2015年 06月 08日
マザーランドの月 |
1956年。マザーランドと呼ばれる独裁国では多くの人々が貧困にあえぎ、密告され抹消されることへの恐怖のもとで生きていた。両親が謎の失踪をして以来、年老いた祖父とふたりで暮らす少年スタンディッシュも、廃屋のような家でなんとか生きているだけという毎日だった。学校に行っても、読み書きに問題がある彼は教師からもクラスメイトからも馬鹿にされ苛められる一方だ。ところがある日、新しい隣人ラッシュ家が現れ、息子のヘクターと親しくなったおかげですべてが良いほうに変わるかに見えたのだが・・・。2013年カーネギー賞を初め数々の賞を受賞したヤングアダルト小説。
初めのうちはスタンディッシュが生きている世界がいつごろの、どのあたりの国なのかよくわからないのですが、読んでいくうちに、どうやらこれは第二次世界大戦の結果が現実とは違って、ドイツと連合国がいまだにしのぎを削っているオルタナティブ・ワールドの1956年だとわかってきます。
マザーランドはナチスドイツとかつてのソ連を足して2で割ったような雰囲気で、それに対してスタンディッシュが憧れる自由の国は「コッカ・コーラスの国」と呼ばれ、明らかにアメリカです。
確かに、ドイツがあのままがんばり続けていたら、こんなふうになっていたかもしれないと思わせるエピソードがたくさんあって、ぞっとします。そういえばこの間読んだ『All The Light We Cannot See』にも、国内の物資がどんどん乏しくなっていく中、一般市民がもつあらゆるものを国が接収し、まだ徴兵年齢に達しない子どもたちまでも戸籍をいじって戦地に送りこんだりする話がありましたっけ。また、あの本の主人公の少年が入れられたアドルフ・ヒトラー・シューレは、この本でスタンディッシュが通う学校と同様、恐怖と暴力が蔓延していました。
物語全体の基盤となっているマザーランドの陰謀そのものは、最初の数十ページを読むと「ああ、あれか」とわかるものなのですが、それに対してスタンディッシュがどう立ち向かうかが読みどころ。また、スタンディッシュとヘクター、ふたりの少年の美しい友情にも心をうたれます。でも、あの**はいらなかったかなあ。まあ、いまどきの流行りなのかもしれません。
スタンディッシュがオッド・アイ(片目が青、片目が茶)であることについての説明というかなんらかの秘密が最後に解き明かされるのかと思っていたのですが、何もないまま終わってしまったのはちょっと肩すかしでした。単にそのせいで目立つからいじめられた、というだけではないと思ったんですが。西洋社会ではオッド・アイであるというだけで、どこかふつうの人とは違った性格や才能をもつと考えられているのでしょうか。
オッド・アイの有名人にはクリストファー・ウォーケン、キーファー・サザーランド、ベネディクト・カンバーバッチ(え、ほんと?)、ケイト・ボスワース、ミラ・クニスといった人たちがいるそうです。デヴィッド・ボウイは事故が原因の後天的なオッド・アイだそうなので含めないほうがいいのかな。
マザーランドの月 (SUPER!YA)
原題:Maggot Moon
作者:サリー・ガードナー
訳者:三辺律子
出版社:小学館
ISBN:4092905769
初めのうちはスタンディッシュが生きている世界がいつごろの、どのあたりの国なのかよくわからないのですが、読んでいくうちに、どうやらこれは第二次世界大戦の結果が現実とは違って、ドイツと連合国がいまだにしのぎを削っているオルタナティブ・ワールドの1956年だとわかってきます。
マザーランドはナチスドイツとかつてのソ連を足して2で割ったような雰囲気で、それに対してスタンディッシュが憧れる自由の国は「コッカ・コーラスの国」と呼ばれ、明らかにアメリカです。
確かに、ドイツがあのままがんばり続けていたら、こんなふうになっていたかもしれないと思わせるエピソードがたくさんあって、ぞっとします。そういえばこの間読んだ『All The Light We Cannot See』にも、国内の物資がどんどん乏しくなっていく中、一般市民がもつあらゆるものを国が接収し、まだ徴兵年齢に達しない子どもたちまでも戸籍をいじって戦地に送りこんだりする話がありましたっけ。また、あの本の主人公の少年が入れられたアドルフ・ヒトラー・シューレは、この本でスタンディッシュが通う学校と同様、恐怖と暴力が蔓延していました。
物語全体の基盤となっているマザーランドの陰謀そのものは、最初の数十ページを読むと「ああ、あれか」とわかるものなのですが、それに対してスタンディッシュがどう立ち向かうかが読みどころ。また、スタンディッシュとヘクター、ふたりの少年の美しい友情にも心をうたれます。でも、あの**はいらなかったかなあ。まあ、いまどきの流行りなのかもしれません。
スタンディッシュがオッド・アイ(片目が青、片目が茶)であることについての説明というかなんらかの秘密が最後に解き明かされるのかと思っていたのですが、何もないまま終わってしまったのはちょっと肩すかしでした。単にそのせいで目立つからいじめられた、というだけではないと思ったんですが。西洋社会ではオッド・アイであるというだけで、どこかふつうの人とは違った性格や才能をもつと考えられているのでしょうか。
オッド・アイの有名人にはクリストファー・ウォーケン、キーファー・サザーランド、ベネディクト・カンバーバッチ(え、ほんと?)、ケイト・ボスワース、ミラ・クニスといった人たちがいるそうです。デヴィッド・ボウイは事故が原因の後天的なオッド・アイだそうなので含めないほうがいいのかな。
マザーランドの月 (SUPER!YA)
原題:Maggot Moon
作者:サリー・ガードナー
訳者:三辺律子
出版社:小学館
ISBN:4092905769
by timeturner
| 2015-06-08 17:06
| 和書
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