2016年 01月 21日
桜ほうさら(上・下) |
上総国搗根藩のうだつの上がらない小役人だった古橋宋左右衛門は、賄賂のぬれぎぬをきせられて切腹し、家はおとりつぶしとなった。武道はからきし苦手の次男・笙之介は老儒学者の住みこみ書生で満足していたが、お家再興を願う母の頼みで江戸に上がった。深川の富勘長屋で暮らしながら写本の仕事を請け負い、世の中のことを学び、父の汚名を晴らす機会をまつのだが・・・。
いやあ、さすがの宮部さんでも時代小説のネタはもう出つくしただろうと思っていたら、まだまだ変化球がいくらでもあるのねえ。筆跡を真似た文書偽造とか、贋字の暗号とか、いやはやよくもまあ思いつくなあという事件が次々に。
気弱で涙もろい笙之介と「桜の精」のようだけど意地っ張りな和歌との恋の行方も気になるし、頭が切れるけど見た目は呑気なおじさん風の江戸留守居役や、色っぽくて料理上手な船宿の女将、やたらと顔の広い貸本屋の村田屋治兵衛といった脇役連も相変わらず魅力的。
甲州では「あれこれいろんなことがあって大変だ、大騒ぎだ」というようなとき「ささらほうさら」と言うのだそうで、タイトルはそれに桜をひっかけたものらしい。
これまでとちょっと違うかなと感じたのは、これまでは作者自身が江戸時代にどっぷり浸かってそれを楽しんでいたのに対して、今回は背景は江戸時代でもそこで起こる出来事の多くは現代社会のそれを強く思い起こさせるものになっていること。和歌の痣はアトピーで苦しむ人の症状みたいだし、笙之介と父母、兄との関係も現代の親子関係に近いものを感じます。
とはいえ、結末は宮部さんにしてはかなり苦くて悲しかった。勝之助のこれからを思うと暗澹たる気分になります。もちろん自業自得ではあるのですが、ああいう人間になってしまったのは母親の責任が大きいと思う。現代社会でもよく見ますよね。父親を見下している母親に育てられた子どもの問題点。とはいえ、現代でも江戸時代でも、そういう家庭は突然の不幸がふりかからなければそれなりにうまくいってしまうものなのですが。などなどいろいろ考えてしまうエンディングでした。
桜ほうさら(上) (PHP文芸文庫)
桜ほうさら(下) (PHP文芸文庫)
作者:宮部みゆき
出版社:PHP研究所
ISBN: 4569764819、4569764827
いやあ、さすがの宮部さんでも時代小説のネタはもう出つくしただろうと思っていたら、まだまだ変化球がいくらでもあるのねえ。筆跡を真似た文書偽造とか、贋字の暗号とか、いやはやよくもまあ思いつくなあという事件が次々に。
気弱で涙もろい笙之介と「桜の精」のようだけど意地っ張りな和歌との恋の行方も気になるし、頭が切れるけど見た目は呑気なおじさん風の江戸留守居役や、色っぽくて料理上手な船宿の女将、やたらと顔の広い貸本屋の村田屋治兵衛といった脇役連も相変わらず魅力的。
甲州では「あれこれいろんなことがあって大変だ、大騒ぎだ」というようなとき「ささらほうさら」と言うのだそうで、タイトルはそれに桜をひっかけたものらしい。
これまでとちょっと違うかなと感じたのは、これまでは作者自身が江戸時代にどっぷり浸かってそれを楽しんでいたのに対して、今回は背景は江戸時代でもそこで起こる出来事の多くは現代社会のそれを強く思い起こさせるものになっていること。和歌の痣はアトピーで苦しむ人の症状みたいだし、笙之介と父母、兄との関係も現代の親子関係に近いものを感じます。
とはいえ、結末は宮部さんにしてはかなり苦くて悲しかった。勝之助のこれからを思うと暗澹たる気分になります。もちろん自業自得ではあるのですが、ああいう人間になってしまったのは母親の責任が大きいと思う。現代社会でもよく見ますよね。父親を見下している母親に育てられた子どもの問題点。とはいえ、現代でも江戸時代でも、そういう家庭は突然の不幸がふりかからなければそれなりにうまくいってしまうものなのですが。などなどいろいろ考えてしまうエンディングでした。
桜ほうさら(上) (PHP文芸文庫)
桜ほうさら(下) (PHP文芸文庫)
作者:宮部みゆき
出版社:PHP研究所
ISBN: 4569764819、4569764827
by timeturner
| 2016-01-21 23:09
| 和書
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