう感じるのは私だけかな?)、この作品はオリジナルよりずっとずっと重く深い。なにしろ、最初から最後まで息詰まるような戦いの連続なのです。魂を賭けた悪魔との壮絶なる死闘。母親の愛とか、人間の尊厳とか、そんな甘っちょろいことなど飛び越えた、食うか食われるかの状況が全ページにわたって語られているので、読み始める前は「182ページか、短いなあ」と思ったのですが、それで限界って感じ。これ以上はもちません。
でも、体力も気力も使い切ったところで訪れるエンディングは「感動」のひとことです。じーんときて、しばらく目を閉じて心を飛ばしてしまいました。
逃れの森の魔女
原題:The Magic Circle
作者:ドナ・ジョー・ナポリ
訳者:金原瑞人、久慈美貴
出版社:青山出版社
ISBN:4899980035
グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』を魔女の視点から描いた物語です。でも、「魔女にだってそれなりの事情があったんだから」としたり顔で教えるようなものではありません。訳者あとがきには「最高点に近いパロディの傑作」と書かれていて、確かに傑作なのですが、これをパロディと呼んでしまっていいものか、ためらいます。
パロディという言葉にはオリジナルより軽い印象があるのですが(そう感じるのは私だけかな?)、この作品はオリジナルよりずっとずっと重く深い。なにしろ、最初から最後まで息詰まるような戦いの連続なのです。魂を賭けた悪魔との壮絶なる死闘。母親の愛とか、人間の尊厳とか、そんな甘っちょろいことなど飛び越えた、食うか食われるかの状況が全ページにわたって語られているので、読み始める前は「182ページか、短いなあ」と思ったのですが、それで限界って感じ。これ以上はもちません。
でも、体力も気力も使い切ったところで訪れるエンディングは「感動」のひとことです。じーんときて、しばらく目を閉じて心を飛ばしてしまいました。
逃れの森の魔女
原題:The Magic Circle
作者:ドナ・ジョー・ナポリ
訳者:金原瑞人、久慈美貴
出版社:青山出版社
ISBN:4899980035
by timeturner
| 2016-06-12 20:00
| 和書
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