2014年 06月 07日
いにしえの光 |
撮影現場から姿を消した人気女優とベテラン俳優。最愛の娘を失った心の隙間をいまだに抱える老俳優の脳裏にしばしば蘇るのは、少年時代、友人の母親との禁断の恋の記憶だった・・・。
これ、男性が読めば陶酔できるんでしょうか。年で感受性が鈍っているせいか、私には年とった男の自己陶酔いっぱいの自分語りとしか思えなかった。表現力というか、言葉の使い方はマエストロ級で、1ページか2ページ読む分には心地よくしていられるんですが、どこまでいってもそれが続くと、ただただ「男ってばかねえ」という感想しか出てこない。
ところどころに非常にファニーなことが書いてあるのだけれど、それ以外が華麗なる単語の奔流なので、違和感を感じてしまう。初めのうちは、この小説は実はユーモア小説なのに翻訳によってこういうペダンチックな体裁になってるのかしら、なんて失礼なことも考えたのですが、アマゾンで洋書のほうの英語が母語の人たちのレビューを読んでも、やはり美しい文章で流麗に描かれた記憶と人生に関する小説というとらえ方が主流なので、これは作家自身の特質なんでしょうね。
老人と曖昧な記憶、親友の母親との関係、といったキーワードから、即座にジュリアン・バーンズの『終わりの感覚』を思い出します。あれは、ミステリー仕立てになっているのと、エゴイズムと記憶の関係が冷酷なほど赤裸々に描かれたとんがった小説だったのに対して、こちらはぬらぬらほわほわと進むメリハリのない作りなので、よけいに「もういいや」という気になってしまうのかも。あっちを読んでいなければそれなりに楽しめたのかな。
いにしえの光 (新潮クレスト・ブックス)
原題:Ancient Light
作者:ジョン バンヴィル
訳者:村松 潔
出版社:新潮社
ISBN:4105901052
これ、男性が読めば陶酔できるんでしょうか。年で感受性が鈍っているせいか、私には年とった男の自己陶酔いっぱいの自分語りとしか思えなかった。表現力というか、言葉の使い方はマエストロ級で、1ページか2ページ読む分には心地よくしていられるんですが、どこまでいってもそれが続くと、ただただ「男ってばかねえ」という感想しか出てこない。
ところどころに非常にファニーなことが書いてあるのだけれど、それ以外が華麗なる単語の奔流なので、違和感を感じてしまう。初めのうちは、この小説は実はユーモア小説なのに翻訳によってこういうペダンチックな体裁になってるのかしら、なんて失礼なことも考えたのですが、アマゾンで洋書のほうの英語が母語の人たちのレビューを読んでも、やはり美しい文章で流麗に描かれた記憶と人生に関する小説というとらえ方が主流なので、これは作家自身の特質なんでしょうね。
老人と曖昧な記憶、親友の母親との関係、といったキーワードから、即座にジュリアン・バーンズの『終わりの感覚』を思い出します。あれは、ミステリー仕立てになっているのと、エゴイズムと記憶の関係が冷酷なほど赤裸々に描かれたとんがった小説だったのに対して、こちらはぬらぬらほわほわと進むメリハリのない作りなので、よけいに「もういいや」という気になってしまうのかも。あっちを読んでいなければそれなりに楽しめたのかな。
いにしえの光 (新潮クレスト・ブックス)
原題:Ancient Light
作者:ジョン バンヴィル
訳者:村松 潔
出版社:新潮社
ISBN:4105901052
by timeturner
| 2014-06-07 20:34
| 和書
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