2015年 05月 26日
こわがってるのはだれ? |
うだるように暑い夏の日、ナッパー家のエディはこう言い出した、「クリスマス・プディングが作りたい」・・・。不吉な話、ぞっとする話を11編収録。
えーっ、こんなに面白い話ばかりなのに、翻訳書はもちろん原書まで絶版ってどういうこと? フィリパ・ピアスの作品なのに岩波少年文庫に入っていないからあまり出来がよくないのかなと思い、これまで読もうと思いませんでした。なんて、もったいない。
『真夜中のパーティー』に近いテイストで、あれにホラー風味、幽霊風味がふりかけられたものが集まっています。訳者あとがきによるとピアスは「私は、スーパーナチュラルの話を書くのが好きです。それには読む人の、恐怖をかきたてるような話と、スーパーナチュラルの手法を使って、現実の奥の深みにある実体にふれていく話があります。私は、スーパーナチュラルの手法を使わないかぎり、物語で人間のかかわりあいを深く探ることはできないと幾たびとなく考えてきました」と言っていたそうです。怖がらせることが目的ではなく、作者が訴えたいことをより効果的に読者に伝えるためにホラー要素を利用しているということ。ここにあるのはまさにそういう話ばかりです。
クリスマス・プディング
サマンサと幽霊
よその国の王子
黒い目
あれがつたってゆく道
おばさん
弟思いのやさしい姉
こわがってるのは、だれ?
ハレルさんがつくった洋だんす
こがらしの森
黄いろいボール
本物の幽霊が出てくることもあれば、心理サスペンスとでもいいたいようなものもあり、後者の代表とも言える「黒い目」は本当に怖い。絵本では「可愛い」の代表みたいなテディベアがうまく使われています。そういえば前に金原瑞人さんの翻訳講座の課題になったNicholas Fiskの「Teddies」もすごく怖かったな。ホラーではないけれどウィリアム・トレヴァーの短編「Teddy Bear's Picnic」も怖かった。テディベアって、ぬいぐるみの枠を超えた、人間に近い存在だからかもしれない。
怖いだけでは終わらず、怖がらせた相手を憐れむ気持ちや笑い飛ばす気持ちが後に残るのがピアスのよさ。それを余韻と言うのでしょうか。人間の気持ちに対する深い洞察があるからできることだと思います。
こわがってるのはだれ?
原題:Who's Afraid?
作者:フィリパ・ピアス
イラスト:ピーター・メルニチュク
訳者:高杉一郎
出版社:岩波書店
ISBN:4001155214
えーっ、こんなに面白い話ばかりなのに、翻訳書はもちろん原書まで絶版ってどういうこと? フィリパ・ピアスの作品なのに岩波少年文庫に入っていないからあまり出来がよくないのかなと思い、これまで読もうと思いませんでした。なんて、もったいない。
『真夜中のパーティー』に近いテイストで、あれにホラー風味、幽霊風味がふりかけられたものが集まっています。訳者あとがきによるとピアスは「私は、スーパーナチュラルの話を書くのが好きです。それには読む人の、恐怖をかきたてるような話と、スーパーナチュラルの手法を使って、現実の奥の深みにある実体にふれていく話があります。私は、スーパーナチュラルの手法を使わないかぎり、物語で人間のかかわりあいを深く探ることはできないと幾たびとなく考えてきました」と言っていたそうです。怖がらせることが目的ではなく、作者が訴えたいことをより効果的に読者に伝えるためにホラー要素を利用しているということ。ここにあるのはまさにそういう話ばかりです。
クリスマス・プディング
サマンサと幽霊
よその国の王子
黒い目
あれがつたってゆく道
おばさん
弟思いのやさしい姉
こわがってるのは、だれ?
ハレルさんがつくった洋だんす
こがらしの森
黄いろいボール
本物の幽霊が出てくることもあれば、心理サスペンスとでもいいたいようなものもあり、後者の代表とも言える「黒い目」は本当に怖い。絵本では「可愛い」の代表みたいなテディベアがうまく使われています。そういえば前に金原瑞人さんの翻訳講座の課題になったNicholas Fiskの「Teddies」もすごく怖かったな。ホラーではないけれどウィリアム・トレヴァーの短編「Teddy Bear's Picnic」も怖かった。テディベアって、ぬいぐるみの枠を超えた、人間に近い存在だからかもしれない。
怖いだけでは終わらず、怖がらせた相手を憐れむ気持ちや笑い飛ばす気持ちが後に残るのがピアスのよさ。それを余韻と言うのでしょうか。人間の気持ちに対する深い洞察があるからできることだと思います。
こわがってるのはだれ?
原題:Who's Afraid?
作者:フィリパ・ピアス
イラスト:ピーター・メルニチュク
訳者:高杉一郎
出版社:岩波書店
ISBN:4001155214
by timeturner
| 2015-05-26 21:28
| 和書
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