2015年 02月 22日
ミスアドヴェンチャー |
学歴も特技もなく、派遣の事務職を続けてきたひとりの女性が50歳になったときに自らの人生を振り返り、そこにいる人々について綴った自伝のようなもの。
「自伝」ではなく「自伝のようなもの」と書いたのは、話が時系列につながっているわけではなく、ぽつりぽつりと思い出したエピソードをつなげているだけだから。ときどきそこの描かれた人と別の人の関係が見えることもあるけど、だからどうというわけでもなく、ほとんどは一回だけ登場して終わる。雰囲気としては『秋の四重奏』に近いけど、あそこまで完成した小説ではない。
登場する人々と作者との関係も特に濃厚なわけではなく、数か月つきあったボーイフレンドもいれば、一度だけ道でナンパしてきただけの男、あるいは町で見かけただけの人というるうに、何から何までとりとめがない。
ふつうだったらそんな素人っぽい自伝なんて退屈で読めたもんじゃないのだけれど、なぜかこれはこれは読めてしまう。ときどきはくすっと笑ったりもする。一度などはうるうるした。でも、ほとんどはこれといった感慨は湧いてこない。ただひたすら、「ああ、そういうこともあるよね」「こういう人いるなあ」程度の気持ち。不思議だなあ。彼女に対する共感ではなく、人間同士の連帯感のようなものを感じるからなのかな。
それにしても、よくこんな細かい、どうでもいいようなことを覚えているなあと、その記憶力に驚きました。本国イギリスでは評価が割れて、半分の人たちはでっちあげだと思ったようですね。まあ、そう思われても仕方がないほど、ありえないほど鮮明なスケッチが展示されているのです。休暇旅行に出かけようとしている男性の白いショーツのシミの話なんて、ふつうは絶対に覚えていないよねえ。今だったらツイッターを掘り返せばそういう細かい記憶も回収できるかもしれないけど。
あとがきには《ベストセラー》、書誌情報には《ミリオンセラー》とあるけど、英語版Wikipediaによると売れたのは1万5千部だそうです。作者のシルヴィア・スミスはこの処女作のあと、同様の著作を何冊か出し、2013年に68歳で亡くなったそう。
ミスアドヴェンチャー
原題:Misadventures
作者:シルヴィア・スミス
訳者:三辺律子
出版社:長崎出版
ISBN:4860951328
「自伝」ではなく「自伝のようなもの」と書いたのは、話が時系列につながっているわけではなく、ぽつりぽつりと思い出したエピソードをつなげているだけだから。ときどきそこの描かれた人と別の人の関係が見えることもあるけど、だからどうというわけでもなく、ほとんどは一回だけ登場して終わる。雰囲気としては『秋の四重奏』に近いけど、あそこまで完成した小説ではない。
登場する人々と作者との関係も特に濃厚なわけではなく、数か月つきあったボーイフレンドもいれば、一度だけ道でナンパしてきただけの男、あるいは町で見かけただけの人というるうに、何から何までとりとめがない。
ふつうだったらそんな素人っぽい自伝なんて退屈で読めたもんじゃないのだけれど、なぜかこれはこれは読めてしまう。ときどきはくすっと笑ったりもする。一度などはうるうるした。でも、ほとんどはこれといった感慨は湧いてこない。ただひたすら、「ああ、そういうこともあるよね」「こういう人いるなあ」程度の気持ち。不思議だなあ。彼女に対する共感ではなく、人間同士の連帯感のようなものを感じるからなのかな。
それにしても、よくこんな細かい、どうでもいいようなことを覚えているなあと、その記憶力に驚きました。本国イギリスでは評価が割れて、半分の人たちはでっちあげだと思ったようですね。まあ、そう思われても仕方がないほど、ありえないほど鮮明なスケッチが展示されているのです。休暇旅行に出かけようとしている男性の白いショーツのシミの話なんて、ふつうは絶対に覚えていないよねえ。今だったらツイッターを掘り返せばそういう細かい記憶も回収できるかもしれないけど。
あとがきには《ベストセラー》、書誌情報には《ミリオンセラー》とあるけど、英語版Wikipediaによると売れたのは1万5千部だそうです。作者のシルヴィア・スミスはこの処女作のあと、同様の著作を何冊か出し、2013年に68歳で亡くなったそう。
ミスアドヴェンチャー
原題:Misadventures
作者:シルヴィア・スミス
訳者:三辺律子
出版社:長崎出版
ISBN:4860951328
by timeturner
| 2015-02-22 18:25
| 和書
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