2016年 01月 30日
いつも彼らはどこかに |
書店でまずカバーに目を惹かれ、手にとってみたら小川洋子の新しい文庫で、さらに目次を見たらどうやら動物をテーマにした短編集らしいので、おお、小川さんが動物小説を書いたらどんなふうなんだろうとわくわくして買いました。
しかし、当然ながら、小川洋子がそのへんにあふれているような動物小説なんか書くわけがない。ちょっと予想していた『ブラフマンの埋葬』とも違っていた。なんと形容したらいいのかわからない、不思議な物語ばかりでした。
確かに動物は出てくるのだけれど、それよりもその動物に関わる人間の話。私たちと同じように考え、同じように行動するはずの人間たちが、思いもよらないことをしたり話したりする。でも、別に奇をてらっているわけではなく、そういう人間もいるだろうなあという想定内で、いつか自分と似たところがみつかっていたりする。
帯同馬
ビーバーの小枝
ハモニカ兎
目隠しされた小鷺
愛犬ベネディクト
チーター準備中
断食蝸牛
竜の子幼稚園
一編読み終えるたびに、お風呂に肩までつかったときのような「はーっ」という声が出てしまった。魂が抜けてしまい、しばらく次を読む気にならないくらい。とはいえ、気持ちがいいからだけではなく(蝸牛の話は生理的にだめだった)、全面的に圧倒される感じといったらいいのかな。
「ビーバーの小枝」の中で語り手の作家はビーバーの頭骨についてこんなことを言っている。
いつも彼らはどこかに (新潮文庫)
作者:小川洋子
出版社:新潮社
ISBN:4101215278
しかし、当然ながら、小川洋子がそのへんにあふれているような動物小説なんか書くわけがない。ちょっと予想していた『ブラフマンの埋葬』とも違っていた。なんと形容したらいいのかわからない、不思議な物語ばかりでした。
確かに動物は出てくるのだけれど、それよりもその動物に関わる人間の話。私たちと同じように考え、同じように行動するはずの人間たちが、思いもよらないことをしたり話したりする。でも、別に奇をてらっているわけではなく、そういう人間もいるだろうなあという想定内で、いつか自分と似たところがみつかっていたりする。
帯同馬
ビーバーの小枝
ハモニカ兎
目隠しされた小鷺
愛犬ベネディクト
チーター準備中
断食蝸牛
竜の子幼稚園
一編読み終えるたびに、お風呂に肩までつかったときのような「はーっ」という声が出てしまった。魂が抜けてしまい、しばらく次を読む気にならないくらい。とはいえ、気持ちがいいからだけではなく(蝸牛の話は生理的にだめだった)、全面的に圧倒される感じといったらいいのかな。
「ビーバーの小枝」の中で語り手の作家はビーバーの頭骨についてこんなことを言っている。
一口に頭と言っても、それは数えきれない種類の形状を持つパーツの複雑な組み合わせだった。歯、顎、眼窩、喉、鼻それぞれが忠実に自らの役目を保ちつつ、同時に独自の曲線美を描き、互いにつながり合って一つの形に納まっていた。出しゃばったり邪魔をしたりするラインは一つとしてなく、隅々にまで計算が行き届き、少しでも角度を変えるたび新たな表情が浮かび上がってきた。それでいてごく自然に、落ち葉の中から生まれ出てきたもののような素直さがあった。私にとって小川洋子さんの小説はまさにこれだと思いました。
いつも彼らはどこかに (新潮文庫)
作者:小川洋子
出版社:新潮社
ISBN:4101215278
by timeturner
| 2016-01-30 21:14
| 和書
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