2015年 09月 15日
血染めのエッグ・コージイ事件 |
1930年代の英国。バーフォード伯爵家の荘園屋敷オールダリー荘に、アメリカの石油王、大公国の特使、英国閣外相、フリーランスのライター、失業したばかりの若い女性、遊蕩貴族といった顔ぶれが集まった。そして、ある嵐の夜、宝石盗難事件と殺人事件が・・・。
いやあ、堪能しました。大好物のカントリーハウスが舞台だというので読んでみたのですが、ここまで本格推理物だったとは。しかも、ぜんぜん重苦しくない。むしろファルス・ミステリーに近くて笑えるし、後味も悪くない。愉快なP. D.ジェイムズって感じ。小山正さんの解説を読むと、作者はエドマンド・クリスピンやマイクル・イネスが好きだったらしい。納得です。遊蕩貴族アルジーのキャラなんて、ちょっとP・G・ウッドハウスの香りもある。
いかにも本格推理らしいなあと思ったのは、前半は舞台と登場人物の説明に徹し、事件が起こらないところ。540ページある本の半分まで来たところでようやく人が死ぬんですよ。ふつうだったらその前に退屈してやめちゃいそうなところですが、そうはさせないところが筆力ですね。出てくる人がどいつもこいつも怪しくて興味深くて、なんにも起こっていないうちからどいつがどんなことをするんだろうとあれこれ考えて楽しめました。そのわりには結局ひとりも犯人を当てられなかったけど(^^;)。
作者はとてもフェアにたくさんの伏線を張ってくれているし、読んでいるときに一応そこで「あれ?」とは思うんですが、流れに追われて失念してしまい、あとになってから「そうだった!」と思い出す。とにかくさまざまな筋が複雑にからみあっているので、最後に謎ときを聞かされてもすぐには理解できませんでした。
まあ、死体の始末の仕方がいくらなんでも奇抜すぎるし、運まかせすぎるだろうとは思いましたが、もうこのへんまでくるとそんな細かいことはどうでもよくなっているので素直に納得することにしました。
捜査にあたるウィルキンズ警部のキャラがこれまで読んだどの探偵役のキャラとも違うので、最初のうちは本当に無能なのかと思っていたのですが、そうか、刑事コロンボだったんですね! ウィルキンズ警部のおかげでずいぶん笑わせてもらいました。このシリーズは全部で3作で、他の2作にもウィルキンズ警部とオールダリー荘が出てくるそうなのでぜひ読まなくては。
血染めのエッグ・コージイ事件 (扶桑社ミステリー)
原題:The Affair of The Blood-Stained Egg Cosy
作者:ジェームズ・アンダースン
訳者:宇野利泰
出版社:扶桑社
ISBN:4594052215
いやあ、堪能しました。大好物のカントリーハウスが舞台だというので読んでみたのですが、ここまで本格推理物だったとは。しかも、ぜんぜん重苦しくない。むしろファルス・ミステリーに近くて笑えるし、後味も悪くない。愉快なP. D.ジェイムズって感じ。小山正さんの解説を読むと、作者はエドマンド・クリスピンやマイクル・イネスが好きだったらしい。納得です。遊蕩貴族アルジーのキャラなんて、ちょっとP・G・ウッドハウスの香りもある。
いかにも本格推理らしいなあと思ったのは、前半は舞台と登場人物の説明に徹し、事件が起こらないところ。540ページある本の半分まで来たところでようやく人が死ぬんですよ。ふつうだったらその前に退屈してやめちゃいそうなところですが、そうはさせないところが筆力ですね。出てくる人がどいつもこいつも怪しくて興味深くて、なんにも起こっていないうちからどいつがどんなことをするんだろうとあれこれ考えて楽しめました。そのわりには結局ひとりも犯人を当てられなかったけど(^^;)。
作者はとてもフェアにたくさんの伏線を張ってくれているし、読んでいるときに一応そこで「あれ?」とは思うんですが、流れに追われて失念してしまい、あとになってから「そうだった!」と思い出す。とにかくさまざまな筋が複雑にからみあっているので、最後に謎ときを聞かされてもすぐには理解できませんでした。
まあ、死体の始末の仕方がいくらなんでも奇抜すぎるし、運まかせすぎるだろうとは思いましたが、もうこのへんまでくるとそんな細かいことはどうでもよくなっているので素直に納得することにしました。
捜査にあたるウィルキンズ警部のキャラがこれまで読んだどの探偵役のキャラとも違うので、最初のうちは本当に無能なのかと思っていたのですが、そうか、刑事コロンボだったんですね! ウィルキンズ警部のおかげでずいぶん笑わせてもらいました。このシリーズは全部で3作で、他の2作にもウィルキンズ警部とオールダリー荘が出てくるそうなのでぜひ読まなくては。
血染めのエッグ・コージイ事件 (扶桑社ミステリー)
原題:The Affair of The Blood-Stained Egg Cosy
作者:ジェームズ・アンダースン
訳者:宇野利泰
出版社:扶桑社
ISBN:4594052215
by timeturner
| 2015-09-15 18:27
| 和書
|
Comments(0)