2015年 11月 15日
鬼平犯科帳〈1〉 |
宮部みゆきの時代小説も半数以上を読み終えてしまい、そろそろ次の作家をみつけないとということで、大御所のこちらを味見してみたのですが……あ、あれえ? こんなの?
斬り捨て御免の権限を持つ幕府の火付盗賊改方というのは、殺しのライセンスを持つイギリスMI6の007みたいで、悪い奴らをばっさばっさと斬り倒していくあたりはストレス解消になりそうですが、話全体で見ると007シリーズほどの爽快感はないんですよね。平蔵が捕えた大悪党をみずから拷問にかけるシーンなんて、中世の魔女裁判かKGBかって雰囲気だし。
文体も私の好みではないかなあ。TVドラマの脚本を読んでいるようで味気ない。さくさく進むし、適当なところでト書きのような説明が入るので読みやすいんだけど、それだけにあっけらかんとしすぎている。人の心の奥深くまでえぐって見せて、忘れられない余韻を残すようなところがない。それこそが時代小説の醍醐味だと思っていたのだけれど。
男性が書いたものだからかなという気もします。いかにも男性読者が喜びそうな濡れ場が必要もないところにしばしば出てきて、それがあからさまに男性視点なんですよね。そういうところも007なのかもしれない。
主人公の鬼平は、若い頃はぐれてやりたい放題の無茶をしたヤクザ者だったという設定ですが、それでも今は金に不自由しない旗本で、お上の側、つまり権力者なわけで、人情味をみせてくれても上から目線な感じがぬぐえない。
啞の十蔵
本所・桜屋敷
血頭の丹兵衛
浅草・御厨河岸
老盗の夢
暗剣白梅香
座頭と猿
むかしの女
こんなに長く続いているシリーズで、しかもいまだに売れているわけだから、たった一冊読んだだけで決めつけるのは早合点だと思うけど、逆にこういうのは感覚の問題なので何冊読んでも同じかなとも思う。それでもこれは最後まで読み通したけど、途中で挫折したのは平岩弓枝の《御宿かわせみ》シリーズと野村胡堂の《銭形平次》シリーズ。これだけ人気のシリーズが軒並みだめだってことは、私、時代小説ファンではなく、単に宮部みゆきファンだってだけだったのかもしれない。
鬼平犯科帳〈1〉 (文春文庫)
作者:池波正太郎
出版社:文藝春秋
ISBN:4167142538
斬り捨て御免の権限を持つ幕府の火付盗賊改方というのは、殺しのライセンスを持つイギリスMI6の007みたいで、悪い奴らをばっさばっさと斬り倒していくあたりはストレス解消になりそうですが、話全体で見ると007シリーズほどの爽快感はないんですよね。平蔵が捕えた大悪党をみずから拷問にかけるシーンなんて、中世の魔女裁判かKGBかって雰囲気だし。
文体も私の好みではないかなあ。TVドラマの脚本を読んでいるようで味気ない。さくさく進むし、適当なところでト書きのような説明が入るので読みやすいんだけど、それだけにあっけらかんとしすぎている。人の心の奥深くまでえぐって見せて、忘れられない余韻を残すようなところがない。それこそが時代小説の醍醐味だと思っていたのだけれど。
男性が書いたものだからかなという気もします。いかにも男性読者が喜びそうな濡れ場が必要もないところにしばしば出てきて、それがあからさまに男性視点なんですよね。そういうところも007なのかもしれない。
主人公の鬼平は、若い頃はぐれてやりたい放題の無茶をしたヤクザ者だったという設定ですが、それでも今は金に不自由しない旗本で、お上の側、つまり権力者なわけで、人情味をみせてくれても上から目線な感じがぬぐえない。
啞の十蔵
本所・桜屋敷
血頭の丹兵衛
浅草・御厨河岸
老盗の夢
暗剣白梅香
座頭と猿
むかしの女
こんなに長く続いているシリーズで、しかもいまだに売れているわけだから、たった一冊読んだだけで決めつけるのは早合点だと思うけど、逆にこういうのは感覚の問題なので何冊読んでも同じかなとも思う。それでもこれは最後まで読み通したけど、途中で挫折したのは平岩弓枝の《御宿かわせみ》シリーズと野村胡堂の《銭形平次》シリーズ。これだけ人気のシリーズが軒並みだめだってことは、私、時代小説ファンではなく、単に宮部みゆきファンだってだけだったのかもしれない。
鬼平犯科帳〈1〉 (文春文庫)
作者:池波正太郎
出版社:文藝春秋
ISBN:4167142538
by timeturner
| 2015-11-15 19:21
| 和書
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