2015年 10月 14日
The Case of the Six Watsons |
シャーロック・ホームズ物ではないコナン・ドイルの作品を、ワトソンを主人公にして語り直したパスティーシュ集。「The Beetle Lover」「The Wrong Detective」「The Missing Special」「The Brazilian Wife」は『Tales of Terror and Mystery』からピックアップした作品で、最初の3編は『ドイル傑作集Ⅰ』に、「The Brazilian Wife」は『ドイル傑作集Ⅲ』に収録されています。「The Prisoner in B.24」は高等裁判所に提出された訴状(結果がどうなったかはわかっていない)をベースにしたもの。最後の「The Broken Crocodile」は作者オリジナルです。
最初の3編と「The Missing Special」は、元ネタである『Tales of Terror and Mystery』でオリジナルを読んでからそれぞれの話を読んだのですが、びっくりですよ。なにがって、そのパクリ具合が。これ、パスティーシュじゃなくてマッシュアップでした。パロディの一形態で、元ネタはそっくりそのまま使用し、その合間を作者のオリジナルでつないでいくというもの。マッシュアップの傑作だと私が思う『Pride and Prejudice and Zombies』はオリジナルの文と新たに加えた部分とのギャップが大きく、それでいてオースティンの本来の持ち味であるウィットは全編に共通していたので、オースティンファンでも気分よく(あ、ゾンビ物が耐えられればですが)読めました。
でも、こっちはドイルのオリジナルにドイルが創り出したキャラクターであるワトソンをくっつけただけですから、オリジナリティはほとんどない。「なんだ、そのまんまじゃないか」という感想しか出てきません。『Tales of Terror and Mystery』はいずれ劣らぬ佳作ぞろいなんだから、わざわざホームズ物に作り替える必要なんてないと思うよ。それとも、もっともっとホームズ物を読みたいというシャーロッキアンの欲望はそれほどすさまじいものなんだろうか。
The Beetle Lover(The Beetle Hunter 甲虫採集家)
The Wrong Detective(The Man with the Gold Watches 時計だらけの男)
The Brazilian Wife(The Brazilian Cat ブラジル猫)
The Prisoner in B.24
The Missing Special(The Lost Special 消えた臨急)
The Broken Crocodile
作者はもともとワトソンが第一次世界大戦の際に入隊したらという前提のパスティーシュを書いている人で、そのアイディアを考えているうちにこういうものができたらしい。なので最後の「The Broken Crocodile」はワトソンが第一次世界大戦時に軍医としてエジプトに出向し、そこでT.E.ロレンスと出会って事件を解決するという話になっています。設定的にはホームズが引退してサセックスで養蜂家になった頃ということになっているので、ワトソンだってかなりの年だと思うんですが、そんなお爺ちゃんがどうしてカイロくんだりまで……。ホームズマニアと《アラビアのロレンス》マニアの妄想がからみあったというところなんでしょうか。
まあ、無料で読めるKindle本なのでこんなものでしょうね。
The Case of the Six Watsons
作者:Robert Ryan
出版社:Simon & Schuster UK
ISBN:Kindle版
最初の3編と「The Missing Special」は、元ネタである『Tales of Terror and Mystery』でオリジナルを読んでからそれぞれの話を読んだのですが、びっくりですよ。なにがって、そのパクリ具合が。これ、パスティーシュじゃなくてマッシュアップでした。パロディの一形態で、元ネタはそっくりそのまま使用し、その合間を作者のオリジナルでつないでいくというもの。マッシュアップの傑作だと私が思う『Pride and Prejudice and Zombies』はオリジナルの文と新たに加えた部分とのギャップが大きく、それでいてオースティンの本来の持ち味であるウィットは全編に共通していたので、オースティンファンでも気分よく(あ、ゾンビ物が耐えられればですが)読めました。
でも、こっちはドイルのオリジナルにドイルが創り出したキャラクターであるワトソンをくっつけただけですから、オリジナリティはほとんどない。「なんだ、そのまんまじゃないか」という感想しか出てきません。『Tales of Terror and Mystery』はいずれ劣らぬ佳作ぞろいなんだから、わざわざホームズ物に作り替える必要なんてないと思うよ。それとも、もっともっとホームズ物を読みたいというシャーロッキアンの欲望はそれほどすさまじいものなんだろうか。
The Beetle Lover(The Beetle Hunter 甲虫採集家)
The Wrong Detective(The Man with the Gold Watches 時計だらけの男)
The Brazilian Wife(The Brazilian Cat ブラジル猫)
The Prisoner in B.24
The Missing Special(The Lost Special 消えた臨急)
The Broken Crocodile
作者はもともとワトソンが第一次世界大戦の際に入隊したらという前提のパスティーシュを書いている人で、そのアイディアを考えているうちにこういうものができたらしい。なので最後の「The Broken Crocodile」はワトソンが第一次世界大戦時に軍医としてエジプトに出向し、そこでT.E.ロレンスと出会って事件を解決するという話になっています。設定的にはホームズが引退してサセックスで養蜂家になった頃ということになっているので、ワトソンだってかなりの年だと思うんですが、そんなお爺ちゃんがどうしてカイロくんだりまで……。ホームズマニアと《アラビアのロレンス》マニアの妄想がからみあったというところなんでしょうか。
まあ、無料で読めるKindle本なのでこんなものでしょうね。
The Case of the Six Watsons
作者:Robert Ryan
出版社:Simon & Schuster UK
ISBN:Kindle版
by timeturner
| 2015-10-14 19:00
| 洋書
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