2014年 10月 12日
夜光死体 イギリス怪奇小説集 |
『猫は跳ぶ』に収録されていなかった「獣の印」「死体盗人」「夜光死体」を読むために図書館にリクエストしました。この本、区内の図書館には蔵書がなくて、他区から取り寄せてもらったんですが、本文用紙がまっ茶色になっていて読みにくいったらない。でも、苦労して読んだだけのことはありました。
キプリングの作品はもちろんインドの話で、キリストの神の威光が届かない(英国人から見れば)野蛮な辺境で起こった狼男もどきの話。怪異そのものはわりとよくある話でそれほど怖くないのですが、ぼかして書かれていない裏の事情がなんとも恐ろしくて身震いしました。白人優越主義というのか、どんなアホで無価値な人間でも、それが同胞(白人)だから救わなくてはならない。そのためには重病の現地人を拷問にかけてもいい、そう考える人たちが恐ろしいです。最後のほうにつけたしのような弁解が加えてはありますが。
表題作の「夜光死体」は、タイトルから期待していたほどファンタジックではなく、ただ本当に幽霊が光ってるだけだった。幽霊ってふつうそういうもんじゃないの? それとも、西洋の幽霊は一般的に光らないものなんだろうか。人魂もないのかな?
三作だけ読んで終わりにするつもりでしたが、せっかく絶版本を手にする機会が訪れたので、既読のものにもさっと目を通しました。こうして続けて読んでみると、ほとんどの作品が幽霊の恐ろしさより人間の恐ろしさを描いていることに気がつく。人間って怖い。
ウェルズの「故エルヴィシャム氏の物語」は雰囲気に流れず、しっかりした骨格をもっているという点で、私にはいちばん納得のいく話だな。まあ、幽霊話に納得もなにもないのですが。納得できなくたって出るときには出るんだし。
夜光死体―イギリス怪奇小説集 (1980年) (旺文社文庫)
訳者:橋本槇矩
出版社:旺文社
ISBN:なし
キプリングの作品はもちろんインドの話で、キリストの神の威光が届かない(英国人から見れば)野蛮な辺境で起こった狼男もどきの話。怪異そのものはわりとよくある話でそれほど怖くないのですが、ぼかして書かれていない裏の事情がなんとも恐ろしくて身震いしました。白人優越主義というのか、どんなアホで無価値な人間でも、それが同胞(白人)だから救わなくてはならない。そのためには重病の現地人を拷問にかけてもいい、そう考える人たちが恐ろしいです。最後のほうにつけたしのような弁解が加えてはありますが。
マダム・クロウルの幽霊/J・S・レ・ファニュスティーヴンソンの「死体盗人」はエジンバラで解剖用教材のために殺人を犯す人々がいたという実際にあった話を元にしたものですが、これまた幽霊部分よりも悪に心を蝕まれていく人間の恐ろしさが主眼。
獣の印/R・キプリング
死体盗人/ R・L・スティーヴンソン
不吉な渡し舟/ジョン・ゴルト
二人の魔女の宿/ジョゼフ・コンラッド
夜光死体/ディック・ドノバン
月に撃たれて/バーナード・ケイペス
故エルヴィシャム氏の物語/H・G・ウェルズ
革の漏斗/コナン・ドイル
ある古衣の物語/ヘンリー・ジェイムズ
表題作の「夜光死体」は、タイトルから期待していたほどファンタジックではなく、ただ本当に幽霊が光ってるだけだった。幽霊ってふつうそういうもんじゃないの? それとも、西洋の幽霊は一般的に光らないものなんだろうか。人魂もないのかな?
三作だけ読んで終わりにするつもりでしたが、せっかく絶版本を手にする機会が訪れたので、既読のものにもさっと目を通しました。こうして続けて読んでみると、ほとんどの作品が幽霊の恐ろしさより人間の恐ろしさを描いていることに気がつく。人間って怖い。
ウェルズの「故エルヴィシャム氏の物語」は雰囲気に流れず、しっかりした骨格をもっているという点で、私にはいちばん納得のいく話だな。まあ、幽霊話に納得もなにもないのですが。納得できなくたって出るときには出るんだし。
夜光死体―イギリス怪奇小説集 (1980年) (旺文社文庫)
訳者:橋本槇矩
出版社:旺文社
ISBN:なし
by timeturner
| 2014-10-12 18:13
| 和書
|
Comments(5)
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nobara
at 2014-10-12 19:00
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この旺文社版の方は未読ですが「獣の印」は他の怪奇小説集にも入っていて怖かった。南方の植民地モノではモームの小説も大好きです。「幽霊よりも生きてる人間が一番怖い」色々な怪奇小説を読んでも結局はそこに行き着くと思います。
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八朔
at 2014-10-12 21:31
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“THE BODY SNATCHER”、再来月あたりの翻訳の勉強会の教材なので、今、少しづつ読んでます。少しづづというのは、各ページに30以上、わからない単語があり、辞書をたくさん引いているので…。
翻訳は、『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡』の中の「死体泥棒」柴田元幸・訳を読むつもりです。原書を読んだ後で^^
翻訳は、『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡』の中の「死体泥棒」柴田元幸・訳を読むつもりです。原書を読んだ後で^^
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timeturner at 2014-10-13 16:54
nobaraさん
ほかの本では誰が訳しているのかなと思って調べていたら、過去のあらゆる訳例(冒頭だけ)を日本語のみならず各国語で並べているブログにぶつかりました。日本語訳もいろいろあるものですねえ。
それに、この作品がそれほどまでに人を惹きつけるものだったというのにも驚きました。映画まで!
http://tomoki.tea-nifty.com/tomokilog/2008/03/the_mark_of_the_1f54.html
ほかの本では誰が訳しているのかなと思って調べていたら、過去のあらゆる訳例(冒頭だけ)を日本語のみならず各国語で並べているブログにぶつかりました。日本語訳もいろいろあるものですねえ。
それに、この作品がそれほどまでに人を惹きつけるものだったというのにも驚きました。映画まで!
http://tomoki.tea-nifty.com/tomokilog/2008/03/the_mark_of_the_1f54.html
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timeturner at 2014-10-13 17:26
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nobara
at 2014-10-13 19:24
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