2014年 10月 23日
アーデン城の宝物 |
エルフリダとエドレッドの姉弟は父親を亡くし、崖の上の家におばさんと住んでいた。ある日突然、エドレッドがアーデン家の当主となり、姉弟は崩れかけたアーデン城に移り住む。アーデン家の紋章に描かれている白いモグラ、モルディワープを呼び出した姉弟は、過去に戻って失われたアーデン家の宝物を探そうとするのだが・・・。
『The House of Arden』の翻訳がとうとう出ました。何度読んでもわくわくする、こんなに楽しい話が、どうしてこれまで翻訳されてこなかったのか、理解に苦しみます。まあ、私の場合、古い時代のイギリスの話が大好きなのでかなりバイアスがかかっているとは思いますが、魔法、タイム・トラベル、古城、宝探し、密輸団などなど、子どもたちが夢中になる要素がてんこ盛りで、英国史を知らなくたって充分に楽しめる内容だと思います。
原作を読んでいるときに気になった作者がやたら顔を出す書き方も、日本語になったらそれほど気にならなくなりました。翻訳が上手だというのもあるでしょうが、英語だと一語一語読まなくてはならないのが、日本語だと行単位で読み飛ばせるというのも関係しているのかもしれません。なので、この本を読むなら翻訳のほうがお勧め。
その翻訳、井辻朱美さんと永島憲江さんの共訳になっています。井辻さんはベテランの児童文学翻訳家なのでどうして共訳?と思ったのですが、巻末に説明がありました。
永島さんは白百合女子大大学院で博士課程を修了された方で、博士論文として『ネズビット作品における衣服の役割――ファンタジー児童文学のひとつの研究法として』を提出されたのだそうです。その論文では「衣服は、主人公たちのタイム・トラベルにおいては、その時代への「パスポート」としての役割をはたし、さらにはタイムマシン的作用そのものをも持っていること、そして魔法ファンタジーの中では「変装」が文字通りの「変身」をも生み出しているということなどを、未訳作品をふくめた種々の作品を検証することで証明した」のだそうです。これは面白そうですねえ。その論文、読んでみたい!
で、その論文が非常にすぐれていたのに、中心として取り上げた二冊のタイム・ファンタジーが未訳だったのを井辻さんが惜しまれて、東京創元社にもちかけ、こうして翻訳・刊行されることになったらしい。二冊とも、って書いてありますから続きの『Harding's Luck』の翻訳も出るってことですね。うれしい~っ!(と読書メーターに書いたら、もう出てますよと教えていただきました)
アーデン城の宝物
原題:The House of Arden
作者:E・ネズビット
訳者:井辻朱美、永島憲江
出版社:東京創元社
ISBN:4488010172
『The House of Arden』の翻訳がとうとう出ました。何度読んでもわくわくする、こんなに楽しい話が、どうしてこれまで翻訳されてこなかったのか、理解に苦しみます。まあ、私の場合、古い時代のイギリスの話が大好きなのでかなりバイアスがかかっているとは思いますが、魔法、タイム・トラベル、古城、宝探し、密輸団などなど、子どもたちが夢中になる要素がてんこ盛りで、英国史を知らなくたって充分に楽しめる内容だと思います。
原作を読んでいるときに気になった作者がやたら顔を出す書き方も、日本語になったらそれほど気にならなくなりました。翻訳が上手だというのもあるでしょうが、英語だと一語一語読まなくてはならないのが、日本語だと行単位で読み飛ばせるというのも関係しているのかもしれません。なので、この本を読むなら翻訳のほうがお勧め。
その翻訳、井辻朱美さんと永島憲江さんの共訳になっています。井辻さんはベテランの児童文学翻訳家なのでどうして共訳?と思ったのですが、巻末に説明がありました。
永島さんは白百合女子大大学院で博士課程を修了された方で、博士論文として『ネズビット作品における衣服の役割――ファンタジー児童文学のひとつの研究法として』を提出されたのだそうです。その論文では「衣服は、主人公たちのタイム・トラベルにおいては、その時代への「パスポート」としての役割をはたし、さらにはタイムマシン的作用そのものをも持っていること、そして魔法ファンタジーの中では「変装」が文字通りの「変身」をも生み出しているということなどを、未訳作品をふくめた種々の作品を検証することで証明した」のだそうです。これは面白そうですねえ。その論文、読んでみたい!
で、その論文が非常にすぐれていたのに、中心として取り上げた二冊のタイム・ファンタジーが未訳だったのを井辻さんが惜しまれて、東京創元社にもちかけ、こうして翻訳・刊行されることになったらしい。二冊とも、って書いてありますから続きの『Harding's Luck』の翻訳も出るってことですね。うれしい~っ!(と読書メーターに書いたら、もう出てますよと教えていただきました)
アーデン城の宝物
原題:The House of Arden
作者:E・ネズビット
訳者:井辻朱美、永島憲江
出版社:東京創元社
ISBN:4488010172
by timeturner
| 2014-10-23 22:31
| 和書
|
Comments(2)
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nobara
at 2014-10-26 15:31
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砂の妖精もそうでしたが、白いモグラさんも大変魅力的。素敵な衣装でタイムトラベルという方法が女性らしい。タイムトラベルの先で出遭うレディ達のドレスの描写も美しい。ネズビットはシンシア・アスキス程の上流ではなかったにせよ、ビクトリア朝の令嬢だったはずですが、当時としては突き抜けた女性だったのですね。「英国貴族の令嬢」にあるように
家格の釣り合うお相手と結婚するのに血道をあげ、社交界と御召替えに命をかける令嬢では無かった。
家格の釣り合うお相手と結婚するのに血道をあげ、社交界と御召替えに命をかける令嬢では無かった。
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timeturner at 2014-10-26 20:29
ネズビットは当時としては「新しい女」だったんでしょうね。だからこそ、彼女が書く女性はみんな一本芯が通っていて、現代に生きる私たちが読んでも納得がいくのだと思います。子どもたちのおばさんも当時の女性としてはしっかり自立しているし、前後編通して大事な役割を果たす魔女もすてきな女性です。